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《特別編》事例で学ぶ現場改善:『3PLのアフターコロナを考える』

コロナは荷主に物流体制の見直しを迫る。3PLとのパートナーシップも再検討される。3PLの本質は課題の克服であり、「一括受託」と「提案力」がそのキーワードだ。その意味をあらためて問い直し、次のステージを見定める必要がある。先進的な3PLは既に、従来の3PLの定義から踏み出した独自の進化を遂げている。

 

ますます二極化が進む

3PLという言葉が日本国内で本格的に流通するようになって既に20年以上が経過した。その後、3PL市場は一貫して成長を続け、今もなお健在ではあるが、各社の実態を見ると多種多様な3PLの形があることが分かる。われわれ日本ロジファクトリー(NLF)が2000年初頭の時点で提案した3PLのあるべき姿は次ページ図の通りである。

3PLとは「個別の荷主に合わせた最適な物流体制をプロデュースして、それを運営できる機関であること」、そして「荷主の物流部門として顧客に対してサービスを提供し、利益を生み出す組織である」と、われわれは定義した。今になって振り返っても、それほど的外れなものではないだろう。

しかし、現在の市場を見渡すと、庫内業務は請負業者に丸投げ、配送は運送会社に丸投げして単に中抜きしているだけの“自称3PL”が横行している。当初は最適な物流体制を構築したはずでも、現場レベルで荷主のさまざまな要望に対応してカスタマイズを重ねた結果、むしろ従来より効率が悪化しているにもかかわらず、放置されたままの現場もかなり見掛ける。荷主は非効率に気付かず、3PLは現状の運用に安住している。

現在のウィズコロナ、これから来るアフターコロナの時代を迎えて、荷主企業の多くは既存の物流体制をあらためて検証することになる。その評価と期待に応えるために、3PLもまた自分たちが果たしている役割とその付加価値を再検証する必要がある。以下、本稿では、3PLの原点に立ち返り、そのあるべき姿と現状とのギャップ、今後の方向性を検討することにしたい。

3PLの本質は課題の克服であり、キーポイントは「一括受注」と「提案力」であろう。その一方で狭義の3PLから一歩踏み出して、新たな業態を確立している企業も現れてきている。そこで「課題を克服する3PL」をステージ1、「新たな需要を取り込み進化する3PL」をステージ2と位置付けて、それぞれ著者の見解をお伝えする。

 

ステージ1 課題を克服する3PL

一括受注は、実際にはかなりの幅がある。提案が採用されて業務を受託したものの、実態としては庫内作業のみ、あるいは輸配送のみの対応で、荷主のマネジャーの指示通りに動いている“一括物流”もかなりある。3PLとは名ばかりで従来型の物流企業との違いはほとんどない。

そのような現場では作業の習熟度だけが荷主の評価軸である。満足な評価を得られない場合、今のような環境であれば荷主企業の余剰スタッフによる倉庫運営の内製化、つまり自社化が検討されることになるであろう。

それとは対照的に、当初受託した業務から段階的に対象範囲を広げていくことに成功している一括受注もある。当初から構内作業や輸配送はもちろん、国内外からの調達、返品対応などサプライチェーン全般を視野に入れて対応している。荷主がグローバル企業の場合は海外の物流拠点運営までカバーする。

こうした3PLの二極化はこれからますます進んでいくものと考えられる。その境界を分けているのが提案力だ。

3PLが荷主と長期にわたって安定した関係を維持するには、受注時に発揮した提案力を継続的に生かしていく仕組みが必要である。通常、現場は荷主の要望への対応に追われ、部分最適の改善がせいぜいである。月1回の連絡会議、改善会議を実施しても、その内容は報告レベルにとどまっていることが多い。

3PLは抜本的な改革を提案してコストを削減すると、それによって現状の売り上げと運営体制を壊すことになりかねないため腰が引けている。荷主から見て“釣った魚には餌をやらない”3PLとなっている。3PLが自主的にコスト削減を提案しないままでいれば、いずれまたコンペが行われる。コロナ不況はその契機となる。

コスト改善提案のジレンマを克服する方法の一つはやはり、コスト削減に成功した場合に、その成果を荷主と3PLで分け合うゲインシェアリングであろう。従来と比べて合意する荷主は増えている。一方、ゲインシェアリングへの合意を得られない荷主に対しては、次のような対策が考えられる。

  • 内製化している受注処理や調達物流業務などのアウトソーシングを提案する。新しい業務を受託することで総利益を確保する。
  • 人繰りのプロを育成して、レイバーコントロールを高度化、倉庫運営コストを削減する。
  • 車繰りのプロを育成して、共同配送の推進、効率的な輸配送ルートの策定によって支払い運賃を抑制する。
  • イレギュラー業務に課金する。

ステージ2 進化する3PL

従来の3PLの定義には収まらない、新たな業態に向かって独自の進化を始めている企業が見られるようになってきた。例えば医薬品物流では三菱倉庫のWMSが業界標準としてプラットフォーム化している。医薬品各社はWMSの乗り合いに準じないとセンター運営に支障を来すと判断して三菱倉庫に業務を委託している。業務は他社に委託しているがWMSは三菱倉庫のものを使っているという荷主もいる。その場合には三菱倉庫はもはや3PLではなくWMSプロバイダーである。

物流業務の委託を伴わない、純粋な物流コンサルティングの事業化を実現している3PLや、いわゆる4PLも増えてきた。われわれNLFがその支援を依頼されることも多い。筆者としては競合相手を手助けすることになるが、多少なりとも業界に貢献できるのであればと割り切っている。

物流不動産開発と3PLを組み合わせたソリューションも広がっている。荷主の要望に見合った物流用地を調達して、センターの建設から運営まで対応する。大手よりもむしろ地方のオーナー系3PLが積極的に仕掛けている印象だ。

コロナがもたらす新常態もまた、物流市場にさらに新たな変化と需要を生み出すに違いない。とりわけ物流の安心・安全・安定は直面する喫緊の課題である。具体的には以下のような対応が3PLに求められるだろう。

  • センター機能の充実(コロナ対策を始め、セキュリティー、防災、備蓄など)
  • IoT、ロボティクスを活用した安定性の高い作業と運営体制
  • 波動に強い現場体制
  • 荷主企業のBCPに呼応したオペレーション

中期的には防災ハザードマップの共有とそれに基づいた拠点配置の見直し、バッファセンターの検討、輸配送ルートの検証、そしてサプライチェーン再構築に向けた3PLの役割分担の明確化などを進めていくことになる。既にコスト削減だけがソリューションではなくっているのである。

 

 
物流コンサルティング・コンサルタント