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《特別編》事例で学ぶ現場改善:『「配車センター」の時代がやって来た』

従来の拠点別の配車管理ではもはや必要な車両を確保できない。効率化にも限界がある。エリア別に配車業務を集約する「配車センター」の設立が有効な解決策だ。ただし、委託先の物流会社から“配車権”を取り戻すことがその前提になる。まずは「運行日報」のチェックから始めてみよう。

 

「運転日報」を毎日チェックしろ

今日、多くの企業が全国1カ所あるいは東西2カ所に受注センターを設けている。売上金額ベースでは既にオーダーの8割以上がEDI化されている。しかし、件数ベースではいまだに5割前後がファクスや電話というケースが多い。その入力作業を従来は各営業所で処理していたが、受注センターに集約して業務を効率化している。

受注に続く業務集約の第2ステージは在庫管理だった。拠点別の在庫管理は在庫の持ち過ぎや偏在を招きやすい。それを避けるため在庫管理センターを立ち上げ、全国あるいは東日本と西日本など広域エリアの在庫を一元管理する。工場から各拠点への補充も中央から指示を出して在庫の偏在と横持ちを回避することに成功した。

次は配車センターの時代だ。まだ具体化しているケースは少ないが、これから確実に増えていくと筆者はみている。そうしないとトラックがつかまらないからだ。拠点別の配車業務を集約して効率化し、管理対象エリアを広げることで無駄を可視化してルート組みを最適化する。今後もドライバーの数は減っていく。集中管理によって限られたリソースを有効に活用する。

配車センターの数は東西2カ所というケースもあるし、首都圏、中京圏、近畿圏などのエリア単位でもいい。九州、四国でもメリットがあったという報告も受けている。とりわけ幹線輸送の帰り便には宝の山が残されている。目安としては使用車両台数300台クラスの拠点を複数展開している企業が検討の対象になる。

ただし、配車センターの新設は、荷主が自分で配車できることが前提だ。これが大きなハードルになる。実際、筆者はこのところ、配車機能を取り戻したい、元請け運送会社に委託している配車業務を内製化したいという相談をよく受けている。

配車は荷主が主導権を握るべきだと、筆者は以前から主張してきた。物流会社に配車を丸投げすれば好き勝手にされてしまう。元請けは合理化すればするほど車両台数を減らさなければいけない。つまり売り上げが減ってしまう。そのため荷主には効率化に取り組んでいるように見せても、実際には手を緩めている。

荷主が自分で配車計画まで作るのがあるべき姿だ。しかし、メーカーや卸などの荷主はもちろん物流子会社でさえ、簡単にはできない。配車システムを使って生産計画と連動した幹線輸送を組むことくらいはできても、柔軟な対応を必要とする販売物流や店舗配送となるとお手上げだ。

トラック運送の実態を知らない荷主が、配車組みまで一気に内製化しようとするのは現実的ではない。その前にやるべきことがある。配車管理の内製化だ。作業と管理は明確に分けて考えなければならない。作業は外部に委託しても管理機能は内部に残す。配車だけに限らないアウトソーシングの鉄則だ。それなのに配車作業と管理の両方を長きにわたり丸投げしてきたことのツケが今になって回ってきたと自覚すべきだ。

それでは配車管理とは具体的に何をすることだろうか。その第一歩はドライバーがその日の業務内容を管理者に報告する「運行日報」のチェックだ。本来、運送会社は毎日、荷主に運行日報を提出する義務がある。ところが実際には日報は運送会社が持ち帰っている。荷主が求めないからだ。その代わりに荷主は月次などで集計した業務報告書を運送会社に提出させている。しかし、それを見ても配車の実態は分からない。

運行日報は毎日チェックしなければならない。その日、荷降ろし時間が不自然に長かった納品先があれば、その理由を尋ねる。ドライバーは「降ろす場所が分からなかった」と言う。調べてみると、その店舗だけまだ「納品カルテ」ができていない。すぐに作成して、同じことが再び起きないようにする。地道な改善の積み上げによって生産性を上げていく。

