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第9回 事例で学ぶ物流改善:『作業動線とロケーションの改善 中堅建材卸B社』

建材卸B社は手厚い物流サービスを武器に急成長を遂げていた。しかし売上拡大と比例して、物流現場では作業が長時間化し、コストが上昇していた。センター内は過剰在庫で溢れ、作業動線にも課題があった。商品別出荷数量と作業項目別タイムデータの分析をもとに、保管ロケーションと作業動線を改善した。


売上拡大で物流現場は悲鳴

建材卸売業B社のK社長からの問い合わせで、日本ロジファクトリーの電話が鳴ったのは2月のことだった。寒い冬が一息ついたような、暖かい日だったことを覚えている。何がお困りなのかをお聞きしたところ「毎日、物流センターの作業が終わらない。とにかく現場が回るようにしてもらいたい」という。
早速、都内某所にあるB社の本社を訪ねた。そこでB社について次のように知ることができた。B社の売上高は約170憶円。このところ毎年、前年比10%以上のペースで売上高を伸ばしている。最近では建材業界でも定番化してきた当日受注・当日配送(地域指定あり)を、B社は10年以上も前から実施してきた。物流サービス面では業界の先駆け的存在といえる。バブル崩壊後の時代背景がB社の急成長を後押ししていた。
昨今、建築資材業界の商品単価は下がる一方である。また環境問題に対する意識の高まりから、無駄な資材は建築現場に持ち込まないことが常識となってきた。そのために物流も多頻度小口配送によって
「欲しいときに・欲しいものを・欲しいだけ」納品するという、B社の得意とするサービスが主流となってきている。
建材卸業界では通常、建築現場への納品が90%以上を占める。多頻度小口配送に対応しきれない卸の中には、経営が傾くところも少なくない。それとは対照的に、B社の納品サービスには注目が集まり、需要が高まっている。営業部隊は次から次へと仕事を獲得してくる。物流部隊の業務は増加の一途をたどった。さらに営業マンは、期待に応えなければいけないという使命感から、顧客からの時間指定や納品場所に対して、物流部隊が対応しきれないレベルの要望まで受け入れてしまう傾向にあるようだった。その結果、物流現場は混乱し、作業が長時間化していた。

床を這う電動ローラー
「実際に現場を見てもらった方が話は早い」というK社長の配慮から、B社本社から車で約1時間の距離に位置する、千葉県某所の物流センターを訪問することになった。
センターの延べ床面積は約3,500坪。この1拠点で関東各地にある営業所からの要請を処理し、関東一円の商品配送に対応していた。
センター内をK社長に案内していただいた。建築資材と言っても、長尺商品、重量物など、物流業界でいう「ゲテモノ商材」からネジ、ワッシャーの小物まで荷姿は様々。しかも約3万アイテムを取扱っている。在庫管理が非常に大変だろうと一目で感じた。
センター要員は派遣社員を含め約20人。広いセンターに点在しているため人数が多いとは感じなかった。しかし、手順通りに作業を見学しているうち、作業員がピョンピョンと何かを飛び越えている姿をよく見かけることに気付いた。床を走る搬送用の電動ローラーだった。
センター内の各ピッキングエリアから出荷場所まで、長いローラーが這っている。ピッキングした商品は梱包後にローラーに乗せる。一定時間になると電動ローラーを稼動させ、出荷場所まで自動で出荷物を搬送するという仕組みだ。
商材に重量物が多く、社員の持ち運びが困難なことからの配慮であった。「あらゆるところにローラーがあるのですね」とK社長に尋ねると、「継ぎ足し継ぎ足しでこんなに長くなってしまった」とのことだった。
この他にも長尺商品用に、一般的には余り見かけない自動ラックがあった。縦に置いて保管した長尺商品を、横からピッキングできるようにしたものだ。ボタン1つで選択した
商品が前に突き出してくる。B社のオリジナル・オーダーだという。K社長が現場スタッフの労働環境に非常によく気を配っていることが分かった。しかし、あらゆるところに設置されたローラーが、ピッキング時の障害になってしまっているケースが多々あった。しかも、急速に物流の小口化が進んだことで、ローラーの処理効率自体も悪化していた。
ローラー上に溜まった商品を先へ先へと手で押し流しているスタッフの姿が目に付いた。スムーズに商品が流れなくなっているのだ。K社長の社員への思いやりから導入した物流機器が逆に作業を非効率にしているという皮肉な結果を生んでいた。
このセンターは人の動きに改善の余地が多分にあるに違いないと感じた。物流センターの作業現場を見学して、もう1つ気になった点があった。作業時間中、事務スタッフがセンター内を商品や伝票を持って走り回っていたのである。「なぜ、現場にいることが多いのですか」と事務スタッフに尋ねてみると
「営業からの指示で、出荷量の変更や、ルート便から宅配便への変更などがあるのです」という。さらに「それに伴う作業は全て事務所社員で対応しています」とのことであった。その結果、肝心の事務所内が手薄になっていた。
スタッフが現場に出払ってしまって、電話が鳴りつづけているといる事態まで発生していた。営業と物流センターの連絡を悪くするだけでなく、お客様からの問い合わせ対応に悪影響の出ている懸念があった。

