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事例で学ぶ現場改善:『物流コンペの思わぬ結末』リサイクルチェーンP社

リサイクルショップの店舗を回って、各店舗が調達した商品を回収するネットワークを再構築することになった。ベースカーゴを持つ複数の物流会社を組み合わせてチームを作り対象エリアを分担、帰り荷や車両の空き時間を使ったローコストのネットワークを設計した。我々としては自信のある提案だったが、予想外の結末が待っていた。

帰り便を利用したローコスト物流
 リサイクルチェーンを運営するP社は
全国に約200店舗の直営店ならびにフランチャイズ店を展開している。
昨今の景気の悪化もP社にとっては追い風となり、
業績は拡大の一途を辿っている。
同チェーンでは基本的に各店舗が主体となって、
それぞれ中古品を仕入れている。
ただし、調達した商品のうち、その店舗で再販するのは約3割。
残りの7割は現品のまま、あるいは加工センターで補修したうえで
海外の新興国に輸出販売している。
各店舗から輸出用の商品を回収する物流インフラは、
東日本と西日本でエリアを大きく2つに分け、
それぞれネットワークを構築している。
価格の安いリサイクル品を扱っていることから、
通常の相場で運賃を支払っていては商売が成り立たない。
徹底したローコスト化が物流管理上の必須条件となっている。
輸送手段の選択肢は、きわめて限られている。
路線便はインフラがハブ&スポークの形態になっていて
通過拠点数が多いため、コストが合わない。
回収した商品をいったん保管スペースに仮置きして、
ロットをまとめて輸送しようとしても、積み換え作業がネックになる。
唯一とも言える選択肢が、
ベースカーゴを持つ既存の輸送ネットワークに相乗りすることであった。
ベースカーゴを納品した後の帰り便や車両の空き時間を利用するのである。
幸いなことに西日本エリアでは先頃、
日用雑貨品をベースカーゴとする物流インフラを見つけることができた。
これを利用することでキログラム当たりの運賃を従来比で40%も削減できた。
この成功を受けて、東日本でも同様のインフラを組めないかとP社は考えた。その相談が我々日本ロジファクトリー(NLF)に舞い込んだわけである。
実は以前にも我々は、P社から今回と似たような
コストダウンの相談を受けたことがあった。
しかし、当時は条件を満たせる物流会社が見つからなかった。
今回は前回の依頼時よりも条件が揃っていた。
成長を続けているP社を荷主とすることは、
物流会社にとって魅力的だ。
しかも物量が増えたことで、ローコスト化の余地も生まれているはずだった。
改めてP社の担当役員と担当部長にヒアリングを行った。
想定していた通り、コスト削減を狙える要素はあった。
具体的には以下の通りである。

①店舗一回当りの回収が、カーゴテナーで平均五個以上とロットがまとまるため、数店舗の回収で車両が満載になること。(カーゴテナー五個以上のストックヤードを設けることを店舗開発、FC加入時の条件として位置付けた)
②店舗の引き取り時間に融通がきくため、輸送ルートが組み易いこと。
③店舗から回収した商品を加工センターに持ち込む納品時間にもアローアンスがあり、一週間後でもOKであるため、常に車両を満載にした状態で持ち込みができること。

その反面、対応が困難であり、調整が必要な部分もあった。
カーゴテナー以外に梱包単位の出荷を店舗側に認めていたことはその1つだ。カーゴテナーだけであれば、パワーゲート車が使える。
しかし、そこに梱包単位の荷物が混じると
一梱包当たり約18キログラムある荷物を
ドライバーが手積み手降ろししなければならなくなる。
また売り上げの増加に伴い、土日祝日の対応も必要になっていた。
それまでP社は東日本ではエリアごとに物流会社8社と契約を結んでいた。
日々の作業指示に加え、請求書のチェックや支払いなど、
管理には手間がかかっていた。
これを現状の半分に当たる4社まで絞りたい、
というのが担当役員と部長の考えだった。
コストダウンの目標は現状の2割減。
物流会社の選別は、
①コスト、②輸送力および対応力、③改善提案力
という優先順位で評価したいとの説明を受けた。
 しかし、後になって、P社のトップは
東日本の協力物流会社を1社に集約する考えを持っていることが判明した。
社内の意志統一がなされていなかったのである。
結局、担当役員と部長、我々NLFのチームと並行して、
別途社長自身でも1社に集約できるパートナー候補を探す
という変則的なコンペの進め方をとることになった。

