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第185回 事例で学ぶ現場改善:『パーツ販売Z社の輸送費削減余地検証』

配送コストの上昇に悩まされている。物流コンサルタントの手を借りたいが、どれだけのコスト効果を期待できるのか分からないと投資に踏み切れない。そこでまずは改善余地の検証から始めることになった。その結果、路線会社の対応力が著しく低下している現状を目の当たりにすることになった。

 

同じ路線会社でも営業所で対応に差

Z社は自動車部品の小売りと通販業を営んでいる。中・四国エリアに本社兼店舗を含む4店を展開している。年商は約30億円。近年は通販に力を入れており、売上高の3分の1に当たる約10億円を通販が占めるようになっている。

取り扱いアイテム数は約150。仕入れ先は国内メーカー、卸、海外メーカーなどさまざまである。販売先は大きく、店舗で購入する一般ユーザー、ネット通販での一般ユーザー、ネット通販の法人ユーザーの三つに分類できる。

物流センターと呼べるほどの施設ではないが小規模な倉庫を1棟借りしているほか、各店舗のバックヤードにも在庫を保管している。そのため倉庫および店舗間の横持ち輸送が発生している。それを通販で利用する宅配便も含めて路線会社(特積み)2社に委託している。

ご多分に漏れず、トラック運賃の値上げが現在、Z社に襲いかかっている。危機感を強めたZ社のT社長が、われわれ日本ロジファクトリー(NLF)に連絡を入れてきた。宅配便のコストを抑制したいが、Z社の事業規模でコンサルティングフィーを支払って果たして元が取れるのか、費用対効果の見通しが欲しいという。

そこで、今回の案件はコスト抑制効果を事前に検証することから始めることになった。われわれは宅配便だけにテーマを絞らず、Z社の物流の概要から次のような仮説を立てた。

①倉庫の移管
②店舗でデバンニング
③路線便とルート配送の棲み分け
④トラックターミナルへの持ち込み
⑤「ショットガン輸送」の導入
⑥輸入フォワーダーの変更
⑦宅配会社の見直し

Z社の倉庫は本社および店舗から50キロメートル程度離れた隣県の内陸部にあった。そこを選んだのは、賃借料が安いことに加え、協力路線会社A社が路線便だけでなくBtoCの宅配まで取り扱い運賃も比較的安価であったことに起因している。荷主が少ないエリアであることから、路線会社A社としても店所を維持するのにZ社が必要だったのである。

「①倉庫の移管」はこれをZ社の本社や店舗に近い海側の倉庫に移そうというアイデアであった。それに合わせて現在は4店舗のバックヤードに無秩序に分散している在庫の保管場所を見直せば、輸入コンテナのドレージ輸送や横持ちの輸送距離短縮と、横持ちの発生頻度を抑えることができる。

ところが、移転先を管轄する路線会社A社の営業所に相談したところZ社の荷物には重量物が多いためBtoCの宅配には対応できないと断られてしまった。同じ会社でも営業所によって対応に違いがあった。協力路線会社B社も同様に取り扱えないという。

路線会社C社とD社にも当たってみたが、法人向けなら路線便で対応するが運賃は現状よりも高くなる。BtoCは『NO』という回答だった。この2社には過去にも大型商品のBtoC配送を打診したことがある。その時には、リードタイムは1~2週間かかるものの宅配にも対応していた。結局、倉庫の移管は先送りにするほかなかった。

次善の策として輸入コンテナを「②店舗でデバンニング」してドレージ料金を削減することも検討した。しかし、4店のバックヤードを調べたところ、20ftコンテナを何とかさばける店舗が1店舗あっただけで、40ftコンテナを着車できるようなスペースはなかった。

「③路線便とルート配送の棲み分け」では、近隣の納品先に対しては路線便ではなくチャーターもしくは積み合せで納品することを狙った。問題は運んでくれる物流会社があるかどうかだ。先に説明したようにZ社の商品には大物が多い。誰でも取り扱うわけではない。

幸いなことに法人向けは物量に応じて軽貨物あるいは2t車のチャーターと、積み合せによる対応が可能という運送会社が見つかった。さらにBtoCに関しても家具チェーン、家電チェーン、引っ越しの配送を行っている物流子会社と、一般物流会社から積み合せで対応可能との回答が得られた。

 

路線会社以外の選択肢を探る

「③トラックターミナルへの持込み」にもトライした。Z社の本社および店舗に近いトラックターミナルまで自分で持ち込めば、先に集荷を拒まれた路線会社A~D社はもちろん、他にも運送会社の選択肢が広がるはずだ。意気揚々と候補先を訪問して回ったが、各社とも法人向けなら取り扱うが、宅配はNOと散々だった。

⑤「ショットガン輸送」とは、過去にも本連載で何度か紹介したが、届け先エリアの路線会社や宅配便ターミナルに自分で荷物を持ち込んで末端配送だけ委託するやり方である。届け先エリア単位で荷物をまとめて車両を仕立てることになるため、地方から消費地に納品する場合には特に有効である。

ただし、1日当たり10t車1台分、少なくとも4t分くらいの物量が安定的にないとコストメリットは限られてしまう。Z社では中・四国→関東、中・四国→関西を対象に検討した。しかし、これも路線会社は法人向けの荷物なら取り扱うが宅配は受け付けないとのことだった。そうなるとこれも「③トラックターミナルへの持込み」と同様に、家具、家電チェーン、引っ越し系あるいは一般物流会社を頼るほかない。

「⑥輸入フォワーダー」は、営業倉庫を借りている物流会社のグループ会社に委託していた。しかし、その会社は輸入通関が本業ではなく、売り上げに占める取り扱いシェアも低かった。AEO(優良通関事業者)の認定も受けていないことから通関処理が後回しになり時間が掛っていた。ドレージ料金も割高だった。国際物流をメーンにする会社に変更するべきであった。できれば船会社(キャリア)グループのフォワーダーが良いと判断した。通関処理日数を短縮できれば在庫回転率の向上も期待できる。

「⑦宅配会社の見直し」は現状ではかなりのリスクを伴う。今や物流会社が荷物を選ぶ時代である。路線会社A社との既存取引は温存しておいた方が得策であろう。それでも安心はできない。A社の方針変更あるいは営業所長の人事異動レベルであっても、いつ何時“取り扱いNO”を突き付けられるか分からない。

そうした事態になっても慌てずに済むように、配送ネットワークの補強が不可欠である。具体的には家具チェーン、家電チェーン、引っ越しのそれぞれネットワークとさらに踏み込んだ交渉をしていく必要があるだろう。

こうしてZ社の物流コスト削減余地を探る試みを通してわれわれは路線会社の対応力が著しく低下している様を見せつけられた。物流コストが下がらない時代になっただけでなく安定稼働のリスクが日増しに高まっている。

われわれの報告を受け、Z社のT社長は認識を新たに正式なコンサルティング契約を結ぶことになった。フェーズ1では、先に挙げた仮説のうち、③路線便とルート配送の棲み分け、⑥輸入フォワーダーの変更、⑦宅配会社の見直しを実施する。次のフェーズで⑤「ショットガン輸送」の導入を検討する方針である。