Top > 雑誌寄稿 > 第41回 事例で学ぶ物流改善:『素材メーカーK社の協力会社見直し』

第41回 事例で学ぶ物流改善:『素材メーカーK社の協力会社見直し』

安い運賃を追求するあまり、必要以上に協力会社数が増加していた。
その結果、支払い運賃の水準は抑えられていたが、配車にはムダが多く、協力会社側の工夫を引き出すこともできずにいた。コストダウンを進めるには、協力会社との関係を抜本的に見直す必要があった。


対売上高物流費比率20%
メーカーK 社は北関東に2つの工場を構える年商約300億円の化学品素材メーカーだ。同社の物流改革を担当する業務課のS 氏から、弊社日本ロジファクトリー(N L F )のホームページを通して問い合わせが入った。
そのメールには「物流費のコストダウンが進まない」と書かれていた。とりあえずS 氏に電話をしてみることにした。S 氏によると、K 社の対売上高支払物流費比率は20%に達しているという。素材メーカーの物流費比率としても、とりわけ高い部類に入る。
詳しい話を聞くために、一度K 社を訪問することを約束した。この訪問に合わせて、S 氏には物流費の内訳の分かる資料を作成してもらうようお願いしておいた。
K 社の業務課は本社工場に隣接していた。約束の時間にはまだ余裕があったので、とりあえず工場内を一回りして、現場と製品を確認することにした。K 社の製品は軽量で容積の大きい、俗に「空気を運ぶようなもの」とも称されるような、かさばる荷姿品であった。これを輸送するには、通常よりも容積率の高い荷台を備えた車両を使わなければ割が合わないだろう。
その後、業務課の事務所でS 氏に面会した。会社案内や製品案内などの資料を見ながら相談を受けた。聞けばS 氏は業務課に異動になって、まだ6カ月しか経っていないという。それまでは関西地区で営業を担当していた。そこにトップダウンでS 氏に直接、物流改善の命令が下った。つまり社長特命の担当責任者としてS 氏に白羽の矢が立ったのであった。S 氏は35歳という若さながら、経営陣から高い評価を得ていることがうかがえた。
実際、S 氏は就任当初から矢継ぎ早に効率化を実現していた。まず製品別に在庫水準を見直し、170%の在庫回転率の向上を成功させた。また不良品の引き上げでも一定の成果が上がっていた。さらにストックポイントの見直しにも着手中とのことであった。就任から4カ月目のこと。
そんなS 氏に月1回のトップへの定例報告の場で新たなテーマが与えられることになった。「こまごました改善は後にして、もっと思い切ったアウトソーシングによる改革を実施しろ。そうしないと抜本的にコストを下げることなどできない」というトップの指令だった。これによって、S 氏のそれまでの改善計画は白紙に戻された。この日からS 氏はアウトソーシング先の見直しを含めた支払物流費の削減に注力することになったのだ。
K 社の支払物流費比率が高い原因は、我々との話し合いが進むにつれて、徐々に判明していった。まずは物流会社別・方面別の支払物流費一覧表を見せてもらった。
売上高の20%、約60億円に上る支払い物流費が、一覧表の中に無作為に散らばっていた。数えてみると取引物流会社が46社もあった。これではボリュームディスカウントも効力を発揮しない。聞けば元々は主要4社を幹事会社として設定していたのだが、現在では4社のシェアは40%ほどまで下がっているという。
幹事会社とは名ばかりで、機能していないことは明らかだった

