《特別編》事例で学ぶ現場改善:『荷主・倉庫・3PL─業態別アセット戦略』

荷主が物流不動産を所有すればロジスティクス戦略の足枷になる。一方、営業倉庫事業は物流適地の自社施設を基盤とする事実上の不動産ビジネスだ。3PLにはその中間、使用スペースの約半分を所有することで需要変動に対応し、かつ荷主に最適な拠点を提案できる「フリーアセット型」を推奨したい。

適正在庫は二つある

このところ筆者はオーバーフローを起こしている物流拠点を目にする機会が増えている。天井ぎりぎりまで荷物で埋めて、それでもまだスペースが足りないので通路や作業エリアにも荷物を置いている。当然ながら庫内作業に支障を来す。出荷できない状態に陥っていることもある。

背景にあるのは輸送費の上昇だ。トラック運賃の値上がりで物流費が予算を大幅にオーバーしてしまった。せめて倉庫費用は抑えたい。そのため普通であれば外部倉庫を借りて溢れた在庫を逃がすところを、そうしない。メーカーが外部倉庫を借りる代わりに、販社や代理店に在庫を押し込む。それを販社や代理店が業務委託先の物流会社に、“これも何とか入れてくれ”と押しつける。

委託先が大手の物流会社であれば、“もう入りません”ときっぱりと断るかもしれない。しかし、たいていは要請を受け入れてしまう。センター長や現場のスタッフは、無駄な在庫が多いとは感じていても何がどれだけ多いのかは分からない。適正在庫を把握していないからだ。

ここで注意してほしいのが、適正在庫は実は二つあるということだ。一つを「適正在庫A」、もうひとつを「適正在庫B」と呼ぶことにしよう。Aは荷主にとっての適正在庫だ。欠品を発生させることなく、業界平均以上の回転率を維持するように管理する。一方、Bは荷主から倉庫業務を委託されている物流会社にとっての適正在庫だ。これが物流会社の採算管理のベースになる。

倉庫料金は基本的に保管料と荷役料の二つで構成されている。保管料は、月当たりの坪単価や平米単価など使用面積、もしくは使用容積で決まる。一方、荷役料は入出庫、梱包、流通加工などの作業量に応じて発生する。荷主の在庫が増えれば使用面積が大きくなるので、物流会社の保管料収入は増える。しかし、滞留在庫や不動在庫は荷役が発生しない。動かない在庫が一定の割合を超えると、その現場は採算が合わなくなってしまう。もちろん荷主にとってもマイナスだ。

こうした場合に“できるセンター長”は、在庫の適正化を荷主に提案する。滞留在庫とデッドストックを定義することがその第一歩だ。小売業や外食産業のセンターの場合は、あらためて定義しなくても7日分が一つの目安になっている。それ以上は在庫過多と業界人なら常識として分かっている。

しかし、他の業界にはそうした“暗黙の基準”が見られない。そこでSKUの特性に合わせて自分たちで、滞留在庫3カ月、デッドストック6カ月といった具体的な基準を定める。それを物差しとして滞留在庫とデッドストックの実態を物流会社から荷主に定期的に報告する。

さすがに荷主も目の前にデータを突き付けられたら問題と向き合うようになる。商品マスターの更新の頻度を上げたり、終売品や返品在庫を処分するなど、過剰在庫の解消に動く。その結果、動かない在庫が現場からなくなる。倉庫のオーバーフローが解消される。物流会社は採算が取れるようになる。

さて、前振りが長くなったが、今回は本連載の特別編として、物流倉庫のアセット戦略について筆者の考えを述べさせてもらう。結論から言えば、物流アセット戦略は、荷主企業、営業倉庫、3PLでそれぞれポイントが違う。

まずは荷主。自社施設の所有にこだわる荷主が今でもかなりいる。しかし、筆者は思いとどまるように進言している。最適地に自社施設を所有している荷主をほとんど知らないからだ。むしろ“何でこんなところに”と首を傾げたくなるような山奥に大規模な拠点を所有しているケースにしばしば出くわす。聞けば、土地が安かったので数代前の経営者が購入を決めた、といった具合だ。

