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《特別編》事例で学ぶ現場改善:『委託先の制御不能を修復する三つのステップ』

 制御不能に陥った物流アウトソーシングの修復は、まず協力物流会社に「運行日報」の提出を要請することから着手する。次に定期的な改善連絡会議を開催して、さらには「SLA(サービス・レベル・アグリーメント)」の締結へと、ステップを踏んで委託先との距離を縮めていくのが現実的だ。

 

長年の物流軽視のツケが回ってきた

 筆者は今回、ロジビズ編集部から依頼された“脱・丸投げ”というテーマを次のように受け止めた。すなわち、多くの荷主企業が長い間、物流会社へ業務を委託してきたが、その実態は“丸投げ”であり、十分な管理はできていなかった。改善などもほぼ未着手であった。

 昨今、そのツケが回ってきている。協力会社から運賃や委託料金の値上げを繰り返し要請され、集荷時間の切り上げや条件の見直しなども突き付けられている。しかし、荷主は納品の詳細や配送インフラの仕組みなど、自社の物流の実態を理解していないため手の打ちようがない。反論することさえできない。

 物流の管理機能を取り戻し、今後再び同じことが起きないようにするには、あらためて協力物流会社と密接なコミュニケーションを取り、その業務構造や「シクミ」を理解して、Win-Winの関係を構築しなければならない──ということであろう。

 実際、筆者から見ても多くの荷主が委託先の操縦不能に陥っている。作業の生産性や品質、保管効率の向上、災害対策など、あらゆる面から改善を望んでいるが、業務の実態を理解しないまま協力物流会社に表面的な要請を出しても体よくかわされてしまうのがオチである。

 こうした事態に陥った原因の一つは、荷主に物流マネジャーがいないことである。物流教育を行っていないので人材が育たない。外部から採用もできない。物流専門部署もない。物流担当者は他の業務との兼任といった物流軽視が横行している。

 さて、それではどうすれば委託先をコントロールする機能を取り戻せるだろうか。われわれ日本ロジファクトリー(NLF)が支援を依頼されている“脱・丸投げ”の事例を見てみよう。

 A社は日用雑貨品の製造販売業者だ。年商は約80億円。今では同社の主力事業に育った卸売部門「流通事業部」を20年前に立ち上げた時から、物流会社B社をパートナーと位置付けて、センター運営を委託している。

 A社と取引を開始した当初のB社は、まだ社歴が浅く、センター運営の経験もなかった。そのためA社の経営陣が自らB社の運営する倉庫に足しげく通い、手取り足取り仕事を教え込んだ。B社はA社向けのセンター運営が軌道に乗ると、そのノウハウを生かして他の荷主を開拓していった。それに伴いA社に対する売上依存度は下がっていった。

 最近になってA社からNLFにコンサルティングの打診が入った。コストダウンと作業生産性の向上を目的とした改善を物流会社B社と共同で実施したいという。ただし、コンサルとの交渉や選定はA社が行う。コンサル費用もA社が負担するという。

 A社の狙いが本当に物流パートナーとの「共同改善」であるならば、コンサル費用も含め一連のプロセスにB社も参加させるのが自然であろう。A社の真意がどこにあるのか、残念ながら筆者はまだ掌握しきれていない。しかし、A社にはB社を育てたという“驕り”があるように感じている。B社が既に“親離れ”している事実を理解できていないようである。長年にわたって緊張感のない取引を続けてきた結果、両社のパートナーシップに齟齬が生じているのである。

 これを改めるにはB社の原価を丸裸にして、そこに適正なマージンを乗せた金額をA社が支払うオープンブック方式が有効かもしれない。トヨタグループでは従来からオープンブック方式を採用して、協力会社の利益率を常に3%にコントロールしながら「共同改善」を進めていると聞く。

 一方、大手日用品メーカーY社や外資系大手外食チェーンX社は、オープンブック方式かつゲインシェアリング(成果報酬)を実施することで、協力物流会社に主体的な改善活動を促している。

