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第148回 事例で学ぶ現場改善:『通販会社M社の特積み運賃削減』

トラック運賃の高騰に悩まされていた。しかし、倉庫の運営会社に配車まで丸投げしているので手の付けようもない。まずは実態の把握から始める必要があった。その結果、協力倉庫会社が零細であることが、割高な運賃の一因になっていることが分かった。しかし、倉庫の運営費自体は驚くほど低コストに収まっていた。

方面別に特積みを使い分ける
通販会社M社は関東圏に本社を構え、物流拠点を全国に3カ所設けている。年商は約80億円。ドライ食品、日用雑貨、家具・家電、園芸雑貨品を中心に約2500アイテムを扱っている。前身は協同組合の商事部が展開していた通販事業部門で、20年ほど前に独立して株式会社化した。
販売先は古巣でもある協同組合の会員向けが全体の約7割、残る3割が外販に当たる一般ユーザーという構成だ。また組合員向けのうち、各地の協同組合の事務所に納品する割合が4割、エンドユーザーである組合員宅への納品が6割を占めている。
インターネットとカタログを通じて販売しているが、組合員は地方の高齢者が中心であることからカタログ販売の比率が高く、ネット経由の注文は協同組合の職員による購入が主であった。
同社の取締役営業本部長L氏は、トラック運賃の高騰に頭を痛めていた。配送には特積みを使っているが、大物やかさ高な商品がかなりあることから対応可能な物流会社が限られており、以前から割高な運賃を強いられていた。そこに昨今の値上げ要請である。
ちなみに特積み会社にはそれぞれ得意とする荷姿や納品エリアがあり、A社が受けない荷物はB社が受ける、B社が受けない荷物はC社が受けるといった具合に、現場レベルでは各社の特性に合わせたすみ分けが行われている。荷姿に癖のある荷物の場合、選択肢は限られてしまうのが実情である。
特積み会社との取引方法にメスを入れる必要があった。しかし、その前にやるべきことがあった。物流コストの把握と分析である。M社はコストダウンを実現したいとはいうものの、どれだけ削減したいのか具体的な目標値を持っていなかった。
M社は出荷指示以降の庫内作業全般を、在庫管理から特積み会社の手配に至るまで、3拠点それぞれの協力倉庫会社に丸投げしていた。そのため特積み会社に対する現状の支払運賃がどのレベルにあるのかさえ、十分に把握できていなかった。L取締役の部下には業務部に所属する物流担当者としてF氏がいたが、「何年度のタリフを使用していますか」という質問にも答えられない状況であった。
そこで、われわれ日本ロジファクトリー(NLF)が用意した「トータル物流コスト算出表」(下記参照)に実績を記入し、料金体系の一覧表を作成した。そこに保管料、作業料、入・出庫料、運賃タリフ(年度とランク)を整理して分析を行った。
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その結果、通常貨物の支払運賃の単価は安いとまではいえないが、おおむね相場レベルであることが分かった。一部の大物とかさ高物の運賃だけが突出している状態であった。また倉庫の運営コスト(保管料、作業料、入・出庫料)は〝激安〟といってよかった。
3拠点の委託先はそれぞれ小規模な倉庫会社であり、管理費がわずかしか掛かっていない。取引年数はいずれも10年前後でM社の業務に慣れている上、時間外出荷など少々のイレギュラーにも対応できる。M社にとって融通の利く協力会社であり、他に物流会社を探しても同じ料金で対応できるところはまずないはずだ。
問題はいずれの委託先もM社の仕事が中心で、他に主だった荷主を持たないため特積み会社に出荷する物量が少ないことであった。配送まで丸投げしている以上、運賃水準としては物流会社間レートを期待したいところだが、一般荷主の契約レベルと変わらなかった。
支払運賃の削減を協力会社任せにすることはできそうになかった。また昨今、特積み会社に対するボリュームディスカウントは、よほどの規模でない限り機能しなくなっている。それを踏まえて特積み会社との付き合い方を変えていく必要があった。
その方法の一つは、方面別に最適な特積み会社を選択することであった。その特積み会社が自社の路線を持たないエリアへの輸送には、通常の運賃に付加して中継料が発生する。方面ごとに中継を必要としない特積みを選べば中継料は掛からない。中継が減ればハンドリング回数も減るため、破損や口割れなどを回避できる。リードタイムの短縮にもつながる。配車の手間は増えるがそれだけの価値はある。
ただし、大型サイズやかさ高物は引っ越し業者のネットワークを使うなど、通常の特積み貨物とは別扱いになるためリードタイムは変わらない。現状では7〜20日を要することもある。
特積み運賃を削減するもう一つの方法は「ショットガン」である。以前にも本連載で紹介したことがあるが、特積み会社の配達エリア基幹店への直送化である。通常は「集荷店→集荷エリア基幹店→配達エリア基幹店→配達店」となる特積みのフローを、「区域運送会社のチャーター便による出荷→配達エリア基幹店→配達店」に変更する。
ショットガンの場合、出荷はチャーターなので大物やかさ高物でも扱うことができる。
ただし、特積み会社の協力を得て、各地の配達エリア基幹店で荷受けを承諾してもらう必要がある。この取り組みに特積みJ社が理解を示してくれた。