その荷主、正確にはその荷主が業務を委託している物流会社は、庫内作業員を集めるのに大変に苦労する。当然それは委託料に反映される。集荷に来てくれる特積会社も限られているので運賃の値上げ要請にも逆らえない。しかし、拠点を売却したくても転用しようのない土地では買い手がつかない。結局その場所から動くこともできず、不利な状況を強いられ続けることになる。

物流一等地であれば所有してもいい、ということでもない。ある大手荷主は関東と関西にそれぞれ大規模センターを設立して東西2拠点に在庫を集約している。集約した当時はそれが最適だったのだろう。しかし、輸送需給が著しくひっ迫した今、関東全域を1拠点でカバーする体制に無理が生じている。拠点から距離のある納品先のリードタイムを維持できなくなった。BCP問題も表面化している。

そこであらためて納品先と物量をマッピングして着地点分析を行ったところ、千葉と神奈川、そして埼玉の3カ所にそれぞれ中型の拠点を置いた時にトータルコストは最小になる、という結果が出た。拠点の分散はリスクヘッジにもなる。

しかし、この荷主も簡単には動けない。立地が良いため、拠点の売却はできるだろう。今なら良い値段がつくかもしれない。それでも移転までには相当の時間がかかる。やはり自社施設が、ロジスティクス戦略の足枷になっている。

アセットの所有にはもうひとつ問題がある。荷主が所有する施設で、業務だけを委託されている物流会社は管理が杜撰になる。あまり指摘されることのない話だが、筆者は確信を持っている。他人の施設なので、そもそもスペースを有効に利用しようという意識が働かない。光熱費を節約することもない。誰もいないフロアに煌々と明かりがついている。使用する土地や施設に責任を持たないと、オペレーション能力は向上しないのである。

 

3PLはアセットフリーが理想形

一方、倉庫会社は事実上、不動産会社であり、アセットが全てといっていい。実際、倉庫会社はどこも不動産賃貸を事業の柱の一つに据えてている。倉庫として購入した土地をマンションやオフィスに転用することになっても、まず物件は手放さない。自分で賃貸する。

物流事業も所有アセットをベースにしている。物流需要のある立地に所有するアセットがそのままその倉庫会社の競争力だ。償却が終わった施設を使った提案は、拠点を賃貸する必要のあるノンアセット型3PLと比べてコスト面で圧倒的に有利だ。

もっとも、日本では3PLも物流施設を自社で所有するアセット型が大部分を占めている。完全なノンアセット型はプレーヤーの数が限られる。ただし、アセット型であっても倉庫会社とは戦略が違う。倉庫会社が例外的にしか賃貸施設を使用しないのに対して、3PLはアセット型でも一定の比率で賃貸施設を使用する。

筆者は3PLに対して「フリーアセット型」と呼ぶアセット戦略を推奨している。使用面積の半分を自社で所有して残り半分を賃借する。自社の所有アセットにしばられず、その荷主にとって最適な拠点を提案できるようにする狙いだ。

荷主は倉庫会社を物流不動産を提供するアセットベンダーとして見ている。実際、倉庫会社はその荷主にとって最適とはいえない立地であっても、自社施設の利用を前提とした提案をする。倉庫会社の弱点だ。しかし、3PLも自社施設が空いていれば、それを埋めようと同じようにするしかない。客観的かつ中立的な提案ができなくなる。

従って3PLは空いた倉庫を所有してはならない。空室リスクは常にある。それでも使用面積の半分を借りている状態であれば、賃借分を自社アセットに寄せることでリスクを回避できる。つまりはスペース需要の波動に対応できる。

もちろん賃貸施設はコスト高だ。しかし、荷主の所有する施設や償却済み施設とは違って、使用しているスペースにコストを支払っているという意識がオペレーションを向上させる。経費を節約してスペース効率を上げ、空いたスペースに別の荷物を入れる。そうした工夫が3PLのコスト競争力を高める。倉庫会社との差別化が可能になる。

