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《特集解説》 事例で学ぶ現場改善:『“配車力”を鍛えるための5箇条』

配車業務は“暗黒大陸”とされる物流の中でも、最も闇の深いブラックボックスだ。配車の最適化や配車マンの育成の問題は、その重要性にもかかわらずこれまでずっと先送りされてきた。しかし、もう放置はできない。安定供給を維持していくために配車にメスを入れる時が来た。

物流の最後の聖域
数多の物流改善テーマがある中、配車の改善は課題として抽出されてはいても優先順位の上位に挙がってくることはまずない。多くの荷主、物流会社において配車業務は過去に掘り下げられたことのない、いわば“未開の地”となっている。ドライバー不足が深刻化している昨今、そこに多くの宝が眠っていることを筆者は痛感している。
配車ソフトなどのツールも出回るようになったが、システムで可能になるのは、ごく初歩的なシミュレーションや、配車マンの業務をいくらか軽減する程度のことであり、最終的にはやはり配車マンの判断と采配に頼ることになる。属人的で職人的なノウハウを払拭できてはいない。それでいて、配車マンの教育やスキルアップの方法は今もってほとんど体系化されていないのが実情である。
なぜ、これまで配車問題は先送りされてきたのだろうか。答えは恐らく、配車マンが何をしているのか、本人以外には分からないからである。センター作業であれば、庫内を見て回れば誰でもある程度の察しはつく。しかし、配車となると荷主はもちろん同じ物流会社の社員でも理解できないほどブラックボックス化していることが多い。
いわゆる“物流危機”に不安を感じた荷主や元請けが、これまで協力運送会社に任せきりにしていた配車を内製化しようとしても、経験者の引き抜きでもしない限り、うまく回せないだろう。それだけ配車マンは多種多様な情報を日々取り扱い複雑な業務を処理している。それを筆者なりに次のように整理してみた。それぞれについてコメントしたい。

①納品サポート
②傭車先の確保
③共配パートナーの開拓
④出荷拠点の最適化
⑤ドライバーとのコミュニケーション
⑥車両別損益管理
⑦運行管理・安全管理

①「納品サポート」とは第一に、納品に関するドライバーからの質問・相談に分かりやすく回答することである。配車マンによるドライバーの指導やアドバイスは納品を安全かつスムーズに実行する鍵になる。また、無駄な作業や時間ロスの多い納品先があれば、営業部門や荷主に納品条件の資料を提供して、先方に改善を促すことも配車マンに期待される役割の一つである。
そのツールとしてわれわれ日本ロジファクトリー(NLF)では、各納品先の制約条件や注意事項をシートにまとめた「納品カルテ」の作成を推奨 している。
運用上のポイントはメンテナンスである。納品先の状況が変化したら、 時を置かずにカルテに反映されるよう、日常業務にメンテナンス作業を組み込むこ とである。
②「傭車先の確保」は、ますます重要かつ困難になっている。候補先をリストアップして片っ端から電話を入れるといった単純なやり方ではもはや車は集まらない。
次に列記するような様々なアプローチを試みる必要がある。
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●ドライバーが喜ぶ仕事を傭車先に回し、反対にハードな仕事は自社便で対応するといった自己犠牲的な覚悟が必要である。ドライバーが喜ぶ仕事とは、具体的には終了時間が早い、荷降ろしの順番を長時間待たなくてよい、有料高速道路を使える、自主荷役がない、ケース物の仕事などである。

●今や配車マンが足を使って車を見つける時代である。多くのドライバーの集まるパーキングエリアやトラックターミナルなどが狙い目だ。休憩しているドライバーに声を掛け、「帰り荷は何か」「いつも帰り荷があるのか」「帰り荷はいつも決まっているのか」などの話を聞いて「帰り荷で困ったら連絡してほしい」と名刺と缶コーヒー1本を手渡す。

●レギュラーのドライバーからも、ルート別にどんなトラックが走っているのか、「社名」「都道府県名」「車両サイズ」の情報を収集する。その際にも情報提供に対するちょっとしたインセンティブを用意する。

●傭車先への支払いサイトを短くする。傭車先は資金繰りが楽になる。入金が早い荷主は物流会社から見たときのランク付けが上がる。忙しくなるほど車が集まってくるようになる。

●バーター取引を前提とする。一昔前までとは違って、仕事を出すばかり、もらうばかりの関係は長続きしなくなっている。常に往復を満車で走行している車両などまずない。どの物流会社にも繁閑差はある。その調整役を果たすことで求心力が高まる。