拠点集約で横持ち輸送を解消
物流拠点の集約にも取り組んだ。横持ち輸送の解消が狙いだ。M社の既存3拠点のうち2拠点は、本社から東西にいずれも車で1時間ほどの距離に立地していた。
また、その2拠点は販売チャネルや出荷先ではなく、荷姿を基準に役割を分担していた。
「大物」と「小物」で保管場所を分けていたのである。荷物をハンドリングする倉庫会社にとってはありがたい区分だが、納品先別の荷合わせに多額の横持ち運賃が発生していた。
その2拠点を1カ所に集約することになった。都道府県別の着地点分析の結果、既存の2拠点の所在地であれば、どちらを選択しても大きな影響は出ないことが判明した。
そこで特積み会社の営業所が多く集まっている西方面のA社側に集約することを決めた。
しかし大きな問題があった。A社がもう一方の協力会社であるB社側の物量を吸収するには、それまでの約2倍のスペースが必要で既存施設では収まりきらない。しかし、A社には代替施設を用意する力はない。ゼロベースで最適立地を分析して、新たな協力会社を探すという手段も考えられたが、既存協力会社のコスト競争力と対応力を手放したくはなかった。
そこでA社の新拠点立ち上げを、荷主としてM社が全面サポートすることにした。具体的にはNLFとM社のネットワークを駆使して物流不動産情報を収集し、A社に借りてもらう物件を探した。また、施設はA社に集約したが、運営はB社にも参加してもらうことにした。新拠点に庫内作業会社として入り、B社の既存庫内スタッフのうち、新拠点に通勤可能な社員およびパート社員は引き続き働いてもらう形だ。
一連の物流改革と並行して受注方式の集約も進めた。従来は主要顧客である各地の協同組合と個人会員の双方に対して、電話、ファクス、ウェブサイト、メールと全ての方式で注文を受けていた。そのため受注処理のフローが煩雑になり手間が掛かっていた。
そこで協同組合からの発注をウェブサイトに限定することとした。移管を促進するために3〜5%の割引をインセンティブとして導入した。一方、個人の組合員からの注文はターゲット層が高齢者であることを考慮して、御用聞き型の電話による注文伺いと購買者からの電話注文に絞り込んだ。これによりファクスとメールを廃止した。
この受注方式の集約には完全移管までに2年近くを要することになったが、結果として受注処理スタッフの人数を15%削減することができた。聞き間違い、言い間違い、入力間違いなどの受注ミスの削減も同時に進めているが、こちらはまだ道半ばである。
物流管理体制の強化も課題として残っている。本社業務部の物流担当者はクレームをもぐらたたきのように対応するのがやっとで日々業務に追われている。一方、現場にはM社から正社員のセンター長を1人常勤させているが、プレーイングマネジャーのため管理まで手が回っていない。
一連の取り組みによりトータル物流コストは約17%削減できた。しかし、現状の管理体制のままでは、いずれリバウンドを起こす可能性は否定できない。物流管理内容の明確化、管理指標(KPI)の設定、KPIを活用した生産性および品質の可視化・共有化、目標設定などが不可欠である。それには独立した物流部門を設立し、時を置かずに次のステージへ進む必要があるだろう。