ただし、賃貸比率が大きくなり過ぎるとサービスの供給が不安定になる。賃貸施設は貸し主や地主の事情で契約内容が変更になったり、更新できなくなる可能性がある。安定運営を最重視する大手荷主から敬遠される。その点、自社物件には安心感がある。これは傭車の考え方とも一致する。従って3PLにも一定のアセットは必要だ。その比率は50:50が目安と筆者は考えている。

 

第191回 事例で学ぶ現場改善:『化学品卸G社の在庫管理精度向上』

在庫が合わない。物量が増えていくのに伴い事態が悪化していく。しかし、部長たちは知らぬふり。誰も動こうとしない。見かねた社長が爆発した。部長たちを激しく叱りつけたその翌日、物流拠点の運営を委託する協力会社に乗り込んで、相手側の社長と経営陣を相手に大変な剣幕でまくし立てた。

 

トップ自ら協力会社に怒鳴り込む

G社は本社を関東に置く年商150億円の化学品卸である。取り扱いアイテム数は約3800。在庫拠点を仙台、関東、東海、関西の4ヶ所に設置している。いずれの拠点もセンター運営から輸配送まで、現地の物流会社に委託している。

G社の全在庫量の8割は関東拠点に集中している。その在庫管理精度の改善が、今回のコンサルティングのテーマであった。関東拠点は、出荷量の増加と歩調を合わせるかたちで、在庫管理の精度が悪化の一途を辿っていた。在庫が増え、しかも数が合わないという状態が続き、一向に改善する気配がなかった。

それまで沈黙を守っていたN社長はさすがに見かね、ついには激昂した。「いつまでこの状況を放置するんだ! いい加減にしろ!」。G社には物流の専門部署はなかったため、購買部、商品部、営業部、管理部の部長たちに雷が落ちた。

その翌日、N社長は単独行動に出た。自ら社有車のハンドルを握り、常磐道を北上した。関東拠点の物流業務を委託しているK社の社長に会うためだった。N社長はかなりの剣幕でまくし立てたらしい。K社側は防戦一方だったと後日、K社の幹部から聞かされた。最後には「このまま状況が改善されないのであれば契約解消も辞さない」と言い放ってN社長は帰っていったという。

これはG社に限った話ではないが、経営トップという存在は、良かれ悪しかれビジネスの“最終兵器”である。いったん爆発してしまうと事態を収拾するのに大変なエネルギーが要る。われわれ日本ロジファクトリー(NLF)が今回G社の物流改善に担ぎ出されることになった背景には、そんな事情もあった。

早速、現場視察と関係者へのヒアリングを行った。いざ蓋を開けて見れば、関東拠点の運営が悪化している原因は、G社側にもあった。社内に在庫管理責任者が不在で、K社に業務を“丸投げ”していた。
われわれは実施項目として次の七つを抽出し、6ヶ月で改善するスケジュールを組んだ。

①発注方法の見直し

②滞留在庫と死蔵在庫の定義

③定期的な改廃の徹底

④棚卸業務の見直し

⑤出荷頻度ABC分析によるロケーション、レイアウトの作成

⑥誰もがわかる現場づくり

⑦物流部の発足

発注方式は一般的には、定期的にその都度、必要量を計算して発注する「定期発注方式」と、在庫量が事前に設定した水準(発注点)を切ったタイミングで一定量を発注する「定量発注方式」に区分される。しかしG社の場合はそのどちらでもなかった。

G社の商品は約90%が中国・タイ・ベトナムからの輸入品であり、商品単価が安価であるため、発注ロットを海上コンテナ単位にまとめていた。1日当たり平均6本の40フィートコンテナの入荷がある。当然ながらそれに見合った出荷もある。効率よく現場を回さなければとても捌けない量である。

このような場合、通常であれば、1日の平均出荷量×必要日数分の在庫量と、船便のリードタイムから逆算して発注点を決めるところだが、G社では(1)相場が安価な時にまとめて買う、(2)相場の変動がない場合は月末に発注する、という方法をとっていた。在庫が大きく膨らんだり、長期の欠品が発生する発生する原因であった。また、発注者はルール化されているわけではないが、アイテムごとに暗黙の担当割りがあり、営業が発注するアイテムと商品部が発注するアイテムが混在していた。

