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第47回 事例で学ぶ物流改善≪特別編≫:『孫請け管理で現場に差がつく』

荷主と3PLとのパートナーシップの重要性は既に繰り返し指摘されている。しかし3PLと現場運営を担う協力会社とのパートナーシップには、いまだ十分な配慮がされていない。
そこをクリアしない限り、日本の3PL市場は期待されているほど拡大しない。


日本にも3PLが浸透してきたといわれる。確かに外資系や中堅以上の荷主企業のロジスティクス担当者であれば、今や誰でも3PLを知っている。
しかし、それ以下の規模の荷主となると話は違ってくる。3PLという言葉は聞いたことがあるけれど、具体的に何を指すのかわからない、あまり興味もない、といったところが多くの荷主企業の実情ではないか。
理由の一つは、3PLの導入メリットがはっきりしないことにある。3PLの本当の成果は、運営開始から一定期間を経てみないとわからない。通常で数年はかかる。その間にも当然、荷主の物流環境は変化するため、成果の数値化が難しい。それに加えて、運営開始後の継続的改善が、多くのケースで荷主の期待通りには進んでいない。
日本の3PLも提案のプロセスはかなり充実してきた。しかし、後工程にはまだ多くの課題を残している。そもそも現状の改善によるコストダウンは、3PLにとって単に売り上げ規模が小さくなるだけだ。ゲイン・シェアリング(成果配分方式)を導入していない限り、3PL側には継続的な改善への動機付けがない。しかも現場の運営ノウハウは、元請けの3PLよりも、実際に現場を運営している下請け企業のほうが上である場合が多いのである。

地域性のしがらみ
先日、化学品メーカーA社の物流コンペをサポートした。A社は外資系ながら、国内の某地方港のそばに自社工場を構えている。
そこから海外や国内市場向けに出荷する製品の管理を3PLに一括して委託しようというコンペだった。A社の支払い物流費は年間約6億円。
3PL案件としてミドルクラスの規模はあるが、最終的にパートナーとなった3PLには、A社が工場の隣接地に所有する土地を物流センター用地として賃借することが期待されていた。
コンペの開催に当たってA社は工場の既存の協力物流会社に参加を呼びかけるとともに、我々日本ロジファクトリー(NLF)にも候補となる3PLの推薦を依頼した。
我々はA社の求める業務内容や地域性に配慮して、大手特積み会社や物流子会社、港湾系物流企業など、タイプの違う有力3PLを数社ピックアップして、候補に挙げた。個人的には、そのうち大手化学品メーカーの物流子会社B社で決まるだろうと予想していた。
もともとB社は親会社向け業務の経験があるため、化学品のオペレーションに慣れている。A社の工場のそばに親会社が工場を構えているので土地勘もある。しかも親会社とA社の製品は市場でバッティングしていない。
A社の所有する土地を使うという話も、事前のヒアリングから問題ないという感触を得ていた。条件は揃っていたはずだった。ところがコンペの直前になって、B社から「今回は辞退させていただく」 との連絡が入った。
聞けば、B社がアンダーで使おうと考えていた地場の運送会社が、A社のコンペに既存協力会社として多数参加することが分かったからだという。
B社の提案は、そうした地場の運送会社のコストにマージンを加えたものにならざるを得ない。
コスト面での勝算がないという判断だった。地域的な制約もあったようだ。
東京や大阪などの大都市とは違って、地方の物流市場には、いまだに縄張り的なしがらみが存在する。
地元の有力物流企業が受託していた仕事をコンペで奪いとる格好になった3PLが、事業者間の調整で下手にシコリを残せば、新体制移行後の日常業務に支障をきたす恐れがある。
私はB社の話を聞いて、まだまだ日本には3PLが根付いていないと痛感せざるを得なかった。
3PLには高度な管理機能が求められる。A社のコンペでも地場の物流企業側からB社に対してアンダーで使って欲しいと依頼してくるのが、本来の姿であるはずだ。ところが実態は逆だ。3PLよりも地場運送企業のほうが優位に立っているのである。

フリーアセットを目指せ
ノンアセット系の3PLが日本市場では機能していない。ノンアセット系をうたっている3PLの多くは、荷主と下請けを仲介するだけの、いわゆる〝水屋〞(運送の仲介)の域を出ていない。
本来、3PLはアセット系かノンアセット系かではなく、フリーアセットが最も適している。緊急輸送や繁忙期の物量に対応するためには、一定のアセットを持っていたほうが有利だ。
しかしアセットを持ち過ぎると今度は自由度がなくなる。自社倉庫を埋めることや、自社配送網の活用が先に立ってしまう。目安としては一〇〇の仕事に対して五〇のアセットを所有していれば、フリーアセット型の3PLが成立する。
これは3PLに限った話ではない。私は日頃から倉庫会社などには100の倉庫スペースに対して150の仕事を受託するようにアドバイスしている。
足りない五〇は借庫でまかなう。そして仕事が減った時は返せるようにしておく。それによって安定的に利益を確保できる。
輸送も一〇〇%を傭車でまかなうのは危険だ。マクロ的にみて物量は低迷しているといっても繁忙期には車両が足りなくなる。
傭車率を高くしたいのであれば、協力輸送会社との関係作りに日頃から配慮しておく必要がある。大手メーカーの物流子会社の場合、親会社のブランド力や信用力があるため比較的傭車の確保も容易だ。ただし、専属的に使っている小規模な協力輸送会社の車両は、自社アセットと事実上ほとんど変わりがない。協力輸送会社を力で囲い込むのではなく、繁忙期でも優先的に車両を回してもらえるような関係を仕組みとして作っておくべきだ。
名古屋にM社という中堅運送会社がある。年商は50億円規模だが、水屋業がメーンで自社保有車両台数は5台程度。しかし繁忙期でも、きっちり車両を確保している。
M社の社長は暇さえあればインターチェンジの駐車場に足を運び、休憩しているトラックドライバーに名刺を配って回る。「荷物がないときは連絡してこい。配車係に名刺を渡しておいてくれ」というわけだ。ここまではそれほど珍しい話でもない。
それに加えて、M社は協力会社に対する支払いを他の運送会社よりも前倒しで処理している。元請け運送会社と協力会社の間の支払いサイトは通常1カ月以上。
それに対してM社は仕事の終わった翌日に協力会社の口座に現金を振り込む。そのため資金繰りがタイトになる繁忙期ほど、M社の仕事には車がつく。
一方で大手3PLの下請け現場は赤字の場合が少なくない。もちろん赤字の仕事など受ける方が悪いという理屈はあるだろう。
しかし、協力会社としては売り上げ規模が大きいため容易には手を引けない。元請け3PLに足元を見られている。
赤字を他の仕事で穴埋めすることで、何とか食いつないでいるというのが多くの下請け会社の実情だ。
それでは長続きはしない。
しかし荷主企業側には、そうした3PLの実力を見極める力がない。そのためブランドに頼る。荷主企業と3PLの双方が両輪となってスキルを上げていかないと、日本の3PL市場の拡大はおぼつかないだろう。
その意味で日本の3PLは、まだ創生期を脱していない。

2006年12月■第47回●図①

2006年12月■第47回●図②