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第32回 事例で学ぶ物流改善:『物流会社の現場改善【11の鉄則】』

物流会社にとって現場は経営の原点だ。改善もコストダウンだけが目的ではない。強い現場を実現することが、既存の荷主を維持し、新規荷主を獲得するための最大の武器になる。
以下に現場改善の「11の鉄則」を紹介する。規模の大小に関わらず、全ての物流会社に共通する勝利の方程式だ。

2005年9月■第32回(特別編)●図①

【鉄則1】提案営業と提案書営業を間違うな
提案書を作成し、商談時にプレゼンテーションを行うことが物流会社の提案営業だと捉えている人が多い。間違いである。
提案営業とは、荷主にとって役立つこと、すなわち売り上げが伸びること、経費が下がることなどを提示して、自社と付き合うメリットを認めてもらい、納得してもらって仕事を獲得する営業である。提案書はそのためのツールの一つに過ぎない。
例えばアパレルを扱う既存荷主に対して業界新聞(繊研新聞など)のコピー、それも物流をテーマにしている記事や競合他社の動きなどが書かれた記事のコピーを持参する。トップや経営幹部であれば日々それらに目を通していることが多いが、センター長や物流部長クラスでは目にする機会がなかったり、
回覧までに時間がかかったりするため、いちはやく行動すれば先方に喜ばれる。これも立派な提案営業の1つである。
自社のセンター機能が整っている場合には、荷主の担当者を現場に招いて「御社のお仕事を受けさせていただいた場合には、このスペースを活用して、このようなピッキングを行い、最後のこのレーンで検品を行います」といった説明を行う。
新規荷主に対して現場視察による提案内容のイメージ化を図ることも重要な提案営業の一環である。提案営業とは何かという問題を改めて問いかけ、再度原点からスタートを切ることで、どんな会社でも提案を実行できるのである。

【鉄則2】販促ツールの充実に力を抜くな
物流会社のマーケティング活動、営業活動は他の業界に比べて総じて脆弱である。ちなみに全産業の広告宣伝費の平均は売上高の3〜5%と言われている。物流業はその半分にも満たない1〜2%という調査結果がある。
もちろん販売促進にかける金額そのものが重要なわけではない。しかし、法人相手の物流事業は順調に取引が進めば開始から3年ほどで年間数千万円の取引額に膨らむことも多いことを考えると、現状の新規案件を取り込むマーケティング、営業活動は貧相だといえる。
このような旧態依然としたスタイルを続けていれば、売り上げが拡大しないだけでなく、今後は仕事を他社にとられてしまうことも覚悟しなければならない。以下に物流会社の販促ツールの例を3つほど挙げる。
いずれも我々、日本ロジファクトリー(NLF)がこれまでの活動を通じて、その効果を確認できたツールである。

①提案型名刺
「物流アドバイザー」や「物流カウンセラー」などの肩書きを氏名の横に入れた提案型名刺を使うことで、その担当者の物流に関する専門性が高いことをアピールできる。これによって一般の営業と比べて、荷主側の公開する情報量が飛躍的に増える。何もこれらの名称に臆することはない。難しい内容や知らないことを聞かれた時には宿題として持ち帰り、後日きっちり応えればいい。

②機密保持誓約書
物流会社の営業がうまく進まない理由の一つに、営業先の現状や実態を掴みきれていないことが挙げられる。物流会社側の入手している情報の量と質の双方に問題がある。事前に充分な情報が得られなければ、提案するポイントや見積方法、また自社で対応できる仕事であるか否かなどの判断はつかない。一般に荷主は、業務を委託するか決まっていない段階で物流会社に重要な情報を公開することには躊躇する。競合他社にその情報が洩れてしまえば不利益を被るかもしれないからだ。そこで情報漏洩に対して過敏な荷主に対しては、最初に情報漏洩を厳守する誓約書を取りかわす。それを裏付けとして提案営業に必要な情報を公開してもらうのである。

③業務案内ビデオ
センター業務や流通加工をメーンとする物流会社が紙媒体で会社をPRするのは容易ではない。このような場合は「静」のツールだけでなく、「動」のツールを検討する。PRすべきポイントがピッキングや梱包、ラベル貼りであれば、その動き、作業そのものをビデオに録画し、CDに焼き付ける。そしてパソコンを用いて先方に見てもらうのである。このツールは編集時間が長く過ぎても短すぎても効果が薄れる。15分から20分にまとめあげるのがポイントである。右に挙げた三つの販促ツールのほかにも、提案書やホームページなどがあるが、既にその内容は他で述べられているので、ここでは省略する。