これを改め、発注業務を特定の担当者に集約し、発注点管理への移行を進めることにした。相場が安価な時に在庫を積み上げる戦略的な在庫投資はそのまま残すが、他はアイテムごとに発注点を決めて一定量を補充発注する定期発注方式を原則とする運用である。

これに付随して「②滞留在庫と死蔵在庫の定義」を行った。それまでG社では、“時々、動くアイテム”を滞留在庫、“まったく動かないアイテム”を死蔵在庫(デッドストック)と感覚的に呼んでいた。そこに明確な定義はなかった。

そこで商品特性に同業他社の情報などを加味して、滞留在庫は「3ヶ月以上、動かなかったもの」、死蔵在庫は「6ヶ月以上、動かなかったもの」と定義した。さらに毎月の月初に開催される営業会議に、前月の「滞留在庫リスト」と「死蔵在庫リスト」を提出し、アイテムごとの対応策を決めて同リストに記入することにした。

「③定期的な改廃の徹底」もアイテム数の適正化には是非とも必要な施策であった。そもそもG社は同業界の常識に照らすと、売り上げ規模に対してアイテム数が多過ぎた。適切な商品の改廃が行われていないことは明らかだった。

実際に調べてみたところ、「上位20%の品目で全体の80%の量を占める」というパレートの法則がG社には当てはまらず、上位10%で88%を占めていた。また営業部と商品部で在庫情報を共有するためのツールやルールも皆無だった。

これを受けて二つの手を打った。一つはアナログな方法ではあるが、月2回の商品会議の開催である。もうひとつはイントラネット上に商品の終売や在庫の引き上げ等の改廃情報をリアルタイムでアップして、関係者がいつでも確認できる専用ページを設置した。

この改廃情報を閲覧したスタッフは、自分の名前と対応策あるいは「了解」などと必ず一言コメントを記入するというルールにした。「知らなかった」という事態を避けるためである。しかし、この仕組みはまだ十分に定着していない。改廃情報を見ても何もコメントしないスタッフには個別に注意して利用を促している。

物流現場の運営は「団体競技」

「④棚卸業務の見直し」では、棚卸の頻度とやり方の双方を見直した。改善前まで、実棚卸しは決算および半期決算時の年2回だけだった。その方法も現場を稼働したまま、つまり入・出荷が行われている状態で、在庫の数をカウントしていた。それでは数が合うはずもない。

在庫差異が発生した場合は、現場の運営を任されているK社が弁済することになっていた。しかし、多額な負担ではなかったこと、“ながら”棚卸しをしなければならないほど人手不足が慢性化していたことから、これまで放置されていたのである。

そこで、まず「ステップ1」として、月1回の循環棚卸しを実施することにした。3ヶ月で全アイテムを一巡する。また実棚卸しは、入出荷作業を止めた状態で行うルールにした。この「ステップ1」を実施しても在庫差異が行数単位でカウントして0・01%にまで向上しない場合は、「ステップ2」に進み、実棚卸の頻度を2週間に1回に増やし、やはり3ヶ月(12週間)で全アイテムを完了させるという運用に切り換える考えだ。

また、K社の庫内スタッフには、棚卸しに使用するハンディターミナルの使い方に不慣れな人が散見できたことから、ハンディを販売したメーカーにお願いして講師役を関東拠点に派遣してもらい、正しいハンディの使い方をあらためて教えてもらった。

「⑤出荷頻度ABC分析によるロケーション、レイアウトの作成」は、本連載では定番テーマだが、K社の現場にもやはり不可欠であった。先入れ先出しが危惧されるほど、どこに何を置いているかが全く分からなかった。また保管場所が3棟に分散しているため、動線が著しく長くなっていた。

(1)ゾーニング、(2)ロケーション、(3)レイアウトの順に、ABC分析に基づいた商品配置図を作成した。幸いG社の出荷は全てケース単位だった。バラ(ピース)出荷用に軽量ラックを用意して、ロケーションを落し込む必要がなかった。それでも、通路の確保が出来ていなかったり、コンテナを段積みする「ネステナー」が不足しているなどの課題をクリアしなければならなかった。

