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第71回 事例で学ぶ現場改善:『協力運送会社見直しと運賃体系変更』日配食品メーカーC社

若き新社長の就任で老舗の日配食品メーカーの急成長が始まった。ところが事業規模の拡大に物流整備が追いつかない。高騰する物流コスト。協力物流会社を一社に集約する体制が仇となり、運賃の値上げ要請にも言いなりになるしかなかった。


運賃値上げ要請に打つ手なし
今回紹介する食品メーカーC社は、東北に本社を置く年商80億円の中堅企業である。
創業120年という老舗で長年売り上げは横ばい傾向にあったが、5年前に当時の社長の息子が新社長に就任してからは新たな成長軌道に乗った。
商品開発に力を入れた結果、新商品がヒットし、ここ3年で年商を30億円以上も増加させている。これに伴いアイテム数もそれまでの500から1200へと急増し、販売網も日本全国に広がった。
現社長の友人である某公認会計士の紹介で、私はC社を訪問することになった。初めて目にするC社の建物や室内の様子は、さすがに歴史を感じさせるものであったが、現代的で斬新なオブジェが飾られているコーナーが設けられているなど、老舗企業とベンチャー企業の両面を持ち併せている会社という印象を受けた。
公認会計士と私の対応に当たったのは、C社の番頭格であるS専務で、ほかに中堅社員2人が同席した。
S専務は「現在の我が社には、ここ数年で急成長したリバウンドがきている。とくに物流の問題が大きい」という危機意識を持っていた。もちろん、それが私の呼ばれた理由である。
C社は食品のなかでも、鮮度が重要で毎日納品する必要のある商品、いわゆる〝日配品〟をメーンにしている。
〝地産地消〟を原則とする商品であり、C社に限らず、中小の日配品メーカーが事業エリアを拡大しようとする場合には往々にして物流がネックになる。
しかしC社はそのことを見越していたようだ。販売エリアの拡大に伴い、本社工場のほかに大消費地の関東に2カ所、関西に1カ所の計4カ所に工場を配置していた。物流を重視した賢明な措置と言えるだろう。
しかも、この4工場は現状で既に年中無休・24時間フル稼働の状態であった。
一般に中小の日配品メーカーと言えば、大手メーカーから委託されたOEM生産や大手小売業のPB商品を事業の柱としているものだが、C社の場合は自社ブランド商品の生産で手一杯であるため、OEMやPBの生産には対応せず、依頼が来ても断っている状況であるという。このことにもC社の戦略性が見てとれるように感じた。
ただし、物流コストは高止まりしていた。売上高に対する支払い物流費の比率は10%をはるかに超える水準にあった。
C社は協力物流会社を商社系の一社に集約し、運んだ商品の販売価格に対するパーセンテージで支払い運賃を算定するという従価制を採っていた。急成長企業に相応しい、管理の手間のかからない体制と言える。
しかし、これによって協力物流会社の値上げ要請に対し、C社側からは何の手も打てない状況に陥ってしまった。
S氏と中堅社員2人の説明によると、この5年間の販売拡大に管理組織や機能の整備が追いつかなかったようだ。その結果、物流のみならず、生産や情報システムといった、本来なら片手間では対処できない重要な業務の管理が、兼務というかたちで特定の人材に集中することになってしまった。
こうしてC社の3人から一時間ほど話を聞いて、私は物流体制を抜本的に見直す必要があるのは明らかだと判断した。
そして我々日本ロジファクトリー(NLF)として、C社に対して以下の方向性を提示した。

1.協力物流会社の一社集約を改め、東西それぞれに主力幹事会社を選定する。幹事会社には実運送を行っている会社を選び、ムダな中間マージンをカットする。運賃体系は従価制からケース単位に改める。
2.物流コストの可視化
3.物流コストの適正化
4.物流機能強化に向けた社内体制づくり

これに対してC社からのリクエストとして「5.物流コストから見た得意先損益の検証」が挙がった。加えてC社はこれまで卸経由で販売を行っていたが、今後は小売りとの直接取引を拡大していくつもりであるため、その点でもサポートが欲しいとのことであった。
もちろん長年の取引先の卸には〝義理〟があり、一刀両断に切り替えができるわけではないことは承知しているという。