【鉄則3】走らないサービスを開発せよ
原油高騰やドライバー不足による賃上げなど、物流会社の置かれている経営環境は依然として厳しい。今や物流業は走れば走るほど利益の出ない構造になってしまった。売り上げの約50%を占める人件費、そして右のような燃料・油脂費の高騰、高速代など、原価の抑制が効かないのである。単純な輸送サービスは価格競争を避けられない。走らない物流サービスを開発する必要がある。そして人件費にメスを入れる。今日も成長を続け、高い収益を上げている物流会社は、いずれもそれを実施している。
具体的には流通加工やセンター業務を受注し、正社員ではなくパート・アルバイトで運営するのである。
「鉄則6」で詳しく述べるが、この場合には現場のパート比率が業績に直結する。目安として売り上げに占める人件費の割合が50%以上の会社は赤字、50%未満に抑えている会社は黒字と明暗が分かれる。

【鉄則4】現場を「ショールーム」にせよ
いわゆる「5S(整理・整頓・清掃・ 清潔・しつけ)」や現場スタッフの挨拶、マナーが徹底している現場を物流会社のショールームとして活用する。現場こそが、「ここなら任せることができる」という荷主の確信を勝ち取る最大の営業の場である。社長のビジョンは素晴らしい。営業担当者の対応もよい。料金も我々の要望を聞き入れてくれた——いよいよ正式な契約という段階に来て、最後に現場視察がある。ここで依頼主である荷主の期待を裏切ってしまう物流会社を、これまで山ほど目にしてきた。
どんな立派に表面を取りつくろっても最後は「現場力」である。

【鉄則5】車両別に損益勘定を行え
車両別の原価計算を行い、それに基づいた対策と業務改善に即、着手せよ。月別管理から始めて日別、そして荷主別と展開させていくことが不可欠である。車両を所有する会社にとって車両別の損益勘定は死活問題となる。
「鉄則3」で述べた通り、売上高に占める人件費の割合、そして燃料・油脂費、タイヤ、チューブ費、修理費、高速費の「運行五費」にまず着手することが重要である。
① 人件費…ドライバーの給料が中心となる。歩合制による変動費化、出来高制、業請制による残業代の削減などを行っている会社が多い。
② 燃料・油脂費…ドライバーの燃費走行の徹底。拠点が数カ所ある場合は購入給油所の一元化の検討が必要である。
③ タイヤ・チューブ費…②と同様に運転の仕方でタイヤの消耗度合いは大きく変ってくる。運行管理者がデータをもとに口うるさく指導しなければならない。またタイヤメーカーによっても消耗度、耐久度に大きな差が出るため、自社の業務内容を加味したデータ比較が必要である。
④ 修理費…最近、車両知識の無いドライバーが増えている。採用後、研修もなく横乗りをして数カ月後には現場に出されている現状では当然だろう。そのため部品さえあれば自社で簡単にできるランプの交換などでも、すぐに近くの修理屋やディーラーに任せてしまう。本格的に修理するのか、応急手当をしてもう少し乗るのかという判断を、ドライバー自身に任せてはいけない。そのような場合には運行管理者や配車責任者など、しかるべき部署と立場の人間が許可を出す体制に変える。修理費の中には車検代も含まれるが、日々のメンテナンスは車検代にも影響してくる。そして最大のコストダウンはやはり車両事故をなくすことである。運輸業界の損益計算書を分析すると、多額の利益を出しているにも関わらず最後に「事故費」という勘定科目で大きなマイナスが出て、赤字に陥っているケースが目立つ。
⑤ 高速費…長距離輸送を減らすことに尽きる。一般道を活用して高速道路を使用しないという選択肢もあるが、その場合にはドライバーと配車の状況判断が重要になる。次の仕事が残っていたり、新たな仕事が発生していれば、帰り道でも高速道路を使って帰社させることで機会損失を免れる場合がある。またETCの時間割引も、長距離ドライバーを割引時間の適用される深夜零時まで周辺のパーキングで待機させることは避けたい。集中力が切れるためかえってドライバーの疲れは増し、大事故につながる懸念がある。本末転倒のないようしっかりと状況判断をしなければならない。

【鉄則6】センターのパート比率を90%にせよ
コンビニエンスストアや外食チェーンなどは店長を除く全てのスタッフをパート・アルバイトで運営している。その比率は1対9。こうした流通業と同様に物流業もサービス業の一つである。いかにパート・アルバイトを戦力化できるかが、利益に直結する。
これからは「パートの、パートによる、パートのための」業務と職場が物流の現場になる。その前提となるのが前述の通り、流通加工やセンター業務などパートが活躍できる業務を受注することである。ちなみに音楽産業のある物流会社はパート300人に対し社員が二人、米国のフェデラルエクスプレスでは臨時雇用者5000人に対し社員1人でセンターを運営している。
またハマキョウレックスの大須賀正孝社長によると、パート約100人で運営している同社の本社センターは、社員が1週間不在でも運営に支障が出ないという。