「⑥誰もがわかる現場づくり」とは、具体的には(1)初心者、(2)高齢者、(3)外国人労働者の三つのタイプの作業員を想定して、作業方法を直感的に理解できるように、庫内の掲示物などの見せ方を工夫する取り組みである。具体的にはゾーンの「看板」、ロケーション番号の「プレート」、レイアウトの「マグネット」を作成し、現場情報の共有化を進めた。

物流現場の多くは、特定のスタッフに情報とノウハウが集中し、全てそのスタッフに聞かないと現場が回らないという状況にある。K社の現場にも、自分の仕事を他人に取られたくないというベテラン作業者がいた。しかし、そのためにそのベテランは休みが取れず、自身の仕事を増やしてしまい、結局は持て余して周囲に迷惑をかけてしまっていた。

物流は個人競技ではなく団体競技である。チームで仕事が出来るようにすることで全体の生産性が向上する。G社の関東拠点でも庫内作業員の多能工化を図るべく、繁閑期のスケジュールを念頭に置いて、訓練のタイミングを模索している。

「⑦物流部の発足」は、G社の売上規模と取扱い品目数、物量、そして物流課題の内容を考えれば必須である。物流専任者を設置して責任の所在を明確化しなければ、事態はさらに悪化していくことが自明である。G社はもはや物流を片手間にできるほどの中小零細ではないことを自覚する必要がある。

 

第188回 事例で学ぶ現場改善:『物流会社D社の拠点集約プロジェクト』

同じ荷主向けながら近隣の3カ所に分散していた倉庫を1カ所に集約することになった。横持ち輸送を解消できる。庫内作業員のやり繰りもしやすくなる。ただし、拠点の規模が大きくなれば適切な管理手法も違ってくる。オペレーションのみならず管理体制も再設計する必要がある。

 

向かいの土地が売りに出た

D社は関東に本社および運営基盤を置く年商30億円の物流会社である。創業者の現会長が輸配送をメーンに創業し、荷主からの要請を受けて営業倉庫事業に業務を拡大した。本社を中心とする半径50キロメートル圏内に6カ所、中京地区にも3カ所の営業所を展開している。

今回コンサルティングの対象となったのは中京地区で自動車部品を扱っている営業所であった。組み立てメーカーのサプライチェーンに組み込まれており、ミルクラン調達や生産ラインへのジャスト・イン・タイム納品を行っている。

その拠点として組み立て工場の近接地に、延べ床面積500坪のA棟と、延べ床600坪のB棟を構えていた。また、そこから車で約15分の場所にC棟として約300坪を賃借していた。しかし、C棟がA棟、B棟から離れているために非効率であった。

そんな折、A棟・B棟と道路を挟んだ向かい側の空き地が売りに出た。延べ床1500坪を確保できる。そこにA棟・B棟・C棟を集約しようという話になり、われわれ日本ロジファクトリー(NLF)にその支援が依頼されたのであった。

NLFとD社は従来から付き合いがある。新規受注に向けた提案書の作成サポート、トータル物流コストの算出など、これまでテーマごとに何度かコンサルティングを行っている。中京地区でも協同組合方式で物流効率化法に基づく高度化事業の認定を受けて拠点を立ち上げるというプロジェクトをサポートしたことがある。

その際に筆者は感じたことがあった。中京地区はD社の本社から距離がある。それもあって本社と現場とのコミュニケーションが皆無に近かった。現場は自分たちで改善しようという意欲を欠き、“他人任せ”の姿勢が目立った。そのことを念頭に置いて今回の拠点集約プロジェクトの実施事項として、D社側の窓口を務めているT専務には次の7項目を提示した。

①出荷頻度ABC分析によるロケーション・レイアウトの作成と作業動線の短縮

②六つの「ない」(持たせない/書かせない/歩かせない/待たせない/考えさせない/探させない)の徹底

③二つの「ない」(しゃがませない/かがませない)の追加

④庫内の通路幅の見直し

⑤レイバーコントロールの実践

⑥横持ち輸送の削減

⑦物流KPIの導入

拠点の集約先となる土地・建物は、D社で取得するのではなく土地の所有者に倉庫を建設してもらい、それを借りることにした。既存荷主の組み立てメーカー向け業務以外に展開ことが立地的に難しかったからだ。そのことを地主に伝えて、倉庫のスペックに対するD社からの要望を提出した。

