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第133回 事例で学ぶ現場改善:『公共資材メーカーV社のコスト削減』

道路整備に使うガードレールや柱などの〝超・長尺物〟を扱う公共資材メーカーの物流を見直すことになった。業界特有の商慣習や取扱製品の特殊性から、本人たちは自分たちの物流を特殊だと考えている。しかし、筆者から見れば必ずしもそうではなかった。

物流統合は効果を見込めず
V社は道路建設や整備に使用するガードレールや柱、標識物などを扱う公共資材メーカーだ。年商は約70億円。東海地区に本社兼第一工場、そこから車で15分ほどの場所に第二工場を構えている。
同社で管理部長を務めるE氏からわれわれ日本ロジファクトリー(NLF)に問い合わせが入った。それによると、2つの工場は近くにあっても運営は別々で、物流業務もそれぞれ発生しているという。これを統合すれば効率化が可能なのではないかというアイデアを持っていた。
また、V社は2つの工場倉庫のほか、仙台と福岡にそれぞれ在庫拠点を賃借していた。
特定の納品先の即納要請に対応した倉庫だが、その利用価値には疑問符が付くとのことであった。さらにはトラックの配送効率や積載効率にも課題を感じているという。
いずれにせよ現場を見なければ分からない。数日後、われわれは現地に出向いた。V社は主要駅からかなり離れた片田舎に本社工場を構えていた。昭和の時代の工場(こうば)を思わせるたたずまいで、会社の規模を考えれば質素な建物であった。
われわれを出迎えてくれた2人のうち1人はE管理部長であった。40代後半というところだろう。もう1人はE部長より年配に見えた。しかし、E部長の部下で役職は課長であった。
まずは問い合わせの経緯からヒアリングに入った。話し合いを進めていくうち、当初の問い合わせ内容や電話のやり取りだけでは見えなかったV社のバックグラウンドや改善の必要性などがはっきりしてきた。
V社の売上高に占める支払物流費の割合は6・5%以上であった。しかも、今後は物流費が割高な柱類などの長尺物の取り扱いがますます増えていく見込みであった。コスト低減策を早急に打ち出す必要があった。
現場視察もE部長が自ら案内してくれた。第一工場は工場棟と大型のテントドームを使用した保管スペースから構成されている。工場棟の内部は比較的、環境整備が整っていた。しかし、工場に隣接したテントドームの保管・出荷エリアには作り置き品が無作為に散在しているように見えた。
続いてE部長の自家用車に便乗させてもらい、第二工場へ移動した。道すがら話を聞くとE部長は過去に第一工場長、第二工場長を経験しているという。最も現場を分かっている人物であった。
10分余りで第二工場に到着した。第一工場とは異なり、広々とした敷地が用意されている。それもそのはず、第二工場では長尺物となる柱類を製造・出荷しているため、ハンドリング、振り回し、積み込みに大きなスペースが必要なのであった。工場内には天井クレーンが稼働していた。そこで積み込み待ちをしている協力物流会社の多くは地元の中小運送会社であった。
このヒアリングと現場見学からわれわれNLFは次の7つを重要課題としてV社に提示した。

①横持ち輸送の削減
②仙台、福岡センター機能の再検証
③3PLの活用
④物流管理部門の設立
⑤第一工場における保管効率の向上
⑥第二工場における運賃体系および協力運送会社の見直し
⑦部品出荷スペースにおける動線の見直しと保管効率の向上

E部長が当初、考えていた第一工場、第二工場の物流統合は難しいと判断した。2つの工場は取扱製品の荷姿が全く異なるため同一車両での積合せができない。集約しても無駄な横持ちが発生するであろう。また、納品先である得意先から一括納品を求める声は少なく、作業(建設)工程からはむしろ今までの分納を望む意見が多かった。
 そこで上記7つの重要課題について検証を進めていった。そのうち「①横持ち輸送の削減」は当初、筆者としては期待薄と考えていた。金属製品を扱う中堅中小メーカーはメッキ加工を協力会社に委託していることが多く、外注先との往復輸送が避けられない場合がほとんどだからだ。
V社の場合、その車両手配を自社で行っていた。そこで、車両手配をメッキ工場側に任せた場合にどうなるか。試しに打診したところ、自家用トラックを所有しているメッキ工場があり、既存の支払運賃と比較して3%強のコストダウンができることが分かった。思わぬ拾いものであった。

