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第134回 事例で学ぶ現場改善:『かさ高な荷物の輸送問題に挑む』

長尺品や大型製品など、かさの張る荷物の輸送が大きな課題となってきた。宅配会社や路線会社がサイズ通りの運賃収受を進めたことで個建ての実勢運賃が大幅に上昇、貸切輸送も荷扱いを嫌がって取り扱いを避けるケースが増えている。この問題に取り組む各社の現状を報告する。

通販A社─パートナー探しに全国行脚
通販会社A社は有力IT企業の子会社だ。親会社は高成長・高収益を維持しているが、浮き沈みの激しい業界だけに、新しい事業の柱が不可欠と、オーナー経営者が早くからウェブサイトを使ったサービスに力を入れてきた。
もっとも、そう簡単に事は運ばない。今のところ“打率”は2割。これまで10のサイトを立ち上げて、それぞれ事業会社を設立したが、そのうち2つのサイトが軌道に乗るか否かという状況である。
同グループが展開するウェブサービスのうち、通販会社A社は唯一、物流を伴う事業であった。特定分野の商品に取り扱いを絞り込んだカテゴリーキラー型の通販サイトである。かさ高の製品がほとんどで、運賃負担が大きい。宅配便レベルの料金を払っていたら、とても事業が成り立たない。
そのため担当役員たちは事業の立ち上げに当たり、損益に耐え得る運賃で対応できるインフラを必死になって探していた。われわれ日本ロジファクトリー(NFL)がそのサポートに入ることになった。
A社の物流には次のような制約条件があった。

①物流センターで最終製品に組み立てる
②組み立てに技術認定者が携わることで品質を保証する(他社では破損、事故などのクレームがよく発生している)
③荷姿がかさ高に加えて四方形サイズに収まらない異形製品である

相当に高いハードルだが、リードタイムには余裕を持たせていた。即納が当たり前になりつつあるBtoCではあってもリードタイムの短さは売りとせず、注文後7〜10日の納品としていたところは一つの救いであった。
しかし、コンペを実施したが、繁忙期に当たっていたこともあって、各社とも腰が引けてしまって十分な提案が出てこない。本命と考えていた引っ越し会社もその会社の足回りを担当する別会社との調整がつかず、コスト高の提案となっていた。
そこで一時は外部委託せず、自分たちで運ぶことも真剣に検討した。しかし、免許申請、人員体制、労務管理面などから、得策ではないと判断して、限られた選択肢の中から路線会社系列の引っ越し会社のインフラを選んでサービスをスタートした。
A社にとっては採算の合わない運賃であった。それでも、販売量を増やしていくことでコストダウンを進めていこうという考えだった。幸い物量は当初の想定以上に伸び、運賃の値下げ交渉をきめ細かく行うことで、少しずつコストは下がっている。
しかし、A社が目標とするコストに対して現状は約3倍と大きな開きがある。コスト構造の抜本的な改革が必要だ。それには、日本全国、少なくとも全国主要7ブロックで、家電や家具量販の物流を請け負っていてBtoCの納品の経験を持つ物流会社の発掘が必要である。
当初A社は、もっと簡単に物流会社が見つかると思っていようだ。しかし、今では完全に頭を切り換えてパートナー探しに奔走している。スタッフが各ブロックにそれぞれ現地入りしてパートナー候補企業との折衝を繰り返している。

化学品B社──物流サービスを有料化
化学品メーカーB社は軽くて薄い大型品を扱っている。ほぼ空気を運んでいるようなもので、売上高物流コスト比率は約16%にも上る。“地産地消”が有利なため、工場の分散化を積極的に進めてきた。それでも運賃の値上げによってコストの上昇に歯止めが利かない。そこで次のような施策を打った。

①各工場で行っていた路線運賃の交渉を本社一括交渉に移行
②製造・営業に属さない独立した物流部の発足
③代理店向け物流代行サービスの有料化
④4トンロングの活用
⑤容積を圧縮した製品の開発
⑥物流子会社の設立

