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第69回 事例で学ぶ現場改善:『中小運送会社の共配事業戦略』

年商10億円以下の地方の零細運送会社の命運は、共配にかかっている。大手荷主や大手運送会社が車両を満載にできない小さな商圏でも、地域に密着した地場運送会社であればカバーできる。そこでは自然発生的な共配が機能している。


荷主主導型では失敗する

共同配送の取り組みは、その多くが失敗している。とりわけメーカーや卸など荷主が主導する共配システムは、ほぼ全滅と言っていい。
共配は理屈としては分かりやすいのであるが、いざ具体化の段階になると、その制約条件の多さにトライアルまでも行きつかないことが珍しくない。
その理由としては、共配に参加する各社でセンターの最適立地が違う、各社の納品時間指定が重なってしまうため時間厳守が物理的に困難である、営業情報・製品情報・販促情報が競合他社に漏れてしまう恐れがある、などがあげられる。
共配が往々にして「総論賛成、各論反対」に陥る所以である。
現在、自動車メーカーや大手卸、スーパーなどは、調達物流の内製化の一環として、納品車両の帰り便を利用して、仕入先から商品を引き取ってくるという取り組みを積極化させている。これも共配の一種と言っていいだろう。
しかし、帰り便による集荷は、仕入先が納品先の100キロメートル圏内に集中して立地していないと、まずメリットは得られない。むしろ空車のままいったんセンターに戻り、もう一回転、別の納品を行った方が効率的な場合が実際には多いのである。
私の知る限り成功している、もしくは軌道に乗っている共配は、ほぼ全てが物流会社の主導によるものだ。
物流会社が旗振りを行い、中立的な立場から、各社の納品時間、センター立地、情報システムを調整し、決定した仕組みで運営している。つまり物流会社のロジックに基づいて配送インフラと運営ルールを取りまとめている。
荷主各社の言い分を一つの仕組みに全て取り込もうとすれば、当然ながら無理が生じる。制約条件の多い共配はコストダウンにはつながらず、コストアップとなってしまうことさえある。
従って共配を運営する物流会社は、各荷主にとってのベストな仕組みではなく、ベターであることに目標を置く。
このような共同配送の限界やデメリットを良く理解し、自社配送網と共同配送網の使い分けを行っている荷主も、最近では現れてきた。
しかし、そうした荷主は物流に対する意識の高い一部の大手に限られていおり、その他の普通の荷主は共配に関する一般的知識はもちろん、どの物流会社に委託すれば共配のメリットが享受できるのかという情報さえ、ほとんど持ち合わせていないのが実情である。
一般に物流会社主導の共配は、その運営形態から大きく4つに分類できる。その最大手は宅配会社を含めた特積会社(路線会社)だ。
他にキユーソー流通システムやアルプス物流など、積み荷・業界を特化した共配会社がある。「専門特化型広域運送会社」と呼ぶことにする。この2つが全国区の大手だ。
これに対して中堅以下の運送会社も、エリア限定で広義の共配を提供している。これもまた2つに分けて整理する必要がある。
北海道、四国、九州といった地域ブロックをカバーしている「地域運送会社型」と、福井、長崎、奈良、和歌山、鹿児島、千葉の房総エリア、静岡の伊豆エリアなど、物流面での〝陸の孤島〟をカバーする「地場運送会社型」である。

2008.10■図●共同配送マトリックス 
地域運送会社型がカバーするエリアは、荷主にとって「得意先はあるが取引金額が少ない、しかも物流コストが高くつくので得意先別損益では赤字になっている恐れがある」という市場である。
そこでは会社のメンツよりコストが優先されるため、同業他社との共配であっても抵抗が少ない。
とくに書籍、家電、菓子など商品単価や粗利率の低い業界、商品での成功率が高くなる。従って、これらの業界の大手メーカー同士のエリア共配が地域運送会社の主なターゲットになる。
このほか、当該エリアを地盤とする卸売業、ドミナント型の食品スーパーやホームセンター、外食などのリージョナルチェーンが主な荷主候補だ。
ただし、このうち卸売業同士の共配の場合には細かな配慮が必要だ。取り扱い品目が〝似すぎても違いすぎても〟メリットが出ない。似すぎると競合同士のバッティングが、メーカー同士のとき以上に大きく影響してしまう。
しかし、違いすぎれば、納品先の重複がなくなり、共同化の効果が得られない。組み合わせが大事だ。
一方、地場運送会社は都道府県レベルのエリアに特化して、大手運送会社や地域運送会社のアンダーとして機能している。
〝ドミナント型〟とでも呼びたいところだが、実態としては戦略的にドミナント展開を採っているというより、結果的にドミナントにとどまっている会社がほとんどである。それでも中堅以上の運送会社では採算のとれないニッチなエリアを担っているため、元請けの運送会社はその地域の配送を頼らざるを得ない。〝よろず屋〟として、あらゆる種類の品目を使うことになるため、必然的に共同配送のかたちになる。
地場運送会社の共配戦略としては、下請けに徹し、先行投資や大型投資を避け、〝よろずや型小口共配〟とも呼ぶべき仕事を、少しずつ積み上げていくのが望ましい。
拠点は借庫をベースとして5坪〜10坪の保管業務にも積極的に対応し、冷凍車やユニック車などの特殊車両の所有はベースカーゴがある分に抑える。オーバーフロー分は地域同業者の協力傭車で対応する。
運営面では〝時間指定〟への対策が重要である。荷主や元請けの要求をそのまま受け入れてしまうと、
午前中に配送が集中して、投下車両が増加してしまう。それが午後からは空車になり、経営効率が悪化する。
荷主や元請け、納品先と十分なコミュニケーションをとって、鍵預かりによる無人・夜間納品、納品時間のアローアンス交渉、引き取り(着荷主が商品を取りにくる)対応などの協力を得る必要がある。

自然発生型は強い
このように年商10億円以下の中小零細運送会社では、荷主がそれを共配と認識しているかどうかは別にして、採算確保のために何らかのかたちで広義の共配を行っている。そうしないと生きていけない環境にある。
運送会社は常に積み合せを考えており、同じ方面で納品時間の調整がつけば、ベースカーゴにサブカーゴを載せるかたちで車両を仕立て、一運行当たりの売り上げアップを狙う。帰り荷の確保にも当然の業務として組み込んでいる。最近大手荷主が取り組んでいる配達後に集荷というスキームも、路線会社にとっては従来から常識となっている。(ただし、走行ルートがほぼ固定されているため、突発的もしくは緊急の集荷依頼があった場合の〝追っかけ車両〟など、バックアップ体制を準備しておかないと依頼を断らなければならなくなる)。
あるいは時間帯別に違う荷主の商品を乗せる「時間共配」。午前中にA社、午後からはA社と近い距離にあるB社、さらに深夜にはドライバーを交替させて、別のC社の商品を運ぶといったように、車両を1日に何度も回転させることで稼働率を高める。
こうした運送会社による共配は、荷主同士の共配を理論先行の大義名分型だとすれば、生き残りをかけた自然発生型だ。
必然性が高いだけに、成功する確率も大きいのである。