ただし、貸し主としてはD社が将来その拠点から退去した後も、次のテナントを見つけやすい、使いやすい建物にしておく必要がある。そこで貸し主に新設する倉庫の躯体図面を2種類作成してもらい、D社の要望に合う方を選ぶことになった。

約1カ月後に図面が上がってきたが、二つの案はどちらも一長一短であった。A案は、高さは確保しているのだが奥行きがない。40フォートコンテナを直付けするにはギリギリの停車スペースであった。一方のB案は雨天の際にも作業が出来るように庇を長く取っているのだが、これが建ぺい率に含まれてしまうため、倉庫スペースの規模が小さくなってしまう。

いずれにせよ理想を100%叶える倉庫などはない。われわれとT専務は出入口を広く取っているA案が望ましいと判断し、それを貸し主に伝えて了承してもらった。こうして施設の仕様が大筋で決まった。それを元に倉庫全体の機能設計を表わした「ゾーニング図」を作成して、まずは「①出荷頻度ABC分析によるロケーション・レイアウトの作成と作業動線の短縮」に着手した。

既存のA棟・B棟・C棟の保管スペースには隙間が目立った。いわゆる空気を保管している状態のところが、あちこちに見られた。それがロケーション設計のミスによるものなのか、生産の遅れから欠品が発生しているのか、あるいはその両方なのか、一目見ただけでは理由は判然とはしなかった。

そこで改めて必要な保管スペースを確認することにした。商品マスターで各アイテムの外箱の体積を調べて、それに在庫日数を掛け合わせて計算する。ところがD社は商品マスターを持っていなかった。荷主に依頼して提供してもらう必要があった。そのことと合わせて、各アイテムの適正在庫量についても改めて荷主と協議の場を持つこととなった。

 

「アシストスーツ」を5台導入

「②の六つの『ない』(持たせない/書かせない/歩かせない/待たせない/考えさせない/探させない)の徹底」は、改善の定番である。とりわけD社の現場は高齢化が進んでいるため、作業生産性の向上を目的にするだけでなく、可視化を向上することで“考えさせない”“探させない”ようにして作業品質を向上することに留意する必要があった。「倍化運動」と称してロケーション番号や掲示物の文字の大きさを200%に拡大して高齢者にも分かりやすい表示にした。

さらに、“しゃがませない”“かがませない”という「③二つの『ない』」を追加して腰や身体への負担を軽減した。そのツールとして、荷物の持ち上げ・持ち下げ作業を支援する「アシストスーツ」を導入した。われわれNLFの支援先でアシストスーツを導入するのはD社で4社目となる。評判は上々で、これからさらに普及が進むだろう。

アシストスーツはS社製とU社製を検討した。両者の基本的な構造は大きく変わらないが、装着時の調整方法やデータ連携による付加価値創出などの設定がいくらか違う。性能や品質面ではS社製が優れていたが、システム費用がかかり、規模の小さなD社にとっては高価であった。そこで使い勝手の良さとコスト面からU社製を採用して5台を導入した。

またバケットの仕分け作業用に、膝上の高さの作業台を置くことにした。従来は床に直置きしたパレットからバケットを取り出して仕分けをしていた。腰の負担を軽減するため作業台で高さを確保して、しゃがまずに済むようにした。

「④庫内の通路幅の見直し」では、既存倉庫の通路幅が必要以上に広く取られていたので新倉庫では適切な幅に設定し直した。現場の担当者によると、過去にカウンター式フォークを使用していたことがあり、それに合わせて幅をとっていたが、リーチ式に統一してからは縮小したという。しかし、実際に測ってみるとメーン通路は3150ミリメートルもあった。

そこで作業の安全性への配慮も踏まえリーチイン(ツメを車体側に引き寄せた状態)の走行を徹底することをルール化し、またD社のリフトマンのスキルが高いことも考慮して新倉庫の通路幅を2850ミリメートルに設定した。その結果、200パレット分の保管スペースを生み出すことができた。

