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第106回 事例で学ぶ現場改善:『中堅外食チェーンG社のコスト削減PJ』

オーナー経営者は、物流にムダがあると直感していた。しかし社内には物流管理部門はもちろん、物流専任担当者もいない。プロジェクトチームを組織して実態の把握に乗り出したところ、予想以上に物流コストがかかっていることが判明した。作業品質にも大いに問題があった。

車両は清潔、ところが庫内は‥‥
福岡に本社を置くG社は年商約80億円の中堅外食チェーンである。
関東と信越を除く全国各地の繁華街やデパ地下などに、専門型外食店約80店と総菜店約25店を展開している。物流センターは福岡、大阪、名古屋、北海道の4カ所に設置している。いずれも運営は協力物流会社に委託しているが、うち福岡と北海道はG社が土地・建物を所有する自前の施設で、食材加工センターと隣接し、セントラルキッチン機能を備えている。
我々日本ロジファクトリー(NLF)に問い合わせしてきたのは、同社の商品部のE部長であった。
オーナー経営者の鶴の一声で、物流コスト削減プロジェクトに着手することが決まったものの、G社には物流管理部門が存在しなかった。そのためE部長が商品部と兼務でプロジェクトリーダーを命じられたのだという。
「トップからは早急に物流コストを削減するように言われているが、何から手を付ければ良いのか分からない状態だ」とE部長。プロジェクトはまだスタートしたばかりで、E部長の手元には名古屋センターの物流フローと支払い物流費の総額程度の資料しか揃っていなかった。その資料を見ると、売上高に占める支払い物流費の比率は外食チェーン業界の平均値に近く、とくに割高というわけではなかった。
しかし、いかんせん判断材料が少な過ぎる。まずは実態を把握するため、E部長を始めとするプロジェクトメンバーたちと共に物流センターを視察することになった。
名古屋センターと大阪センターが視察の対象であった。この2つのセンターはG社の店舗の約7割をカバーする基幹拠点で、双方とも同じ協力物流会社A社が庫内運営から店舗配送まで請け負っている。最初に名古屋センターを訪問した。
外食チェーンの物流センターだけあって、さすがにバースに停まっていた専用車両は洗車が徹底され、清潔感を維持していた。ところが庫内に入って印象が180度変わった。ひどく汚ない。センター入口には破損したパレットが散在し、ドックシェルターの着車部分のラバー材は剥がれたまま。不要となった廃棄設備などもあちらこちらに転がっている。食品関連以外の荷主であっても、このセンターを見て業務を任せたいとは思わないだろう。ましてや外食チェーンともなれば、コストの問題以前に食品衛生上の問題が心配になるほどであった。
次に大阪センターを視察したが、こちらも名古屋と五十歩百歩であった。この視察から筆者は、G社が安価な料金を求める余り、〝安かろう、悪かろう〟の物流サービスを受ける結果になっているのであろうという印象を受けた。
その後、プロジェクト開始から1ヵ月が経ち、ようやく支払物流費、物流会社との契約料金体系等の必要な資料が整った。その内容を見て、筆者は目を疑った。明らかに高いのである。保管料はほぼ相場であったが、入庫料、出庫料は地域相場の5割増、管理料が3割増という水準だった。おまけに庫内オペレーションはアナログ運営であるにもかかわらず、「システム費用」まで請求されている。
その他にも内容が判然としない費用項目が3つ、4つ挙がっていた。E部長にその内容を尋ねても、何の費用かわからないという。運賃契約にも問題が多かった。個建制の体裁をとってはいたが、実態は専属チャーター料金とほぼ同額だった。
配送用に使用している3トン・ワイド車もしくは4トン車の1日当たりのチャーター料金を取扱個数で割っていただけだった。