 

2009.04■図●アウトソーシング物流事業者評価表

自信のある提案が予想外の逸注
 我々のチームはまず当社NLFと協力関係にある物流会社数社に声を掛けて、
業務の対応が可能かどうか、仕事を受ける気はあるかを確認し、
手を挙げてもらうことにした。
参画希望の物流会社には、一度P社の担当役員と部長に会ってもらう手筈をとった。
基本的な条件はNLFから物流会社に書面で伝えているものの、
業務の細部や要望しているレベルは、
やはり荷主と直接会わないと伝わりにくいからだ。
 1社で東日本の全てのエリアのベースカーゴを持つ物流会社は
恐らく見つからないだろうと我々は考えていた。
無理に1社に集約すれば、却って高くついてしまう。
それではローコスト化を至上命題するP社の方針には合わないという判断だ。
そこで小回りの利く地場物流会社4社による連合チームで
インフラを構築する方針を立てた。
4社に〝国取りゲーム〟のように対応可能なエリアを埋めてもらうのである。
複数の会社がバッティングするエリアでは、
料金面に加え、自社インフラか傭車か、対応に無理がないか等、
現場サイドで輸送ルートの実態を確認して調整を行った。
4社のうちA社は夜間のコンビニ配送のインフラを、
昼間の時間帯にP社向けに利用する考えであった。
B社は食品スーパーの店舗納品、
C社は自社便による積み合せ輸送がベースカーゴだった。
一方、一店舗当たりの物量が少ない郊外のエリアを担当するE社は、
回収した商品を自社の事業所内に一時保管し、
ロットがまとまり次第、満載にして自社便で直送する
という対応をとることにした。
こうして4社連合チームによるインフラの概要が固まった。
このうちE社が担当する郊外のエリアだけは、
コストダウンの目標とする2割減には届かなかったが、
ベースカーゴとの組み立てがうまくできた都市部では
目標を超えるコスト削減が実現できる計算だった。
一方、P社の社長が自ら乗り出してのパートナー選びは
遅々として進んでいなかった。
それでも我々の4社連合チームの見積りが出揃ったのを見て
ようやく尻に火が付いたようで、大手物流会社数社に声を掛けはじめた。
その数週間後に社長側のパートナー候補が2社に絞られた。
我々チームの担当役員と部長も参加し、2社との商談が行われた。
ところが、その時点で見積りに必要な情報が十分に先方に伝わっていなかったことが判明、
見積もりを再提出させる必要が生じた。
結局、見積書の再提出は複数回に及び、
パートナー決定の時期は当初の予定から1カ月以上遅れることになってしまった。
 これによって我々は、4社連合の現場の状況が変わり、
提出した見積金額が無効になってしまうことを懸念した。
実際、4社はしびれを切らしかけていた。
このような経緯の末、物流会社が決定された。
結果は社長側が連れてきたパートナー候補のうち
1社の大手物流子会社に決まったのであった。
選択の理由は、窓口が一本化されることで、
管理や支払い手続きなどが簡素化できるというものであった。
この結果に我々チームと4社連合は落胆の色を隠せなかった。
コストは四社連合の方が安かった。対応スピードも申し分ない。
実運送の小回りも利く。
それでも受注を逃してしまった。
選定基準が荷主の社内で統一されることのないまま、
社長の一存で全てが決まってしまったわけである。
「商売とは所詮そういうものだ」
と思われる読者の方も多いかも知れない。
しかし、4社連合にP社を紹介した我々NLFは、それでは済まされない。
場合によっては信用問題にまで及んでしまう。
コンペの決定権を持つキーマンを見極めることの重要性を
改めて痛感させられた案件であった。