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第142回 事例で学ぶ現場改善:『新春提言!物流会社が生き抜くための10の経営改革』

今日の物流業経営者の多くは高度経済成長期に先代の後ろ姿を見て育った。しかし、時代は変わった。長引く不況とデフレ、終わりのない荷主からのコストダウン要請に続き、燃料費の高騰と人手不足が物流会社を襲っている。混迷の時代を生き抜くには、大きく経営のかじを切らなくてはならない。その具体策として10項目に上る経営改革を提言する。

1 品質を可視化せよ!
品質を荷主と数字で会話できなければ単なる〝業者〟である。
荷主企業はミスや事故がゼロにならない限り、当然のこととしてクレームを出してくる。しかし、現実には1万分の1レベルのミスの発生は、検品回数を増やすか、各種の自動化設備の導入なしには実現が難しい。さらには高度なマテハン設備をどれだけ導入しても100分の1レベルの確率でミスは発生する。
対価に見合った品質というものがある。アナログのセンター運営であれば1万分の1、簡易なHHT(ハンド・ヘルド・ターミナル)などのシステム化であれば10万分の1、システム投資とトリプル検品などを行う現場で100万分の1(PPM)が目安である。
品質を可視化して適正なゴールを荷主と合意し、〝安かろう悪かろう〟の業務を払拭する。そして社内の努力を数字表現する方法を確立し、荷主との相互協力が得られる関係を構築する必要がある。これはセンター作業だけでなく輸配送も全く同様である。

2 システム化より「シクミ化」を図れ!
システム化を短絡的に進めない。「まずは〝シクミ〟づくり」が大前提である。
物流に限らず業務の改善という話になると、すぐに「システムだ!」と短絡的に動いてしまう会社が少なくない。大手企業に特にその傾向が強い。しかし高度な在庫管理システムを導入した会社の担当者に「なぜ、こんなに在庫が多いのか」と聞いてもまず答えられない。さらには大枚をはたいたシステムが動かないという話もよく聞く。一方、中小企業にはシステムに投資するだけの体力がなく、システムを使いこなせる人材もいない。
そもそもシステム化は全ての課題を解決してくれるわけではない。何でもかんでもシステム化と決めつける前に、まずは業務のシクミ、からくり、構造、機能を明確にすることである。その上で、人手で処理するには手間と時間がかかり過ぎる業務、あるいはミスをなくすためにシステム化を検討するのが順序である。

3 人手不足対策に十分な工夫を図れ!
少子高齢化が進み、労働力不足が慢性化するこれからの物流業界は、総務・人事の実力で経営力の7割が決まる。今までは裏方的な部署であったが、これからは中核部署としてその真価が問われることになる。優秀な人材を優先して投入しなければならない。採用〜教育〜配置〜異動、そしてケアにおいて濃密なプランを作り、その結果を検証し、改善を続けていくことが肝要である(本誌2014年7月号の本連載にその詳細を掲載)。

4 販促費を予算化せよ!
売り上げに対する販売促進費の割合は全産業平均が約3%であるのに対し、物流業は1%弱にとどまっている。この販促費を予算化し、戦略的に使っていくことが重要である。
販促費といわれても、物流会社の経営者にはあまりピンとこない勘定科目であろう。
イメージが湧いたとしても接待交際費の類いかもしれない。筆者が重視する販促費とは具体的にはウェブ広告費と営業担当者の移動交通費である。ホームページの充実、ウェブの活用はもちろんのこと、営業活動の自由度を高める必要がある。
一見すると無駄に思えるような度重なる出張も、商談の詰めの段階であったり、クレームに対する改善書の提出などの場合、営業担当者は荷主の本社に何度も足を運ぶことになる。
それが必要なのである。物流業はサービス業でありクイックレスポンスが基本である。そのためには営業効率や経費を引き替えにしなければならないこともある。営業と教育は効率ばかりを追えないものと心得たい。