元受け会社の不在
このような現象は一般に、① 過去に物流会社から輸送を断られた経験があり、それがトラウマとなって幹事会社を通さず、随時対応できる多くの物流会社と取引を行った、② 安い運賃を求め続け、出荷や配車の際、常に安い便を使用したため、取引会社が自然に増えていった、ことなどが原因になっているケースが多い。K 社にはその両方が当てはまった。
主要4社に支払っている費用はA 社が突出しており、年間約10億円だった。その他3社がそれぞれ3億円前後という状況であった。この4社のうち一社は中堅物流会社で、他の3社は中小あるいは零細会社だった。
また支払額第一位のA 社は実質的なK 社の専属物流会社と呼ぶべき存在だった。幹事会社の顔ぶれを見ても困った時に頼れる、融通の利く協力物流会社は見当たらなかった。メーンバンク不在の会社経営のようなものであった。
次に我々は契約運賃に目を向けた。K 社は団体独自の運賃タリフを作成していた。そこから短、中、長の距離別に三経路を抜き出し、キロメートル当たりの運賃を算出してみた。平均は113円/km であった。現在の運賃相場は140円/km 〜160円/km である。113円/kmは協力物流会社にとってかなり厳しい水準だ。しかもK 社は配車業務を荷主自身で処理していた。協力会社側では、自社の配送インフラにK 社の荷物を積み合わせるといったコストダウンの工夫ができない。そのために協力会社も自社では走れず、孫請け・ひ孫請けの零細企業に外注しているところが少なくなかった。
どの業務からアウトソーシングすれば良いのか。どのようなフォーメーションが良いのか。新たに3PL 会社をパートナーに選ぶのか。それとも既存の協力物流会社を中心に据えるのか。さらには3PL 子会社の設立までがK 社の検討課題に上っていた。
このうち3PL 子会社設立に関しては、アウトソーシングによるスリム化という方向性に反するとアドバイスしたものの、特命担当責任者のS 氏は「現時点では、このようにしたいという絵が描けていない」と、我々に本音をもらした。
我々が訪問した時点でS 氏は既に数社のアセット型3PL と接触していた。そのうち大手2社だけは受託に乗り気だが、他の会社は逃げ腰になっているという。
K 社の製品がかさばるため、特殊車両を揃えなければならないことが主たる原因のようだと、S 氏は説明した。
これに対して我々からも一つ付け加えた。すなわち協力物流会社にとって、K 社の運賃は安過ぎて、物量があっても旨味がない。それどころか利益を残せるのか不安になるような水準であることを指摘した。3PL が逃げ腰になるのも当然だと私には思えた。
このようにしてS 氏からK 社の物流の概要とこれまでの経緯、支払物流費データの説明を受けた後、私は以下のような4つの切り口からの改善策を示した。

1 物流幹事会社を一社ないしは二社に絞り込む。それによってボリュームディスカウントによるコストダウンを図る
2 現状の配送ルートおよび内容をチェックして、ルート別・内容別に協力物流会社を再編する
3 支払物流費の削減ではなくトータル物流コストの範囲で改善とコストダウンを図る
4 受注業務以降の出荷指示、配車業務まで含めた広範囲なアウトソーシングの実施

このうち「1 幹事会社の絞り込み」では、現在の主要4社のうち中堅物流会社のB 社は、本格的な3PL とまではいかなくても、元請け的な機能を果たすだけの実力があった。このB 社を中心に新たな仕組みを作ることは可能である。ただし、案件が大きくなるため、担当者レベルではなく、B 社のT 社長と直接話し合いを行う必要がある、とアドバイスした。
「2 協力物流会社の組み替え」でも効果は期待できそうだった。物流会社別・方面別の支払物流費一覧を見ると、各物流会社の得意とする方面、つまりK 社の荷物のほかにベースカーゴがあったり、発荷もしくは帰荷がある方面を活かしていないケースが散見できた。また同一エリアに何社もの物流会社が入ることで、効率化の図れないエリアもあった。
協力物流会社に競争意識を持ってもらうという狙いならまだ分かるが、これは前述の通り輸送依頼を断られたトラウマから生じたリスクヘッジであった。恐らくバブル時代のことだろう。かなりの古株社員がいるものだ。今はもうそんな時代ではない。嫌われ役に徹する
「3 トータル物流費のコストダウン」は教科書通りの正攻法と言える。既に訪問前の電話のやり取りの段階で、私は「支払物流費の削減が限界なのであればトータル物流コストの範囲で考える必要がある」と伝えていた。その後、S 氏は私の著書を購入し、その内容をトップに報告していた。すなわち物流費には支払物流費と社内物流費がある。これら二つでトータル物流費は構成されている。そのことにトップは理解を示した。
そして最終目標は必ずしも支払い物流費の削減ではなく、トータル物流コストを10%ダウンさせることにあると、S氏に明言したのであった。
「4 広範囲なアウトソーシングの実施」に関して、本来であれば物流業務の前工程となる受注業務からのプロセスを対象にしたいところであるが、K 社では昨年、社内で受注センターを設置したばかりであり、受注プロセスから手をつけるのは難しいということだった。
となるとアウトソーシングの対象業務は、配車、構内作業、輸配送に絞られる。このうち傭車に関しては、協力物流会社にとって利益の源泉となり得る配車業務を主要物流会社および幹事会社に委託することにした、その代わり車両管理、運行管理そして物流会社の管理と集約化を担ってもらうのである。それによってK 社では社員4名を他部署へ異動させることが可能になる。その異動先は受注センターが最適である。そのための社内的な根回しをS 氏は既に開始している。
S 氏が物流改善の特命を受けてから間もなく9カ月を迎えようとしている。取り組みはまだ途上にあるが、今ではS 氏も協力物流会社と自社社員の嫌われ役に徹する覚悟をすっかり固めたようだ。しかし我々の提案した改善シナリオに対してはS 氏自身、必ずしも納得していない部分もあるという。

さて、K 社は最終的にトータル物流コスト10%ダウンを達成できるであろうか。
また本誌の読者の皆さんなら、どんな改善シナリオを描くであろうか。