●普段、車両を融通し合っている他社の配車マンと、電話でやり取りするだけでなく、訪問して相互理解を深める。配車マン同士の意思疎通レベルと、マッチングが成立する確率は比例する。荷物と車両の需給バランスが崩れたことで、電話1本でやり取りが成立した時代よりも細かな調整が必要になっている。

持続可能な共配を組み立てる
共同物流は今や避けて通れないテーマである。③「共配パートナーの開拓」がその成否を握っている。いったんは手を握ったものの運用開始後にミスマッチが発覚して、取り組みを中止・断念せざるを得なくなるケースが後を絶たない。持続可能な共配のポイントとして次の3つを指摘したい。
1つは取り組みを荷主が主導するのではなく物流会社に主導させることである。
そうすることで荷主のわがままを最小限に抑えて、全体を最適化することができる。荷主同士で直接調整すると、お互いの損得に振り回されて話し合いの決着がつかなくなる。2つ目は納品先が重複する業種・エリアを選ぶこと。そして3つ目がしっかりとしたベースカーゴの存在である。60〜80%の積載率をカバーするベースカーゴの空いたスペースに、物量の少ない荷主を相乗りさせる。「大量」と「少量」の
組み合わせが最も成功率が高い。「少量」と「少量」の共配は一時的には成立しても長くは続かない。
④「出荷拠点の最適化」は、複数の在庫センターがある場合には常に念頭に置いておく必要のあるテーマだ。新しい荷主や納品先を既存の配送ルートに付け足していった結果、気が付くと隣のセンターの近くまで納品に行っていたということが現実に頻繁に起きている。当然ながら隣のセンターから出荷すべきである。配送ルートを拠点単位で管理しているために部分最適に陥ったわけである。
年2〜4回は配送ルートをゼロベースで見直す必要がある。われわれNLFでは “出荷振り分けの見直し”と呼んでいるが、未着手の企業が多く、宝の山といえる。
ただし、見直しの際にはエリアの得意先情報を一元管理している営業担当者を加えることが重要である。

“できる配車マン”の共通点
⑤「ドライバーとのコミュニケーション」が、配車マンにとって何より大事であることは誰でも容易に想像できるだろう。筆者の経験則上、優秀な配車マンのコミュニケーションには次のような共通点がある。

●「ありがとう」「お疲れさま」の声掛けは当たり前。何かあるたびにドライバーに対して褒め言葉が出る。多くの褒め言葉を持っている。いわゆる〝褒め殺し〟ができる。

●フットワークが良い。必要とあらばすぐに現場へ直行する。デスクに座っていることが少ない。

●高圧的な話し方は決してしないが、こびるようなこともしない。配車マンとドライバーは対等であり、仲間である。

●いわゆる「報・連・相」を徹底している。

●増車時よりもむしろ減車時の対応に注意を払っている。

●レクリエーションなどを通じて、ドライバーとの距離を縮めている。ドライバー一人一人の性格や家族構成、懐具合を把握している。
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⑥「車両別損益管理」は、「日々決算」として知られるように、車両別の損益を毎日管理して、改善を積み重ねていくことが肝要である。基本的なテーマであるが、ここであらためてポイントを整理しておこう。車両サイズ別に見ると、1〜4トンの中小型車は「回転率」、4〜10トンおよび増トン車は「積載率」が収益管理の軸である。また中長距離輸送では「走行1キロメートル当たり運賃収入(キロ収)」
が運賃の物差しになる。
全体の収益管理は「車両稼働率」が重要である。車両リース、借入金による購入、分割払いのいずれの方法を取るにしても金利が掛かっている。人間と違って金利は休むことがない。従って休車させてはならない。365日・24時間稼働にできるだけ近づける。車両1台に対してドライバー2〜3人を交替制で投下することを目指さなければならない。
⑦「運行管理・安全管理」は、本来それぞれ運行管理者、安全管理課が担当する業務だが、実際には配車マンが兼務しているケースが非常に多い。ドライバーの声を聞いて体調の良し悪しを判断できることは、一人前の配車マンの条件の一つといえる。さらに一流の配車マンともなれば、業務環境の整備にも深く関与してドライバーの退職を抑制し、定着率の向上にも貢献する。また安全運転の徹底には事故防止だけでなく燃費走行によってコストを削減し、利益を押し上げる効果がある。