「⑤レイバーコントロールの実践」では、既存施設のホワイトボードを見ると、過去にそれらしきことを試みた痕跡を確認できたが、実態として機能していなかった。拠点が3カ所に分かれている状態では、作業スペース、取扱量、スタッフ数の制約から効果を出すのは難しかったであろう。しかし、拠点を集約すればやりやすくなる。

レイバーコントロールに限らず、一般に拠点の規模が大きくなれば、それに伴い適切な運営管理の方法も変化する。労働管理、安全管理、設備保守、生産性や品質の維持・向上策、マテハンの使い方、荷主との取り決め事項など、オペレーションとマネジメントを再設計しなければいけない。しかしながら、そのことを理解している物流管理者は少ない。教えられてもいないのが実情である。

 

KPI管理は小さく始める

「⑥横持ち輸送の削減」は拠点を集約すれば必然的に実現する。今回のケースでは、A棟・B棟・C棟に分散している部品を荷合わせするための横持ち輸送に従来投入していた、10トン増トン車1台と4トン車2台の計3台分のコストが不要になった。

「⑦物流KPIの導入」は可視化、生産性の向上、品質の向上など広範囲にわたる効果を期待できる施策である。ただし、あれもこれもと、はじめから多くのKPIを採用してしまうと往々にして長続きしない。小さくはじめて大きく育てるのが定着のポイントである。

D社ではレイバーコントロールで算出した人時生産性(MH)をベースに、作業生産性、作業品質、イレギュラーの3点を最重点課題と定めて、それぞれKPIを設定した。作業生産性は「ピッキング」と「梱包(仕分け含む)」、作業品質は「誤出荷」と「在庫差異」、イレギュラーは「時間外出荷」の計五つにKPIを絞り込んだ。

こうしてD社の拠点集約プロジェクトは終了した。現時点で新拠点の稼働から5カ月が経過したが今までのところ運営は順調だ。コストはもちろん現場の労働環境もかなり改善された。

さて、今回の案件で筆者が痛感したのはデータ精度の重要性である。荷主から入手した商品マスターもしかり。マスターに登録された体積に梱包の変更などが反映されていないものがあったため、机上で計算した保管スペースが実態と合わずにロケーション・レイアウトを作り直さざるを得なくなった。

現場のシステム化や自動化が進むほど、データの精度が与える影響は大きくなる。そこでD社では拠点集約を機に棚卸しの方法を改めた。従来は月1回の一斉棚卸しだった。それを毎日の循環棚卸に変更した。1カ月当たりの稼働日数22日で全品目をカバーする。在庫精度の向上が狙いである。

 

《特別編》事例で学ぶ現場改善:『〈センター長〉 監督兼選手から抜け出す方法』

物流センター長の多くが本来の業務から離れて庫内作業に駆り出されている。連日の残業に加えて繁忙期には休日出勤を余儀なくされている。このような状態では誰もセンター長になりたいとは思わない。荷主は現場の管理能力を失ってしまう。物流企業は事業の存続さえ危うくなる。

 

そもそもセンター長とは何者か

物流業は所長・センター長の能力で90%が決まってしまう。つまり、物流業とは〝所長産業〟あるいは〝センター長産業〟なのだ。筆者はかねてからそう指摘してきた。本連載でも「できるセンター長の作り方」(2007年4月号)と題して、センター長の育成について解説したことがある。しかし、既に一昔前の記事になるので、ここでおさらいしておこう。

通常、センター長は、①労務管理、②運行管理、そして③クレーム対応の三つを主な業務とする。このうち最大の役割を一つ選ぶとすれば、やはり労務管理、人のやり繰りに尽きる。そして、人のやり繰りにはコミュニケーション能力という管理者としての資質が求められる。

できるセンター長は一日中、机に座っていないものだ。常に現場を回って一声掛け、スタッフとのコミュニケーションをとっている。管理者として同じことを“10回言い続けられるか”が問われる。昼食もパートに交じって同じテーブルを囲む。繁忙期で現場に無理をさせた時には自腹で缶ジュースを差し入れる。そうした小さな気配りで、現場の空気が違ってくる。駄目なセンター長には、それができない。