5 走らないサービスを開発せよ!
筆者の知る限り、現在黒字の運送会社でも多くは輸配送サービス単独では利益を出していない。自社で所有する倉庫の賃貸料を無料と見積もって庫内作業で利益を出すか、あるいは不動産賃貸収入そのもので経営を支えているのが実情である。
それでは不動産を持たない物流会社はどうするか。もうかっている荷主、伸びている荷主を選ぶこと、レイバーコントロールによる生産性の向上は大前提である。その上で付加価値の高い業務を行うしかない。具体的には組み立てや加工など、業務によっては機械をリースで導入し、倉庫に簡易的な工場機能を持たせることである。もう一つは受注入力業務など荷主の後工程、物流会社の前工程業務への対応である。
単なる保管では価格競争に巻き込まれてしまうことは輸配送業務と同様に自明の理である。ましてや賃借した倉庫では事業として成り立つはずがない。今や輸配送、保管だけでなく、流通加工ができて初めて物流会社である。荷主から預かった製・商品にタッチする時間を少しでも長くして、それを稼ぎにつなげる。さらなる付加価値を創出するために、倉庫を準工場化センターにすることを目指すべし!

6 現場をショールーム化せよ!
現場のショールーム化は最高の営業である。他人に見せて評価してもらえるだけの「現場力」があれば、営業マンは要らない。このことは本連載で何度も訴えてきたが、あらためて強調しておきたい。
客に見せられる現場とはすなわち「5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)」、現場スタッフのあいさつ、マナーが徹底されている現場であり、「ここなら任せられる」と荷主に信頼してもらえる現場である。

7 車両事故を徹底的に撲滅せよ!
燃費管理(走行)を徹底すれば燃料費ばかりではなく、事故が激減する。また、事故が少ない会社は、ドライバーのあいさつやマナー、5Sがしっかりしていて、車両がいつもきれいに保たれている。そして利益が出ている点で共通している。やはりこれも現場力なのである。
事故のゼロ化にはいわゆる〝ヒヤリ・ハット〟のビジュアル化が有効だ。リアルな画像、映像はドライバーに刺さる。ただし、罰金の乱発や、ドライバーに焦りやプレッシャーを与える言動は厳禁だ。
筆者の知るある物流会社では、部長クラスがドライバーの家庭を訪問し、ドライバー本人だけではなく、その家族にも事故防止の重要性を理解してもらう活動が効果を挙げている。とりわけパチンコ、テレビ、深酒など、眼精疲労の原因となる悪習慣の抑制に役立つ。

8 赤字仕事は断る!
ダボハゼのように仕事を取ってくればよかった時代はとうの昔に終わっている。輸配送とセンター運営のトータルで収益を判断するのもやめた方がいい。車両別、センター業務別に損益勘定を行い、赤字の場合はそれぞれ改善策を練る。それでも赤字が解消しない仕事からは手を引くべきだ(図1)。

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9 少数精鋭をよしとする!
そもそも多数精鋭などあり得ない。ないものねだりを嘆いていても業績は良くならない。
物流業は「所長産業」だと筆者は考えている。営業所長あるいはセンター長の能力・資質で現場運営はほとんど決まってしまう。従って、稼げる所長の人数でその会社の規模が決まる。それ以上に規模を大きくすれば利益は出なくなる。
一方、現場のパート・アルバイト社員はオールラウンダーを育成することに努める。持ち場を固定するのではなく、ピッキング、検品、補充と一人何役もこなせる多能工化を進めることで物量の波動への対応が容易になる(図2)。

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10 決算書をきれいにする!
会社から社長への貸し付けは一掃する。昨今、赤字決算を回避するために自分の給料を取っていない経営者が驚くほど増えている。個人の預貯金で生活費を賄えない場合は、会社から仮払金として必要な金額を払い出すことになる。そのまま決算を迎えると仮払金は社長への「長期貸付金」に仕分けられる。
しかし、銀行も分かっている。長期貸付金が多額になればそれを経費と見なして融資審査をするようになる。そこまで追い込まれる前に引当金の取り崩しなど工夫する方法はいくらでもあったはずだ。有能な税理士や外部ブレーンの力を頼るべきだ。銀行に文句を言わせない状態にしておくことが肝要である。
最後に後継者問題にも触れておこう。後継者不在の会社、良いサービス、優れた特徴を持っているが財務状況が芳しくない会社、賃金の未払いが出ている会社などは、経営者が過度な自己犠牲を払って暗闇の中を走り続けるより、合併や売却、最悪の場合には清算を検討すべきだと筆者は考えている。厳しいようだが、これからは適正な賃金が払える会社にしか人は集まらない。物流会社の存続には資本力が不可欠となるからである。