このうち「①各工場で行っていた路線運賃の交渉を本社一括交渉に移行」と「②製造・営業に属さない独立した物流部の発足」はセットになった取り組みであり、かさ高品に限らず支払運賃の削減では既におなじみの対策である。
「③代理店向け物流代行サービスの有料化」は、取引条件の改善である。B社の製品はかさ高で場所を取るため、代理店、特約店では在庫せず、メーカー直送が商慣習となっていた。しかも、無償でサービスを行っていた。そこにメスを入れた。
各地の代理店が集まる協力会大会でB社から運賃の一部負担を訴えた。これによって代理店が競合他社になびいてしまうことも心配されたが、同分野でB社の製品は50%近いトップシェアを握っていたことが功を奏し、B社に続き他社にも運賃課金の流れが広がっていった。
「④4トンロング」とは、4トン車をベースに10トンクラスの長い荷台を取り付けた特殊車両で、業界では“オバケ車”とも呼ばれる。軽くて大きなB社の製品を運ぶのに適している。ただし、車両費が高くなるため、帰り荷を確保し高い稼働率を維持できないと逆にコストアップになることもある。そこで販売物流のルート配送に絞って4トンロングを投入した。
「⑤容積を圧縮した製品の開発」は、抜本的な対策であり、成功すればコストダウンの目玉となる。製品を圧縮して密閉し、使用前に開封する。その際、製品自らが周囲の空気を吸い込んで膨張し、通常の製品になる。現在、3工場で試験生産が行われている。
この方法なら製品の容積が現状の約3分の1になる。物流上、かさ高品ではなく一般品としての取り扱いが可能になる。同じアプローチの物流コスト削減は、日用雑貨の濃縮洗剤や布団、マット類などでも見られる。
「⑥物流子会社の設立」は第二ステージのテーマである。外販を前提とした物流子会社を設立し、物量を確保することでコストダウンを図る。これも大手通販会社や飲料品、食品メーカーなどに見られる施策である。

運送会社C社──専門会社に再委託
物流会社における対応も見てみよう。
C社は東海地区を中心に4トン以下の車両、とりわけ軽トラックにウエートを置く運送会社である。主要荷主はカタログ通販で、かさ高品のBtoC配送も一部で手掛けている。ただし、積極的な拡販はこれまで行ってこなかった。
過去に大型量販店から、かさ高品の配送を一括受託したところ、個配(個人の家の中にまで届ける配送)のノウハウに欠けていたことからクレームを発生させてしまい、収拾がつかなくなって撤退を強いられた苦い経験があった。
しかし、ここに来てある通販会社から、かさ高品のBtoC配送の依頼が入った。条件は悪くない。大手路線会社が、かさ高品から撤退したことも考慮して、チャンスと捉えてリベンジすることになった。ただし、過去の失敗を生かして、今回は全てを自社で対応するのではなく、一部を再委託することにした。委託先は家具チェーンの物流子会社である。エリアと品目、現地組み立て作業の有無で、自社配送と再委託を線引きした。
完成品だけを自社で配送し、現地組み立ては専門会社に任せたのである。今のところ運用は順調である。

運送会社D社─積み合わせを工夫
運送会社D社の取り組みにも目を見張るものがある。年商約10億円、関西に拠点を置く地場運送会社である。幹線輸送に強みがあり、キャリアに徹してきた。専門的スキルが必要な個配のような業務には全く手を出してこなかった。しかし、それも幹線輸送となれば嗅覚が働くようである。
最近になって、かさ高品を遠くまで運んでほしいという依頼が多くなってきた。しかし、C社の事例で述べた通り、幹線輸送に特殊車両を投入するのはリスクがある。帰り荷もかさ高品を確保できるとは限らないからである。
そこでD社は10トンの増トン車をメーンとする通常車両を使って、かさ高品の対応に打って出た。ポイントは混載する荷物の組み合わせであった。重量品をベースカーゴにして、かさ高品と積み合せたのである。現在は1日2運行×往復の4台稼働であるが、拡販に力を入れている。