 Y社では協力物流会社が達成したコストダウン金額の50%を2年間にわたり支払うというインセンティブルールを明確化している。またX社に限らず外資系荷主はアウトソーシングの導入からインセンティブの設定までの一貫したシナリオを用意していることが多い。

 ただし、筆者の私見ながら、オープンブック方式はコスト表の信憑性が問われるため、公認会計士などの中立的第三者を参画させることが望ましい。

 

地方卸に物流内製化の動き

 これらの事例とは対照的に“脱・丸投げ”を図るため物流の内製化に踏み切る荷主も出てきている。卸売業者に多く見られる。卸売業の機能とは基本的に、「①ロット調整」「②品揃え」「③ファイナンス」「④リテールサポート」「⑤物流」の五つである。このうち「⑤物流」は、付加価値が低いとみなされて卸売業者の多くが外に出してきた。しかし、今や卸売業者にそんな余裕はなくなってきているのであろう。

 事例を二つ紹介する。一つは九州の地域食品卸C社である。年商は約180億円。業務用チルド・冷凍食品を九州全域に卸している。

 C社は物流会社D社とは5年の付き合いである。冷凍・チルドセンターの運営を委託しているほか、当初は配送車両27台をチャーターしていた。しかし、D社がドライバーを確保できなかったことをきっかけに、結局、C社は27台のドライバー全員を自社の営業マンに切り換えた。商物分離から商物一体に転じたのである。

 現在はセンター運営だけを従来通りD社に委託している。しかし、今のところC社とD社の双方とも、コストメリットは出ていない。むしろ、場当たり的とも言える配送の内製化によって実質的に従来より割高についている。いずれ見直しが必要であろう。

 もうひとつの事例は、北陸三県を地盤とする年商約1200億円の中堅卸E社である。物流会社F社と約25年にわたる取引がある。これまではセンターの「入荷」から「格納」までをE社の社員がハンドリングして、残りの作業をF社に委託してきた。それを改め「ピッキング」「仕分け」「出荷」まで社内に取り込んだ。センター運営を完全に内製化したわけである。

 ただし、配送に関しては今でも全体の約9割をF社に委託している。内製化のハードルは高いと見ているようだ。その場合には以下のステップを踏んで委託先との距離を縮めていく必要がある。

レベル1:運行日報の提出

 もともと運行日報は、荷主に対する報告業務の一環であった。しかし、近年は陳腐化が目立っている。管理の煩雑さに加え、荷主側に運行日報から納品の実態を把握できる人材がいないこと、運行日報をどう活用すればよいのか分からないことなどが原因である。まずは基本に立ち返る必要がある。

 

レベル2:改善連絡会議の開催

 連絡会議は物流アウトソーシングにおける最もオーソドックスなイベントである。しかし、月1度の業務連絡会議は行っていても、改善活動についての定期的な報告は受けていないという荷主がかなりいる。

 提案営業やプレゼンテーションには長けている3PLでも、いったん受注が決まってしまえば、改善連絡会議の開催を自分から打診してくることはないと覚悟した方がいい。筆者の見立てでは、3PLの約半分は荷主から言い出さない限り、自発的には動いてくれない。荷主が自ら物流KPIを設定して、定期的に改善連絡会議を開催して、根拠のあるデータに基づいて活動を進めることが重要である。

 

レベル3:SLAの締結

 レベル2の改善連絡会議がマンネリ化してきた、あるいは効果が出にくくなった場合には、次のステップとして「SLA(サービス・レベル・アグリーメント)」を締結する。新たに「改善委員会」を組織して年2回~4回の頻度で評価と振り返りを行う。覚え書きレベルの取り決めであっても、改善に向かっていくことができる。

 以上、“脱・丸投げ”の解決策は、「運営」は外に出しても「管理」は社内に残す、両者の役割分担の線引きを明確にするという、当たり前のことに尽きる。丸投げ状態のまま協力会社との関係性が硬直している場合には、「運行日報」の提出を要請することから始めることをお勧めする。

 

 
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