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第51回 事例で学ぶ現場改善:『できるセンター長の作り方』《特別編》

物流業は“センター長産業”だ。できるセンター長を何人抱えているかで業績は決まる。ところが、ほとんどの物流企業がセンター長を確保・育成する仕組みを備えていない。それどころか、貴重な人材を本社と現場の板挟みに追い込んでいるのが実情だ。

良い現場の条件
物流業は所長・センター長の能力で90%が決まってしまう。つまり、物流業とは〝所長産業〞、あるいは〝センター長産業〞なのだ。
我々日本ロジファクトリー(NLF)はかねてから、そう主張してきた。実際、これまでに数多くの物流現場を視察してきたが、良い現場はどこもセンター長がしっかりしている。その逆もまたしかりだ。

良い現場とは何か。「5S(整理・整頓・清潔・清掃・躾)」はもちろん重要だが、最終的には利益の出ている現場こそが良い現場だ。トータル物流コストに占める人件費の比率が一つの目安になる。50%以下に抑えなければ、まず利益は出ない。
それを実現するにはムダの排除や作業の効率化に加え、現場スタッフに占める非正社員化比率を80%以上に高める必要がある。
ただし、それによってオペレーションに支障を来すようでは元も子もない。
現場の人の使い方には今どの会社も困っている。運営コストを下げるために、パート・アルバイトを活用する。
しかし人手不足でパートが集まらない。仕方なく派遣会社を使う。その結果、現場は正社員、パート、派遣社員が入り交じる多重構造になっている。それだけ管理は難しくなる。これまで以上にセンター長の手腕が問われている。
通常、センター長は①労務管理、②運行管理、そして③クレーム対応の三つを主な業務とする。このうち最大の役割を一つ選ぶとすれば、やはり労務管理、人のやり繰りに尽きる。
そして、人のやり繰りには、コミュニケーション能力という監督者としての資質が求められる。できるセンター長は一日中、机に座っていないものだ。
常に現場を回って一声かけ、スタッフとのコミュニケーションをとっている。昼食もパートに交じって同じテーブルを囲む。
繁忙期で現場にムリをさせた時には自腹で缶ジュースを差し入れる。そうした小さな気配りで、現場の空気が違ってくる。ダメなセンター長には、それができない。
センター長のタイプは大きく二つに分かれる。中小企業の場合、センター長は、ほとんどが現場の叩き上げだ。作業スタッフやドライバーを経験したベテランが、班長からセンター長へと昇格する。
一方、荷主企業や中堅以上の物流企業では、センター長が事務系管理職の仕事として位置付けられている。
いずれも一長一短がある。前者の現業系のセンター長では、オーバースペックが往々にして問題になる。
もともと中小の現場スタッフには、デスク業務や管理を苦手とする人が少なくない。それが嫌で物流現場の職に就いたのに、いつのまにかセンター長に祭り上げられ、計数管理などの苦手な仕事を強いられる。
結果として会社の期待に応えられない。一方、事務職系のセンター長は、いずれ本社に戻るという考えが常に頭から離れない。当然、本社には良い報告をしたい。
しかし現場を敵に回せば、オペレーションが立ち行かなくなる。そもそも高学歴の事務系は現場スタッフとのコミュニケーションを苦手とする場合が多い。結果として現場と本社の板挟みに合ってしまう。
苦労に反して、待遇面では恵まれていない。
NLFでは、物流人材の紹介事業も手がけている。その募集実績を見ると、荷主企業・物流企業問わず、センター長クラスの年俸は30代後半から40代前半で700万円〜750万円程度。
中堅以下の物流企業のセンター長となると500万円前後まで落ちる。
年間休日数が一〇〇日程度で繁忙期には休日出勤も強いられることを考えると、決して割りの良い仕事とは言えない。
転職市場でセンター長は現在、完全な売り手市場になっている。センター長を求める企業は多いが、なかなかマッチングできない。
待遇面に加え、勤務地の問題も大きい。物流センターの多くは大都市圏でも郊外に立地している。僻地であることも珍しくない。引っ越しを伴う就職には多くの人材が二の足を踏む。
物流業はセンター長産業だという認識のもと、人事戦略を切り替える必要がある。同じ会社内のセンター長でも、各人の能力には当然バラツキがある。
しかし、それ以上に大きいのが会社間の差、会社ごとのセンター長の能力レベルの差だ。これは、その会社におけるセンター長の「① 採用」「②教育」「③キャリアプラン」の違いによるものだ。
まず「①採用」について。
繰り返しになるが現状では外部からの登用は容易ではない。対策としては遠回りに見えても社員研修が有効だ。
研修の狙いは教育だけではない。社内の人材を発掘することも研修によって得られる大きな効用の一つだ。
資質のある人材であれば、30歳以下の若手でもセンター長に登用すべきだ。ただし、若手の抜擢は経営層の援護が必須である。任せきりでは、せっかくの人材を年長の社員やベテランのパートに潰されてしまう恐れがある。
これと並行して、センター長を現場のスターにする必要がある。センター長になったら予算管理やクレーム処理など苦労ばかりが増え、休日も見返りも少ないということでは、手を挙げる者などいなくて当然だ。班長や配車係などのセンター長候補者に、昇進したいというモチベーションを持たせる必要がある。
必ずしも給料や待遇だけの問題ではない。金銭的インセンティブには限界がある。長くは続かない。それよりも優れた仕事を表彰するなど、職業人としての誇りや満足感に訴えかける。現場のQC活動も同様だ。
小遣い程度の賞金を出すより、額縁に入れた賞状やトロフィーのほうがよほど効果的だ。賞状やトロフィーを自宅に持ち帰れば、家族に仕事を理解してもらう良いきっかけにもなる。

2007年4月■第51回●図①

キャリアパスを示せ
「②教育」では、人事ローテーションが鍵になる。ダメなセンター長は自分のセンターのことしか知らない。井の中の蛙なのだ。板前の修業と同じように、センター長も様々な現場を経験することで初めて引き出しが増えていく。
実際、人事異動でいろいろな現場を経験させている会社のセンター長は総じてレベルが高い。それに対して、センター長の改善能力や意識レベルが低い会社は、センターの横展開を経験させていない。社外はもちろん、同じ会社内であっても他のセンターのことを知らないのである。
3つ目が「③キャリアプラン」だ。多くの会社でセンター長は〝上がり〞のポストになってしまっている。
センター長として定年を迎えるケースが大半だ。定年間際ともなれば、現場との摩擦を生じる恐れのある改善活動など進めようとするはずがない。
それどころかセンター長自身が改革のブレーキにもなってしまうことさえ珍しくない。センター長を上がりのポストとするのではなく、センター長から本部スタッフに昇格する道を示しておかなければならない。本人がそれを望むかどうかは別だ。
現場好きのセンター長はむしろ望まないだろう。その場合には、現場作業の専門会社を子会社として設置するという手もある。子会社経営幹部という道を開くのだ。
センター長の有効なキャリアプラン作りを、重要な経営戦略と位置付けて取り組む必要がある。