作業分析の結果に驚くK社長
以上を踏まえて物流改善提案を行った。改善によって作業を円滑に遂行できると感じた点は以下の2点である。

① 作業効率を追求したロケーションの設定による作業動線の短縮
(1) 商品別出荷数量ABC分析を行い、出荷数量に合わせたロケーションを設定
(2) 出荷作業項目別のデータをとり、作業時間構成比の高いものを削減する

② 各営業所と物流センターの受発注に関する物流指標を設定し、営業側にフィードバックされるようなフローを構築。事務所のイレギュラー業務を削減する

この改善提案にK社長も賛同してくださった。早速、物流改善プロジェクトチームを結成し、改善に取りかかることになった。まず、①の(2)に着手した。
出荷作業項目別のデータを収集するため、ストップウォッチを手に現場で作業タイムを計った。測定した作業内容は次の通り。
1.伝票に基づく商品のピッキング
2.梱包
3.荷札の添付
4.荷仮置き場またはローラーへの移動
この中で最も作業時間構成比の高かったものは、4の「出荷仮置き場またはローラーへの移動」で、実に全作業時間の70%以上を占めていた。
(図1参照)

2003年9月■作業動線とロケーションの改善●図①
このセンターでは明確なロケーション設定がされていなかった。各スタッフが自分の担当ゾーンを持ち、商品の保管場所は個人的に把握しているという状態だった。
実際のピッキング作業も伝票の明細を見ながら、個人が判断して処理を進めていた。近くにあるものからピッキングし、終了したときには出荷仮置き場のはるか彼方にいるといったことも珍しくなかった。
そこから商品を台車に乗せ、あるいは手に持って仮置き場やローラーまで運ぶとなれば当然、動線は長くなる。これを改善した。ピッキング作業の処理手順をルール化し、出荷仮置き場またはローラーから遠いエリアからピッキング作業を開始し、仮置き場に近づくように処理を進めることによって、大幅な改善が見込めた。
次に商品別の出荷数量分析である。B社はもともと情報システムには力を入れており、出荷データを容易に入手することができたのはありがたかった。
登録商品約3万アイテムのうち過去1年間に出荷実績のあった約14,000アイテムを分析の対象にした。これらを出荷終了で8つのランクに分類した。その結果、出荷数量の構成比で90%を占めるA〜Dランクの商品が約2,600アイテムあった。構成比で全在庫の15%程度のアイテムが出荷数の約90%を占めていたわけだ
(図2参照)。

2003年9月■第9回●作業動線とロケーションの改善●図②
また、センターに在庫を持ちながら直近の過去3ヶ月間の出荷実績がゼロであった商品が約4,000あった。
アイテム数で見ると全体の30%を越えていた。結果を見てK社長は目を丸くしていた。この分析結果から、このセンターの作業時間を短縮するには「探す」「歩く」時間を短縮することがポイントであると考えた。
まず出荷頻度の高い商品を集中管理することで「探す」対象の商品を事前に絞る。その結果、移動距離の短縮にもつながり「歩く」時間も短縮できる。
(図3参照)

2003年9月■作業動線とロケーションの改善●図③

 というアプローチで保管ロケーションの変更を行うことをプロジェクトメンバーに指示した。出荷頻度の高いA〜Dの商品は商品集積所に近いロケーションとした。それ以外の出荷頻度の比較的低い商品はセンター2階の空きスペースを利用し、そこに棚を設置して保管することにした。