従価制運賃を方面別ケース単位運賃に
このような背景のもと、6カ月におよぶ物流改善プロジェクトを開始した。まず、新たな協力物流会社の選定に着手した。その候補として三社をNLFから紹介した。
①食品卸への納品を行っている物流会社、②大手小売業の物流センターへ納品している物流会社、③当該エリアで物流センターを運営し店舗配送を行っている物流会社の3社である。
いずれもC社の荷物との、積み合わせ輸送や共同納品によるコストセーブを狙ったものだ。
C社の提案要請に対し、3社がそれぞれ方面別のケース運賃とチャーター運賃を提示してきた。なお運賃体系をそれまでの商品価格に料率をかける従価制からケース単位に改めるのは、従価制運賃では方面別の取引先採算が判断できないことが大きな理由の一つであった。
実際、それまでC社では新しい得意先からの引き合いがあっても物流コストの問題で商談の滞ることが少なくなかったという。
これに対して候補3社の見積もりは、いずれも全国約100カ所の納品先がエリアに区分けされ、方面別の出荷量とケース運賃が明確に示されていた。
そして3社のうち二社の見積もりは、現状と比較して大幅に割安であった。この相見積もりを出発点として以下のプロセスで選考を進めた。

①見積り金額以外での提案
②現場視察
③日配品の取り扱い、および卸、店舗、物流センターへの納品実績
④現場責任者を交えた協議

コンペの結果、西日本は既存の商社系物流会社をそのまま利用することにして、候補企業のうち一社を、東日本エリアの新たなパートナーに選んだ。これによって支払い運賃のコストダウンが実現した。
物流の可視化については、トータル物流コストと、方面別物流コストを算出することから開始した。
これをベースに、得意先別物流コスト、商品別物流コストを算出するという2段階のプロセスで進める。
作業にはC社の財務担当者M氏が中心となって当たった。私が会計士とともにC社を訪れた時に同席した人物である。
算出されたトータル物流コストを見て、社内のプロジェクトメンバーたちは目を見張った。C社の年間の波動(季節波動)、つまり夏場の繁忙期と冬場の閑散期の物量の差は2・5倍に達していた。そしてトータル物流コストに占める支払い運賃の割合は50%を超えていた。
C社の場合、日配品という商品特性上、物流センターはDC(在庫型)ではなく、TC(通過型)である。
庫内作業は仕分け・出荷が中心で、他の一般的な商品と違って、保管料やピッキングコストはほとんどかからない。ただし、配送リードタイムは極端に短い。それだけに、支払い運賃が大きく採算性に影響してくるのである。
この事実を数値で目の当たりにできたことは大きな収穫であった。工場から納品先までの距離を基に新規顧客の開拓に当たれば良いことがはっきりしたからだ。
つまり物流管理の問題を超えて、営業戦略に一つ指針を与えることができた。それまでの従価制運賃では納品先別の配送費が把握できなかったため、工場近隣の顧客には実際よりも割高な運送費が割り振られていた。方面別のケース運賃がはっきりしたことで、管理上のボトルネックが解消された。近隣の顧客の納品価格の引き下げが可能になった。その結果、他社メーカーの商品をC社の商品に切り替える取引先も出てきた。

2008.12■図●見積書フォーマット例 
若き初代物流部長の誕生
またこのプロジェクトの長期的な成果として最も大きかったのは、物流部の発足だろう。
それまで営業や生産管理の下部機能として、担当者に兼務で当たらせてきた物流管理を独立した部門に格上げし、物流を専門的かつ継続的に管理・運営する体制を整えた。ただし、物流部長の人選は難航した。
通常、C社クラスの規模であれば社内から選ぶ以外に、社外の経験者の登用も検討していいところだが、C社の若社長はそれをよしとはしなかった。
専門知識のある人材を外部から招くより、たとえ初めは素人でも物流を運用しながら自前で人材を育成していきたいという想いが強かった。
結局、初代物流部長には今回の改善プロジェクトで最も多くの汗をかき、大きな貢献した財務スタッフのM氏が抜擢された。若干33歳の部長誕生である。
今回のプロジェクトを通じてM氏は物流の重要性と面白さに気付いたという。「特に物流を数値に置き換えていくことの威力にひかれた」と、新たな使命に意欲を燃やしている。