【鉄則7】在庫ロケーションは定期的に見直せ
センター作業の効率はロケーションに大きく左右される。在庫型センター(DC)や保管倉庫では、ロケーションの整備が重要である。商品特性にもよるが、ロケーション変更の目安は3カ月に1回の頻度で全体を見直し、小さな変更は随時というルール化が望ましい。
昨今は商品サイクルが短くなり、3カ月前には最も多く出荷されていたものが、今ではほとんど出荷されないといった事態が頻繁に発生している。そのスピードに、物流現場におけるアイテムの改廃や棚番地の変更などがついていけないケースが目立つ。
下図のようによく出る商品を最小限の作業動線で出荷できるようにするのが基本だ。そのために商品を「金額」と「数量」ではなく、「出荷頻度」で集計・分析し、上位からA・B・C・Dのランク付けを行う必要がある。一般に出荷頻度上位20%の商品が、全体の80%の商品を占めている。

2005年9月■特別編●11の鉄則●図②
【鉄則8】検品業務にはITを導入せよ
我々NLFは「投資ありき」の現場改善を行うことはない。しかし入出荷の検品には、荷主側の要請や費用支援がなくとも、物流会社が自発的にシステムを導入すべきであると最近は強く感じている。検品業務の品質向上は人手では限界があり、非効率である。そしてシステム化によって在庫差異の原因を明確にできることが理由である。
最近では在庫差異の発生に対して、物流会社が荷主にペナルティを支払うような契約もある。その金額を考えれば、IT機器の低価格化もあって、システム投資は恐らく1年以内にペイできる。業務品質向上、責任の明確化、そして営業面でのPR効果も含め、検品のシステム化には充分な投資効果がある。

【鉄則9】車両事故を徹底的に撲滅せよ
「鉄則5」でも述べた通り、物流会社における車両事故対策は経営の最重要テーマである。車両事故を激減させた会社の秘策をお伝えしよう。
■眼精疲労はドライバーが最もコントロールできないリスクだ。パチンコ、テレビ、深酒などをプロとして控えるよう徹底指導する。
■部長クラスがドライバーの家庭を訪問することにより、会社と家族の両方から事故の重要性を伝え、理解してもらう。
■配車のやり取りにおいて、ドライバーに「焦り」「プレッシャー」を喚起させる「伝え方(言い方)」を禁止する。

従来のような無事故手当や交通事故のビデオ、JR西日本の日勤教育などと違って罰則重視の対策ではないことが特徴だ。
この10年でドライバーの負担は格段に大きくなっている。納品時間、検品、荷扱い、受領伝票、アイドリングストップなど、ドライバーの業務は多岐にわたり、求められる精度もタイトになってきている。そのような状況でドライバーにプレッシャーを加えるような事故対策を講じるのは逆効果である。
また事故がない、あるいは少ない会社の共通点として、
① あいさつ、マナー、5Sがしっかりしている。
② 車両がいつもきれいに保たれている。
③利益が出ている
なども挙げられる。
詳しくは別表に掲載した「現場チェックリスト」を参照してもらいたい。

【鉄則10】「採用」で勝負をつけろ
強い会社、成長している会社、利益率の高い会社は、人材教育の前工程とも言える「採用」が強い。採用媒体の選定、採用基準の明確化、採用〜入社までのプロセスなどが整備されているのである。社内教育で人材を育てるのは容易ではない。これを裏返せば、教育しなくても成長する優秀な人材を獲得することが重要なのだ。そして「採用」の工程が強い会社は、
① トップ自らヘッドハンティングに走り回る、
② 人材紹介会社を活用する、
③ 優秀な人材が「ここで働きたい」「この人と働きたい」というトップや会社のビジョンづくりなどに力を入れている

ことなどが特徴である。

【鉄則11】人材の多能工化を図れ
教育において、全体をレベルアップさせることほど難易度の高いものはない。選択と集中が必要である。
物流業は「所長産業」である。所長の能力、資質で現場運営の九〇%が決まってしまう。物流業の現場において教育する対象に優先順位をつけるとするならば①所長、②センター長、そして③パート・アルバイトである。現場管理職としての所長およびセンター長には主に以下の能力が求められる。

■数値管理能力
■リスク管理能力
■労務管理能力
■緊急対応力
■コミュニケーション力
■情報のタテ・ヨコ組織への伝達力
■現場改善能力
■執行管理能力
社員とパート・アルバイトに共通して注力しなければならないのが、ジョブローテーション、いわゆる積極的な配置転換である。所長・センター長クラスでは、担当のセンターしか分からないというケースがこれまで多く見られたが、これからは一人で複数のセンターや事業所を運営管理する能力が必要になる。
パート・アルバイトにも、ピッキング、検品、補充といった1人3役が求められる。それによって欠員の対応や、応援体制が組めるようになれば、センターの大きな財産となる。パート間の休日の調整もやりやすくなる。普段と違う現場を体験することで、持ち場とのギャップを認識し、現場改善の意識向上にもつながる。生産管理における多能工化と同じである。

以上、「十一の鉄則」を全て実行するのは、そう容易なことではない。しかし、これをヒントにして自社なりの方法を考えて実施してみる。あるいは、できることから挑戦していくことで御社の“現場改善”に弾みがつくはずだ。