物流センターはショールーム
ロケーション設定の際、K社長の意見により、少々計画を変更することになった。「商品カテゴリーごとになっているとはいえ、単品ごとの出荷数量実績を基にしてロケーションを組むと、出荷数量実績によってはシリーズ商品やサイズのある商品が、バラバラに分かれてしまう」という指摘だった。
発言の背景には、物流現場が一種のショールームとして機能しているという現実があった。同社のセンターには顧客がよく視察に訪れる。また営業時に物流センターで商品を見ながら商談をするケースも多々ある。
建築現場は部材が1つ足りないだけで作業がストップしてしまうことも珍しくない。しかも通常、建築現場は複数の業者が役割を分担している。1つ1つの工程が全体に影響を与えてしまう。そのため充分な品揃えが建材卸を選ぶ大事な基準の1つになる。
シリーズ商品のサイズが1から10までキレイに揃っていることや、カラーバリエーションのある商品なら白から黒まで全て揃っていることがセールスポイントとなるのだという。
このK社長の話に納得した私とプロジェクトメンバーは、アイテム別ではなく商品シリーズごとの出荷実績に基づいて、改めてロケーション設定作業を行い、同じシリーズのサイズやカラーを並べて置けるように修正した。
さらに事前に集計した出荷作業項目別の作業タイムの構成比を基に作業動線を設定した。ピッキング作業の終了が出荷仮置き場またはローラー付近になるように設定し、動線の妨げになる余計なローラーは撤去した。新しい作業フローに当初、現場スタッフは多少とまどっていたようだ。しかし慣れて落ち着きを取り戻し始めると、商品を探す時間がだんだんと短縮されていった。その結果、改善前には毎日の作業終了時間が平均で19時過ぎだったものが、定時前の17時前後に短縮できた。これがコスト面で大きな成果を挙げた。
B社のセンターでは残業手当が満額支給されていた。それが大幅に削減されたのだ。

物流は受注で決まる
もう一つの改善項目は、新しい営業ルールの設定である。これを保管ロケーションの変更と同時並行で行った。
当社、日本ロジファクトリーは物流現場改善を強みとしているが、実際にはB社のように営業のやり方にまで手を付けるケースが多い。実際、「物流の90%は受注で決まる」と言っても過言ではないのである。
B社の場合、営業所からセンターに発注をする段階で、発注間違いや確認不足による受注後の数量変更・運送モードの変更(ルート便→宅配便)・顧客直接引き取りへの変更などが多発していた。
B社の納品は基本的にルート配送で行われているため、出発後の発送依頼となれば軽車両便を調達するほかない。あるいは配送車両の出発を遅らせて、緊急依頼に対応するという事態も発生していた。その顧客に対しては面目が立つだろうが、他の顧客に迷惑をかけているはずであった。また、センターに建築業者が直接商品を引き取りにくることも多々ある。この場合には、顧客から営業サイドに注文の連絡が入った段階で、物流センターに確認をとり、発注コードを決定しなければならない仕組みになっている。しかし、営業の確認不足や、突然の変更で連絡が遅れるケースも出てくる。
センターでは事前の準備なしに、顧客が引き取りに来ると、ルート配送用に出荷処理中の荷物から引き取りの商品だけを抜き出すという作業が発生する。さらにセンターでは、ルート便では間に合わないため突然、配送方法をルート便から宅配業者に変更してくれと依頼されるケースも多発していた。この場合にも、出荷処理中の荷物を抜き出し、宅配に変更する作業が発生する。
これらの対応にセンターに配置した5人の事務所スタッフは追われ、事務所に誰もいないという事態を発生させていた。
こうした緊急対応の多くは、その顧客の要望が通常のルート配送の時間帯でクリアできるものかどうか、営業サイドが事前に確認しておけば未然に防げる。そこで改善策として以下の指標を設定した。
(図4参照)。

2003年■第9回●図④
この指標でとったデータを営業サイドの改善に活用した。ただし、物流部門から営業部門への依頼という形にしてしまうと強制力が弱い。
経営陣からトップダウンで各営業所・営業マンに指導が行くようなフローが必要だ。そこで次のようなフローを作成した
(図5参照)。

2003年9月■作業動線とロケーションの改善●図⑤
その結果、返品に関してのみ根強い業界慣習に阻まれ改善が難航しているものの、それ以外の指標は全て半年で目標値を達成することができた。また、このデータから意外なこともわかった。数量変更や配送形態の変更をする営業所や営業マンがほとんど決まっているということだ。そこにメスを入れることによってイレギュラー対応件数は激減した。
これによりセンターでは事務所に誰もいないということがなくなった。電話が鳴り続けることもなくなり、営業との連絡が円滑になった。その結果、顧客への対応が疎かになることはなくなった。
現場社員にも変化が表れた。今回の改善による作業の効率化を一番強く実感したのは現場社員だったようだ。
改善活動後、現場ではスタッフが積極的に商品の出荷状況を知りたがるようになり、出荷実績に基づいた商品ロケーションの変更を訴えるようにまでなった。現場に作業効率化意識が芽生えはじめたことに、K社長はとても喜んでいた。
元来、営業力のあるB社だけに、今回の物流改善は今後も同社が成長を持続させていく上で、強い武器となることだろう。