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第58回 事例で学ぶ現場改善:『年商100億円以下クラスは再編必至』

物流子会社の市場価値を評価する動きが水面下で活発化している。来年は物流子会社の再編が一気に加速しそうだ。とりわけ年商100億円以下の中堅以下クラスでは売却や精算が相次ぐはずだ。業績好調な優良子会社も例外ではあり得ない。むしろ買い手がつきやすいため、親会社としては再編に手を付けやすい。

内部統制強化で売却が加速
物流子会社に関するコンサルティング案件が増えている。それも従来であれば子会社自身から外部荷主の拡大や業務改善のサポートを依頼されることが多かったのだが、最近は話を持ち込んでくる相手が変わってきた。
親会社から子会社の実力や市場価値を客観的に評価して欲しいという相談を受けたり、あるいは3PLやファンドから特定の物流子会社の買収について意見を求められる機会が増えている。
我々日本ロジファクトリーでは、子会社の評価を依頼されると、まずはその子会社のコスト水準と品質レベルを同じ業界の他社と比べてみる。
さらには、その業界の物流市場における物量的なシェアや位置付けを評価する。コストや品質の点で劣っている子会社でも、一定以上のベースカーゴとインフラを確保できる場合には改善の余地がある。その業界の物流プラットフォームとして事業モデルを再設計できる可能性があるからだ。
子会社の市場価値を評価したものの、どこにも優位性が見られない場合にはどうするか。相手が親会社であれば、将来のリスクを考慮して黒字の出ている段階で、つまり売れるうちに売ってしまうべきだと報告することになる。
相手が3PLやファンドであれば、買収にはその親会社に対する商権、親会社の荷物を獲得するという意味だけの価値しかないことを伝える。現在、売却を検討されている物流子会社の多くは業績的には決して悪くはない。それどころか借金はなく、毎年一定の利益も出している、内部留保さえある場合が珍しくない。少なくとも親会社の連結業績の足を引っ張っているわけではない。
しかし、財務的にグループ経営のお荷物になっているわけではなくても、子会社を売りたいと考える親会社が後を絶たない。
一つは内部統制の問題が大きい。物流事業の運用には交通事故や情報漏洩などのトラブル、法令遵守の問題などが常につきまとう。親会社にとっては大きなリスク要因だ。
しかも物流事業は、親会社のビジネスとは全く性格が違う。いったん物流子会社の業績が悪化してしまうと、親会社にはテコ入れする術がない。親会社の役員クラスには物流事業に熟知した人間などまずいない。
物流に限らず、現在のグループ経営においては、何か問題が起きても対処できること、つまり、その分野に明るい人材を経営者として投入できることが、その事業をグループ内に残す条件の一つとなる。それができない事業は、すべて売却の候補になり得る。今や親会社内の事業でさえ、売却の対象になる時代だ。終身雇用の維持など既に制約ではなくなっている。
物流子会社だけが例外ではあり得ない。ましてや物流子会社の存在が親会社の物流の足かせになっている場合には、グループ内に残しておく合理的な理由はなくなる。
そもそも物流子会社の業績は、その実力とは一致していない。実際、物流子会社の仕事を物流専業者に移管すれば、その瞬間に10%〜25%のコストダウンを実現できることが多い。それだけコスト管理に甘い。
我々が過去に調査したケースでは、単純な幹線輸送の費用が相場よりも五割近く高いことさえあった。一般にメーカー系物流子会社の多くは、サービス品質に関しては水準以上のレベルに達している。
そう言えば聞こえはいいが、多くの場合、過剰品質に陥っている。それが高コスト体質を招いている。とても外販には耐えられない。しかも親会社のベースカーゴがあり、営業の必然性がないため、いつまで経っても外で通用する人材が育たない。子会社の役員会の顔ぶれを見れば、おおよそのことは見当がつく。
外販力のある物流子会社は、役員も半数はプロパー出身者で占められている。それに対して外販できない子会社の役員には親会社からの天下りしかいない。“井の中の蛙”で世間を知らないのだ。
親会社の所有する土地や建物などを、相場よりも安く子会社に貸与しているケースも目立つ。これも実質的には子会社に対する利益の補填である。
親会社にとってアセットの有効活用は今や大きな経営課題だ。しかし子会社の拠点を他に移さない限り、それができない。このことも子会社売却を後押しする一つの要因となっている。
個人的には今年度の後半から来年度にわたり、物流子会社の売却や精算に踏み切る親会社が相次ぐだろうと予測している。
輸出関連の大手メーカーに関しては、近年の業績回復によって、痛みの伴う物流子会社のリストラをむしろ先送りする動きも見られる。
しかし中堅以下のメーカーや国内中心の産業では、子会社の再編が一気に加速しそうだ。年商で100億円以下のクラスの物流子会社は、今やどこも戦々恐々としているはずだ。

設立目的がその後分ける
その一方で物流子会社を新設する動きもいまだに続いている。ただし、かつてのように物流費の外部流出を止める、あるいは人材の受け皿機能を持たせるといったことが目的ではない。
荷主としてのニーズに既存の協力物流会社や他の3PLでは対応できない場合に、自ら専門会社を設置している。
荷主企業と物流会社が共同出資のジョイントベンチャー方式で子会社を設立するケースもある。従来のオペレーションを維持するだけなら、わざわざ物流子会社を設立する必要などない。協力会社の多くはコスト削減要請にもこれまでは比較的従順に応じてきた。
しかし、生産性向上の裏付けを欠いた値下げには限界がある。燃料費やドライバー人件費の高騰が深刻化している現状で、協力会社にさらに値下げを無理強いれば品質悪化を招く恐れが避けられない。
そこで、仕組みの効率化や生産性向上という裏付けのあるコスト削減を実現するために、荷主が子会社を作って自らオペレーション改革に乗り出しているのだ。
顧客から要求されるリードタイム短縮やサービス品質に協力会社が対応できない場合も同様だ。そのため、現在新設されている物流子会社の多くは外販を念頭には置いていない。また子会社の社長は、親会社の物流管理責任者が兼務するケースが多い。それでも法人格を親会社と分ける狙いは、外部から物流の専門人材を招くこと。
そして社内で処理していたコストを法人間の取引に変えることによる物流費の可視化にある。狙いのハッキリした物流子会社の新設は、連結経営時代の現在でも通用する。
過去を振り返っても、例えば食品メーカー系の物流子会社は、産業として対売上高物流コスト比率が高く、かつハイレベルな品質が求められることから、背に腹は変えられない必然性を持って子会社を作っている。そうした食品系子会社の多くは今後も生き残っていくことになるだろう。
しかし設立時の動機付けの弱い物流子会社は後々まで問題を引きずることになる。子会社を活かすも殺すも結局は親会社の政策次第なのだ。

     第58回●年商100億円以下クラスは再編必至●図①機能評価

     第58回●年商100億円以下クラスは再編必至●図②企業力評価

     第58回●年商100億円以下クラスは再編必至●図③ノウハウ評価