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第128回 事例で学ぶ現場改善:『通販向け企画品メーカーQ社の物流最適化』

中国や東南アジアで独自企画の商品を生産し、日本の通販会社に卸している。業績は順調で物量も増えてきた。しかし、物流は3PLへの丸投げに近い状態だった。
スタッフは全員が若い女性で社内に物流管理のノウハウはない。どこから手を付けたら良いものか。物流コンサルタントの支援を受けることにした。

社長以外はスタッフ全員女性
先月号に続き、通販関連の改革・改善事例をお伝えする。Q社はネットやカタログを媒体とする通販企業にオリジナル商品の提案を行う通販向け企画品メーカーである。
年商約一五億円、従業員数は二〇人強という規模ながら、商品企画力に強みを持ち、多くの通販企業と取引を行っている。
取扱商品はノベルティ、インテリア関連、バラエティグッズ、日用雑貨全般と多岐にわたる。アイテム数は約二〇〇〇。このうち定番品は約二〇%の四〇〇アイテムにすぎない。残りのほとんどは一回限りのスポット商品である。
中国に主力工場を置いているほか、東南アジアの三カ所に拠点を置き、自社工場もしくは提携工場から出荷して、日本国内の通販各社の物流センターに納品している。その物流オペレーションは3PLへの一括委託、というよりも〝丸投げ〟に近い状態であった。
Q社の物流責任者から問い合わせを受け、ビジネス街の中心部に位置する本社オフィスで初回の打ち合わせを行うこととなった。遊び心に溢れたオフィスであった。いくつもの扉が設けられた受付は迷路のようで、そこから案内された打ち合わせの席は一転してフロア全体に仕切りがなく、ヨーロッパのオープンカフェのようだった。アイデア、発想を重視するトップの想いをうかがうことができた。
二〇歳代の女性社員二人が我々を出迎えてくれた。一人は物流責任者、もう一人はその上司だという。少し訝しく感じて質問したところ、Q社のスタッフは社長以外、全員女性であった。名刺交換でまた驚いた。二人ともミドルネームを持っている。てっきりハーフだと筆者は思い込んでいたが、打ち合わせ終了後に、スタッフ全員がニックネームをミドルネームとして名刺に入れていることを知った。
そんなユニーク尽くめのQ社であったが、コンサルティングのテーマはど真ん中であった。通販関連企業としの発展・成長に向けて、物流面では何をクリアしておく必要があるのか。物流効率化はどう進めていけば良いのか、というものである。Q社が自らネット通販を始めることも計画されており、その準備も必要であった。
これを受けて我々は数日間の簡易調査を実施。現場見学、ヒアリング、データ分析を行い、その結果を元に、以下の九項目を最適化に向けた活動テーマとして提示した。

①国際物流と国内物流の業務委託先分離
②ネット通販の開始に伴うBtoC物流の構築
③在庫差異の解消
④在庫過多の解消
⑤X業態向け出荷作業のスピードアップ
⑥発注点の設定と生産管理のシステム化
⑦WMS導入
⑧商品マスターのリアルタイム更新
⑨3PLとの共同改善活動

このうち「①国際物流と国内物流の業務委託先分離」は、協力会社の3PLが海外における物流オペレーションを得意としていないことが理由であった。その3PLは現地のオペレーションをフォワーダー会社に再委託していた。Q社が進出している中国や東南アジアに現地法人を置いているわけではなく、提携先もしくは強固な関係にあるパートナー会社があるわけでもなかった。それもあってだろう。通関を切るまでの日数が通常よりも一〜二日余計に掛かっていた。
そこで海外における通関までの前工程は、現地のオペレーションに強い物流会社に委託先を変更することにした。その選定にはコンペ形式を採った。その際、次の二点に注意した。
一つは既存の協力3PLとの取引実績および相性である。委託先を分けてもスムーズに連携できることを条件にした。もう一つは、「新・新興国」とも呼ばれ、中国に代わる新たな生産基地として注目されているバングラデシュとミャンマーにおける対応力である。近い将来、Q社の新たな調達先となる可能性が高かった。
このコンペで日系の大手フォワーダーを新たなパートナーに選び、海外業務を切り出した。その結果、通関日数は通常レベルに短縮され、トータル物流コストを約十二・五%削減することができた。委託先が一社から二社になったことで物流責任者の負担は増えた。しかし、もともと担当者の仕事量には余裕があったため、勤務時間内で業務を収めることができた。つまり事務コストは上がらなかったわけである。

中国工場との連携を強化
「②ネット通販の開始に伴うBtoC物流の構築」では、配送委託先としてヤマト運輸と佐川急便が候補に挙がるところだが、Q社の場合、トップも含め従来から佐川急便との関係が深いとのことで、彼らを中心にフローを組み立てることになった。ポイントとしては、従来の取引量と実績を宅配料金の交渉に活かすことができるかどうかであった。

「③在庫差異の解消」には、第一に棚卸しの頻度を上げる必要があった。それまでの年四回は少な過ぎた。これを月一回に増やした。
委託先の現場オペレーションの改善も必要であった。我々がコンサルティングに入った時点で既に、従来のアナログ作業からバーコード管理への変更が検討されていた。そこで我々はパッケージソフトを選定し、カスタマイズ内容を検討する段階からシステムベンダーを交えた打合せに参画することとなった。
ハンディターミナルを使った入荷検品、ピッキング、出荷検品を実施するには、Q社が主力工場とする中国工場の生産体制と連動する必要があった。工場出荷時にバーコードシールを貼り付けることを要請した。
ところが、運用が始まってもシールの貼付がなかなか徹底されない。そこで段ボールに直接、コードを印字する方法も検討したが、海外工場で印刷したコードは輸送途中で擦れて識別できなくなることが多いという壁にぶつかった。最終的には日本でセンターに入荷した時点でシールを発行して、対応することになった。