「配車機能内製化プロジェクト」のステップ1ではルート組みまでは手を出さなくてもいい。それはステップ2で構わない。ステップ1では、配車作業を物流会社に委託したまま、配車管理を内製化する。まずは運行日報のチェック。そしてKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)管理だ。幹線輸送であれば積載率で生産性を管理する。満載を100とした場合に何パーセント積載しているか、商品マスターから荷物の容積を計算して荷台の容積と比較する。重量勝ちの製品であれば重量ベースで計算する。その分析から改善策を検討する。

集配便は基本的には車両別回転数をKPIにとってルート当たりの生産性を管理する。ただし、商業地ではないエリアで4トン車以上の中大型車を集配便に使っているケースでは積載率を追った方が効果的な場合もある。

失われた“配車権”を取り戻す

そして次の段階、ステップ2でルート組みに挑戦する。とはいえ、荷主のプロパー社員には難しい。社内で配車マンを育成するのも無理がある。実際には配車の実務経験者を外部から採用するか。あるいは、しばらく物流会社から配車マンを派遣してもらうことになる。

配車業務をどこで誰がやるのかには、基本的に三つのパターンがある。一つは運送会社に所属する配車マンが事務所でプランを組んで荷主の出荷拠点に送信するケース、いわば“リモート配車”だ。工場出荷などの比較的単純な幹線輸送であればそれでも機能する。

しかし、販売物流の場合はどうしても出荷拠点に配車マンを置く必要がある。販売物流の配車マンは出庫後もドライバーをフォローしなければならない。「車が入れないんですよ。どうしましょう」といった相談や、「駐禁切られました。警察行かないと」「それじゃ、代わりのトラック出すから積み替えて。30分後に着くから」といった細かな対応が求められる。

そのためコンビニなどは、委託先の物流センターに元請け運送会社の配車マンを常勤させている。運送会社の配車マンを出向させているケースもある。その場合には人件費が発生するが、配送効率を上げることでペイできるという考えだ。配車機能の“半自社化”といえる。しかし、出向者がそのまま荷主に転職してしまう恐れがあるため、運送会社は優秀な人材を出したがらない。時期が来たら戻すことを前提にすることもある。結局、配車マンの頭が切り替わらないので、効果には限界がある。そして、三つ目のパターンが実務経験者の中途採用による完全自社化だ。配車センターを新設するなら、そこまで踏み込むべきだと筆者は考えている。

ステップ2では、配車と営業との連動、情報共有が不可欠となる。荷主が自分で配車を組むようになると、過剰サービスが表面化する。営業マンは往々にして物流に〝保険〟をかけたがる。午前中に納品すれば済むものを「9時半必着」で指示したり、別便で対応できる追加発注に緊急出荷をかけたりする。

協力運送会社の配車マンは黙って指示に従うしかない。しかし、同じ会社の同僚であれば「これって本当に9時半納品じゃないと駄目なの」と担当営業に聞くことができる。午前中であれば構わないと分かれば効率の良いルートを組み直せる。追加発注の納品方法を検討できる。

 

配車センターを収益化する七箇条

筆者は本誌2017年5月号で「“配車力”を鍛えるための五箇条」を寄稿した。そこではブラックボックス化している配車マンの仕事の中身を整理して、配車能力を向上する方法を解説した。その続編として今回は、荷主の視点に立って配車センターをプロフィットセンター化する七つの方法を紹介する。

物流会社でも物流子会社でもない荷主は、配車センターを収益化しようと言われてもピンと来ないかもしれない。しかし、例えば卸にとって物流サービスはそのまま商品である。メーカーの商品価格にも物流サービスが含まれている。本質的には変わらないと考えて欲しい。