即納用拠点の実情を知る
「②仙台、福岡センター機能の再検証」では、営業中堅社員からのヒアリングに重点を置いた。
管理部長からは特定の納品先に対する即納用倉庫と聞いていたが、実態はかなり違っていた。両センターとも現地周辺の複数の納品先に対応していた。発注から2週間が目安とされる当業界の納品リードタイムを守るには必要な施設なのであろう。
ただし、その運用を見ておく必要がある。E部長に承諾を得て、仙台、福岡センターにそれぞれ飛んだ。両センターとも驚くほど大きなスペースを借りていた。3分の1に圧縮しても全く問題ないはずだ。しかも、そこに保管されている在庫は本社第一工場で見かけたAランク製品が中心で、少しほこりが掛かっていた。
センターを案内してくれた現地の営業スタッフにいろいろと尋ねたところ、思わぬ情報が耳に入った。「基本は本社工場から現場に直納するのですが、製造遅れが出た場合、このセンターから出荷させています」と言う。それに対して筆者が「納品先から『早く欲しい』と急かされることが多いのでは?」と問いただすと、「それもありますが大半は製造遅れによるものです」との返答であった。
結局、仙台、福岡の両センターは即納用倉庫というより、単なるバッファー倉庫であった。次のステップでは閉鎖する方向で改革スキームを組む必要がありそうである。
「③3PLの活用」では、取扱品目の特性および拠点集約ができないという制約がある以上は、WMSなどのシステム運用もままならないと判断して、3PLというよりも、2つの工場の物流業務を一括して委託できる物流企業を物色することになった。現在、既存の協力会社や地元の有力物流会社と話し合いを行っているところである。
委託先を集約することでコストメリットを出せるかどうかは、まだ分からない。今のところ2つの工場の管理体制は一元化されていない。しかも物流管理専任者が不在である。
そのままでは〝丸投げ〟に陥る恐れがある。委託先の候補となっている物流会社側の対応力も筆者から見て安心できるレベルではない。現状では拙速な移行は控えるべきだと考えている。
「④物流管理部門の設立」は今回のプロジェクトで筆者が最も重要と考えるテーマであった。それなくしては「③3PLの活用」も機能しない。これまでは各工場でそれぞれ協力物流会社を選定し、料金交渉も行ってきたが、車両の効率化や生産性向上、品質改善までは手が回らず、物流会社任せになっていた。事業規模や支払物流費額から見ても、専属の物流管理組織は必要であった。
このテーマは社内の理解を比較的スムーズに得ることができた。その結果、管理部門の新設が役員会で可決された。ただし、当面は完全に独立した組織ではなく、製造本部所属の物流課として産声を上げることとなった。
「⑤第一工場における保管効率の向上」には、段積みができるパレットラック「ネステナー」とケース出荷用の軽量ラックを利用した。先述の通り第一工場の保管スペースとなっているテントドーム内には、平積みの製品が散在していてスペース効率が悪かった。
ネステナーの二段積みと軽量ラックで保管効率を高め、ゾーニングとレイアウトを整備した。

小口対応可能な運送会社を探す
「⑥第二工場における運賃体系および協力運送会社の見直し」も必須のテーマだった。
運賃の取り決め内容は協力会社によってばらばらで、金額差も大きかった。場当たり的に取り決めたまま、長年放置してきたことが明らかであった。そこで通常の1日1台当たり運賃のほかに、長尺物に対応した「長さ別・本数(柱数)別」運賃の目安を設定し、運賃の上昇を抑制する方向で調整している。
そして先の一括委託先候補との話し合いと並行して、柱類1本単位の小口輸送に対応できる運送会社の発掘に取り組んだ。協力会社の一つとは既に小口取引を行っていたが、対応エリアが限られているため、新たな協力会社を探す必要があった。うまく見つかれば大幅なコストダウンを期待できる。
われわれNLFの名簿から候補企業のリストアップを行い、E管理部長と過去の取引実績の有無を確認しながら片っ端から電話連絡を入れた。その会社では対応できないという場合でも、仲間で対応できるところはないかと粘って聞いて回った。その結果、3社を新たに見つけることができた。今年1月中にトライアルを行ったが、大きな問題は出なかった。新年度には本契約にこぎ着ける見込である。
「⑦部品出荷スペースにおける動線の見直しと保管効率の向上」は、主製品を現場で設置する際に使用するボルトやワイヤー、電子回路などの付属品が対象だ。主製品とは別に、部品類だけをピッキング、セット組み、検品、包装、梱包するスペースが用意されていたが、10坪くらいのスペースに6〜7人が固まって作業を行っているような状況だった。作業ラインとして2基設置されたローラーコンベアは無用の長物と化していた。
出荷作業に時間がかかるため、主製品を積み終えた配送車が出発できず、部品類の出荷準備が済むのを待つという事態がしばしば発生していた。そこで保管ラックを導入して動線を見直し、作業生産性の向上を図った。プロジェクト開始早々に着手したため、今ではかなり部品センターらしい運用になってきた。作業の滞りや無駄も少なくなった。
一連の改善活動を通じてE部長より年かさの課長から「うちの物流は特殊でして‥‥」という台詞を何度か聞いた。確かにV社が取り扱っている長尺物などは荷姿の特殊性が強い。しかし筆者の経験では、その業界の商慣習や、その会社の特殊事情が物流に与える影響はせいぜい3割といったところで、残りはどんな会社でも大差はない。
本人たちは特殊だと考えているイレギュラーや製品特性も、実は他社の物流を知らないだけで、よくあることだったりする。そのため「うちの物流は特殊」とのクライアントの説明は慎重に聞くようにしている。今回のプロジェクトでもその必要性を再確認することになった。