業界平均の1.8倍のコスト比率
こうしてデータや資料が集まってくるのに従って、最初にE部長から聞いていた状況とは全く異なるG社の物流の実態が徐々に明らかになってきた。
当初の資料では外食業界の平均的水準だった支払い物流比比率は、改めて全社の実績データを集計してみた結果、業界平均の約1.8倍にも達していることが分かった。
現場サイドにコスト高という認識はなかったが、〝物流にムダあり〟と見たオーナー経営者の直感は正しかったことになる。しかも、G社は仕入先ベンダーからセンターフィーを徴収していなかった。G社が自社センターを持つことで、ベンダーは店舗納品をせず、一括納品で済んでいる。そのコストメリットを仕入れに活かすという発想をG社は持ち合わせていなかった。
G社の物流実態を把握するのに思いのほか手間取り、プロジェクトの着手から3カ月を経て、ようやく改善活動の方向性をまとめることができた。その概要は次の通りである。

《第1ステップ》
①大阪と名古屋の両センターを運営する協力物流会社A社の料金体系を見直して、料率制(センターの通過金額に一定の比率をかけて料金を計算する制度)に移行する
②A社および福岡センターを運営するB社、北海道センターのC社の協力会社3社について、物流パートナーとしての能力・実績を再検証する
③食材幹線輸送の重量制運賃への移行と、幹線輸送事業者の見直しも含めた帰り便の活用

《第2ステップ》
①G社における物流管理専任者の設置
②物流センター機能のあるべき姿と現状とのギャップ解消(在庫管理方法など)
③大阪センター、名古屋センター集約による滋賀センター設置妥当性の検証
④物流管理機能およびデータ・帳票類の整備

以上をプロジェクトの中間報告として、G社の役員会に提出した。
その結果、まずは確実なコスト削減効果を期待できる第1ステップの3項目について、直ぐに着手するよう経営陣から指示が出た。早速、プロジェクトメンバーで役割を分担し、3つのテーマにそれぞれ着手した。
このうち、①の協力物流会社A社の料金体系見直しでは、A社が別の外食チェーンの仕事で料率制を導入したこともあって、見積もりの提示までは順調に進んだ。しかし、どうしてもコストが下がらない。
デパ地下などへの納品は、待機時間が長いために効率が悪く、共同配送も組み立てられないという。そこでプランを練り直した。
時間指定の見直しと店舗納品時のノー検品という作業負担軽減策をG社側から提示し、交渉を重ねることで何とか合意にこぎ着けた。その結果、20.6%のコストダウンが実現した。

着地側で幹線輸送の車両を手配
②のA社を含む既存の協力物流会社3社の再評価では、先の現場視察のくだりでも述べたように、「5S(整理、整頓、清掃、清潔、躾)」以前の衛生面での懸念が大きかった。
そこで次年度の契約更新時に、各拠点でそれぞれコンペを開催することでプロジェクトチーム内では意見がまとまった。ところが、これにオーナーが反対した。「既存の協力会社各社はいずれも10年以上の付き合いだ。ずっと当社の物流を支えてもらってきたパートナーを安易に切り換えるのは好ましくない」とのことであった。
そこで協力会社3社とは、それぞれ月1回の改善定例会を実施し、現場の課題・問題点を抽出し、優先順位を付けてG社と共同で改善を進めていくというかたちに、方針転換を余儀なくされたのであった。

③の食材幹線輸送の重量制運賃への移行と、運送会社の見直しも含めた帰り便の活用は、現状ではG社には物流管理部門がなく、物流専任者も不在であるため、2つの食材加工工場のセンター長が中心となって進めることになった。
それまでG社では、輸送の発地となる各拠点でそれぞれ車両を手配していた。これを引っ繰り返して、着地が車両を手配する体制に切り替えた。着地となる拠点周辺に、冷蔵品・冷凍品を納品している運送会社にG社から声をかけ、その帰り便を利用するようにしたのだ。
着地から下る車両が見つからなかったり、増車が必要になる繁忙期には、求車求貨事業を手掛ける大手物流会社に輸送を依頼することで急場を凌いだ。
これによって僅かながらも幹線輸送費を抑制することができた。

こうして即効性が求められた第1ステップを何とかクリアすることができた。しかし、このプロジェクトの真価が問われるのは、むしろ第2ステップであろう。
状況によっては我々NLFそしてプロジェクトチームが、オーナーを説得しなければならない場面が出てくるかも知れないと覚悟している。