「④在庫過多の解消」は、需要予測の甘さが主な原因であったが、定番品以外の商品については、スポット品という商品特性に起因する売れ残りや、返品ルールの問題など、様々な要素が重なり合っていた。物流だけで解決できる問題ではないため、次のフェーズに先送りすることになった。

「⑤X業態向け出荷作業のスピードアップ」は、受注締め切り時間に問題があった。他の業態および得意先に対しては、イレギュラー対応を含めても午後四時に当日出荷分を締め切っていた。しかし、X業態の得意先はEOSでの受信が午後四時半に集中するため、例外的に当日出荷で扱っていたが、トラックの最終便に間に合わないことも多かった。
そこでX業態の得意先に締め切り時間の是正を要請するとともに、センターの作業方法を見直した。センター内におけるゾーニング、棚のレイアウト、保管ロケーションを変更して動線を短縮。作業リードタイムを約一五分短縮した。

「⑥発注点の設定と生産管理のシステム化」はQ社にとって最大の改革テーマと言えた。定番品およびAランク品で欠品が発生する原因の大半は、中国工場の生産の遅れによるものであった。また担当者の勘と経験に依存した納期管理は、しばしば読み違いを起こしていた。
改善の柱は大きく二つ。一つは工場に対する発注精度の向上である。通販会社ごとに予実乖離係数を算出し、その分析に基づいて発注点を決めた。その結果、欠品の抑制という点では大幅に改善が進んだ。しかし、発注精度の問題は先述の「④在庫過多」の要因ともなっており、その点では課題を残した。
売れ残った在庫は、損失覚悟で捌くか、ディスカウントルートに流すのが一般的であるが、Q社ではトップがそれを良しとはしていなかった。そこで滞留期間が二カ月を超えた在庫については、それぞれ新しい売り方を検討し、それでも残った分だけは、ディスカウントルートの活用もしくは再加工の対象とすることにした。
もう一つの改善点は、中国工場側での生産管理の徹底とシステム化および生産の進捗状況を日本でも把握できるようにすることであった。これについては現地工場長が中心となってシステム化の検討に入ったが導入は早くても六カ月後となる見込みである。

「⑦WMS導入」は、今後の物量拡大に対応したバックヤード機能を担保するには必要な施策であった。Q社が自社でWMSを開発・所有するのは荷が重いというトップの判断に基づき、協力3PLにその役割を任せることにした。協力3PLのシステムを利用するか、あるいはパッケージを導入するかを判断するため、現在、3PLのシステム担当者がQ社スタッフにヒアリング調査を行っている最中である。

3PLとの関係を強化
「⑧商品マスターのリアルタイム更新」は、ロケーション管理の精度向上が狙いである。従来は商品の改廃、終売情報でさえ、3PLの現場に十分伝わっていなかった。そのため出荷頻度のABC分析に基づくレイアウトやロケーション作りが出来ない状況であった。
そこで商品マスターの更新情報をQ社内と同様に3PLにもリアルタイムに発信することにした。これによって現場では定期的にロケーションを変更することが可能になった。生産性の向上とピッキングミスの減少にも寄与している。

「⑨3PLとの共同改善活動」では、先述の在庫差異のさらなる抑制と、繁忙期の対応に主眼を置いた。特売時やフェイスブック、ツイッターなどで口コミが拡散した時などに、一気に注文件数が跳ね上がると、現場担当者レベルで「こんなに物量が多いと今日中には出荷できない」と勝手に判断して、当日出荷ができなくなることがあった。通販業界では致命的とも言える事態である。
そこでQ社物流責任者と我々に3PLのセンター責任者を交えて収拾方法を協議した。センター責任者は当日に突然、物量が跳ね上がっても人手を確保できないとのことであった。これを受けて以下の三つの対策を打つことにした。
⑴定期会議の開催
それまでQ社の物流責任者とセンター責任者は、必要に応じて電話でやり取りするだけで、課題解決や要望事項の伝達などの打ち合わせを一切行っていなかった。これを改め月一回のペースで輸送および物流運営会議を開催し、問題点の検討や、特売や新商品投入、終売情報の共有化を図る。
⑵SLAの締結
協力物流会社が荷主に対してサービス品質を保証する「サービスレベルアグリーメント(SLA)」の締結を視野に置き、作業品質目標(KPI)を設定する。
⑶派遣会社の利用
物量が急増した日には庫内作業員の派遣会社を利用する。

この三つの施策の効果はすぐに現れた。これまでの問題の多くは、荷主と3PL間のコミュニケーション不足によるものであることが、取り組みを進めていくうち分かってきた。
Q社の物流責任者が頻繁に現場へ足を運ぶようになり、〝丸投げ〟が解消されてきたことで、出荷不能という事態に陥ることはなくなった。
こうして調査開始から約三カ月が経過した。現状は第一ステージを終えたところだ。それでもプロジェクトに関与したQ社の女性スタッフたちは、通販業界において物流がどれだけ重要なのかを理解し、物流に対する問題意識を強く持つようになった。高度化に向けて一歩前進したと言えるだろう。