 方法1

配送ルートを年4回は見直す

納品先は時間とともに変化する。しかし、配送ルートは最初に策定したものをそのまま修正しながら使い続けていることが多い。既存の固定コースにそのまま納品先を追加したり、減らしたりを重ねていくので、時間の経過とともに歪みは大きくなっていく。本来であれば配達できる物量なのに車両が足りなくなったり、特定のコースで帰庫が著しく遅くなるといった問題が生じる。少なくとも年に4回は配送ルートを抜本的に見直す必要がある。

 方法2

出荷拠点の振り分けを年1回は見直す

その納品先にどの拠点から出荷するかという出荷拠点の振り分けは、担当営業組織に基づいて自動的に決めている場合が多い。その結果、別拠点の近くまで納品に行くという無駄が生じている。隣接する拠点のさらに遠方まで配送ルートが延びていることもある。拠点ごとに配車担当や協力運送会社が違うとそうした歪みが表面化しない。

配車機能の内製化を機に、商流ベースで振り分けた出荷拠点を物流の目で再検討しよう。その後も本来なら配送ルートと一緒に年4回は見直したいところだが、出荷拠点の変更は得意先との交渉や調整に時間がかかるため、最低年1回でもいいので定期的に見直したい。驚くほど大きな効果があることを筆者は経験から知っている。

 方法3

共同配送は1社で積載率70%以上を満たせるベースカーゴの存在を前提とする

積載率に換算して25%の物量がある荷主を4社集めることで満載にするというアプローチの共同配送は長続きしない。一時的に成立しても、そのうち1社の物量が減って宅配便に流れて離脱したり、あるいは1社で車両を仕立てられるほど物量が急増したりする。

成功している共同物流には1社で70%以上の積載率を満たせる核となる荷主が存在する。それをベースカーゴに10%クラスの小口荷主2社、あるいは20~30%クラスの荷主1社が便乗する。便乗した分がそのままコスト効果を生む。しかも長期にわたる安定運営が可能になる。

 方法4

傭車比率50%以下を厳守する

荷主の場合、委託先の運送会社に傭車比率が50%を超えないように徹底させる。50%を超えると傭車先に主導権を握られて急にハシゴを外される恐れがある。安定稼働にリスクが生じる。今や傭車は自社車両よりもコスト高だ。運送会社に聞けば異口同音にそう答える。新規に傭車を依頼すれば従来の1・5倍近い運賃を要求される。そのため運送会社各社は自社比率を増やしている。荷主は業務内容の改善や働く環境を整備してその支援をすべきだ。

 方法5

夜間配送を検討する

店舗納品などの集配車は夜間配送をあらためて検討する。昼間はどうしても渋滞に巻き込まれる。空いている時間に車を走らせる。ただし、夜間は店舗側で荷受けができない。無人の店舗への納品が前提になる。夜間は配送効率がいいのでドライバーには割の良い賃金が払える。荷受けもないので納品も楽だ。昼間のドライバーよりもむしろ確保しやすい。

 方法6

運用車両台数の約3倍の運送会社とパイプを持つ

目安として、運用車両台数の3倍の運送会社をネットワークをしたい。運用台数が30台なら90社とパイプを持つべきだ。それくらいの選択肢がないと今は車両を確保できない。現状の傭車先リストはあまりに少なすぎる。そのため配車マンは外に出なければならない。運送会社を訪問して、時には車両を相手に融通し、時には融通してもらうバーターの関係を作っておく。

 方法7

ドライバーによる手積み・手降ろしを1年以内にゼロ化する

ドライバーの作業負担の軽減はもはや必須である。待機時間の削減はもちろん、フォークリフト、カゴ車、オリコンなどのマテハンを使わず、ドライバーに手積み・手降ろしを強いる作業は1年以内に解消する。「あそこの会社の仕事は楽だよ」と言わせなければならない。口コミでドライバーが集まる。行列ができる荷主、行列ができる運送会社を目指したい。