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第80回 事例で学ぶ現場改善:『失敗事例から荷主は学び始めた』

 

特集 3PL市場2009
日本市場報告 

3PLの普及から時を経るに従って、日本でも導入の失敗や契約の打ち切りといった事例の蓄積が進んできた。3PLの力量不足と並んで、荷主企業の管理放棄が失敗の主な原因となっている。プロに任せれば上手くいくと、丸投げすれば痛い目にあう。
 

釣った魚に餌はやらない
我々日本ロジファクトリーは、3PLと呼べるだけの機能を備えた物流会社はいまだ日本には存在しないという認識に立っている。
センター運営や販売物流などに強みを持つ専門企業は散見できるが、提案型で一括受託の条件を満たしている企業となると、ここがそうだと推奨できる会社が残念ながら見当たらないのである。
荷主企業において物流管理は地味で苦労が多い割には正当な評価を受けることの少ない業務である。
3PLに丸投げして、その負担から解放されたいという荷主の気持ちは理解できる。しかし、その結果として何が起こるのか。
3PLという言葉が日本で使われるようになってから十数年を経て、徐々に明らかになってきている。年商1500億円の某化学品メーカー。
販売物流のみならず、生産物流および海外からの調達物流の一切を、有力3PLのP社1社に全て委託した。完全導入までの移行期間には一年半をかけた。
ところが完全導入後3カ月が経ち、同メーカーのS専務は「P社を採用したのは失敗だった」と早くも敗北宣言を出している。
理由を聞くと、現場の混乱が収まらないばかりか、P社とその下請けの庫内作業会社との間で委託料金の折り合いがつかず、当初予定していた協力作業会社が撤退することになったのだという。
しかしP社自身にはパートを雇用し現場を回すノウハウがないようで、仕方なく代わりの庫内作業会社を見つけてきたが、それによってコストは15%もアップしてしまった。
それに追い打ちをかけてP社には国際物流のノウハウが不足していることも分かってきた。フォワーディングの事務処理などの対応が遅く、通関日数が従来より一日余分にかかっている。
それが生産管理に影響し、海外から調達している原料などの在庫が増えてしまったという。このケースでP社は、荷主の企業規模に目がくらみ、自社の得意分野とそうでない分野を事前に開示せずに、無理な受託を行ったフシがある。
一方、荷主側の責任も重い。P社の実力を見抜けず、必要な委託業務の切り分けを怠ったツケがその後の混乱を招いたといえる。
年商600億円の某食品メーカーもまた、3PLの導入失敗に悩まされている。
一昨年、有力3PLとして知られるY社に西日本エリアの物流を委託した。ところが提案書に書かれていたプランと実際の運用体制が大きく違ったものになってしまった。その結果、当初予定されていたコストダウンが実現できないでいる。
原因を調べてみると、Y社では現場運営を下請けや孫請けに再委託することが常態化しており、多重コスト構造となっていた。
結局のところ、Y社は倉庫建物の提供と荷主に対する窓口業務を行なっているだけで、現場運営は丸投げだった。
さらには食品メーカーとY社の料金体系がケース当たり単位であるのに対し、Y社と下請けは時間単位、車建て単位で契約していた。
Y社にとって逆ざやとなる委託業務が多く発生していた。これでは長続きするはずがない。上の2件よりはマシなケースだが、約300店舗を展開する飲食チェーンも、やはり3PLには失望している。コスト削減と高度な物流ノウハウや情報提供を期待して2年前に3PLを導入した。発注時には7%のコストを削減することができた。
しかし、その後の提案等は一切ない。コストも横ばいのままだ。荷主として現場レベルの改善だけでなく、物流の枠組みを大きく変更する必要があると感じているが、それを投げかける相手が3PL側にいない。
受注時の営業担当は既に異動している。現場の運営担当者に話を振っても、まともな返事が返ってこない。
この3PLも契約を結ぶまでは一所懸命に荷主の情報を整理し、外部の情報をかき集め、綿密なコストシミュレーションを行って立派な提案書を作成していた。
ところが受注が決まったとたんに、手のひらを返したように対応が変わった。釣った魚に餌はやらないというタイプだ。
こうした3PLは、残念ながら珍しくはない。3PLとの契約を打ち切り、自社管理に戻す荷主も出始めている。
年商300億円の日雑卸は中堅3PLのD社と3年にわたって取引した末に、契約更新を断念した。
計画通りにコストが下がらなかったことに加え、現場が見えなくなり、ブラックボックス化してしまったことが理由だ。
この日雑卸では現場主義を唱えるトップが新たに就任し、各部門の責任者に、知らない現場があってはならないという指示が出された。
これに対応して物流管理部門では、D社にセンター運営と輸配送を一括して任せていたのを改め、倉庫、センター運営、配送、幹線輸送を切り離して、それぞれ協力会社と料金を交渉し契約を行なった。
日々の運営管理には大きな手間がかかるようになった。
そこで新たに物流会社出身者一名を中途で採用した。しかし、その結果、コストは下がり始め、現場の実態が見えるようになった。

2009.09■図●NLFが考える3PLの機能

 

満足度の高い3PLの特徴
3PLを導入したからといって、荷主が管理の手綱を緩めることは許されない。丸投げは物流管理からの逃避だ。
その反動はコストアップに留まらず、顧客、生産、営業からの信用低下という大きな代償を払うことになる。3PLを成功させるには、利用者側にもスキルが求められるのだ。
年商1000億円の中堅電機メーカーでは、7年間で3回の物流パートナー変更を経験した末に、ようやく満足のいく3PLと巡り合えた。
メーカーにとって本業ではない物流はプロに任せたほうがいいという判断からアウトソーシングを徹底したが、現在のパートナーと出会うまでは思惑通りにことは運ばなかった。
しかし、そこで苦労した経験から3PLの選び方、付き合い方を学んだ。今では従来比で約20%のコスト削減を実現している。
同社の本社オフィスには現在、3PLのスタッフが2名常駐し、現場と荷主の調整、管理機能を果たしている。そのおかげで荷主側の管理の手間も大幅に軽減されている。
筆者の見る限り、運用開始後にも一定の評価を得ている3PL、特にコスト面で高い評価を得ている3PLには、以下のような共通点がある。
●センターは自社運営。部分的な委託や派遣対応は発生しても再委託(孫請け)はしない
●傭車比率は50%前後に抑えている。センター運営と同様に再委託しない
●土地、倉庫施設は自社所有が基本
●WMSなどの情報システムは自社システム、荷主システム両方に対応できる
●特定荷主の専用センターではなく汎用型センターとなっている
●主業は倉庫ではなく流通加工もしくは運送事業
当初は有望とされていたノンアセット型の3PLはいまやすっかり影を潜めている。
アセット型・ノンアセット型という区別は意味がなくなり、図に示した通り、自社所有の資産をベースとしながら、必要に応じて借庫を利用するというフリーアセット型へのシフトが進んでいる。
こうした動向に荷主企業は常にキャッチアップしておく必要がある。