センター長のタイプは大きく二つに分かれる。中小企業の場合、センター長は、ほとんどが現場の叩き上げだ。作業スタッフやドライバーを経験したベテランが、班長からセンター長へと昇格する。一方、荷主企業や中堅以上の物流企業では、センター長が事務系管理職の仕事として位置付けられている。いずれも一長一短がある。

前者の現業系のセンター長では、オーバースペックが往々にして問題になる。彼らの場合は人手不足以前に繁忙時になると現場に入ってしまう傾向があり、管理が疎かになる。“プレイングマネジャー”は半ばセンター長の代名詞である。もともと中小の現場スタッフには、デスク業務や管理を苦手とする人が少なくない。それが嫌で物流現場の職に就いたのに、いつのまにかセンター長に祭り上げられ、計数管理などの苦手な仕事を強いられる。結果として会社の期待に応えられない。

一方、事務職系のセンター長は、いずれ本社に戻るという考えが常に頭から離れない。当然、本社には良い報告をしたい。しかし現場を敵に回せば、オペレーションが立ち行かなくなる。そもそも高学歴の事務系は現場スタッフとのコミュニケーションを苦手とする場合が多い。結果として現場と本社の板挟みに遭ってしまう。

同じ会社内のセンター長でも、各人の能力には当然バラツキがある。しかし、それ以上に大きいのが会社間の差、会社ごとのセンター長の能力レベルの差だ。これは、その会社におけるセンター長の「①採用」「②教育」「③キャリアプラン」の違いによるものだ。

まず「①採用」について。現状では外部からの登用は容易ではない。対策としては遠回りに見えても社員研修が有効だ。研修の狙いは教育だけではない。社内の人材を発掘することも研修によって得られる大きな効用の一つだ。資質のある人材であれば、30歳以下の若手でもセンター長に登用すべきだ。ただし、若手の抜擢は経営層の援護が必須である。任せきりでは、せっかくの人材を年長の社員やベテランのパートに潰されてしまう恐れがある。

これと並行して、センター長を現場のスターにする必要がある。センター長になったら予算管理やクレーム処理など苦労ばかりが増え、休日も見返りも少ないということでは、手を挙げる者などいなくて当然だ。班長や配車係などのセンター長候補者に、昇進したいというモチベーションを持たせる必要がある。

必ずしも給料や待遇だけの問題ではない。金銭的インセンティブには限界がある。それよりも優れた仕事を表彰するなど、職業人としての誇りや満足感に訴えかける。現場のQC活動も同様だ。小遣い程度の賞金を出すより、額縁に入れた賞状やトロフィーの方がよほど効果的だ。賞状やトロフィーを自宅に持ち帰れば、家族に仕事を理解してもらう良いきっかけにもなる。

「②教育」では、人事ローテーションが鍵になる。駄目なセンター長は自分のセンターのことしか知らない。井の中の蛙なのだ。板前の修業と同じように、センター長もさまざまな現場を経験することで初めて引き出しが増えていく。実際、人事異動でいろいろな現場を経験させている会社のセンター長は総じてレベルが高い。それに対して、センター長の改善能力や意識レベルが低い会社は、センターの横展開を経験させていない。社外はもちろん、同じ会社内であっても他のセンターのことを知らないのである。

三つ目が「③キャリアプラン」だ。多くの会社でセンター長は〝上がり〟のポストになってしまっている。センター長として定年を迎えるケースが大半だ。定年間際ともなれば、現場との摩擦を生じる恐れのある改善活動など進めようとするはずがない。それどころかセンター長自身が改革のブレーキにもなってしまうことさえ珍しくない。

センター長を上がりのポストとするのではなく、センター長から本部スタッフに昇格する道を示しておかなければならない。本人がそれを望むかどうかは別だ。現場好きのセンター長はむしろ望まないだろう。その場合には、現場作業の専門会社を子会社として設置するという手もある。子会社経営幹部という道を開くのだ。センター長の有効なキャリアプラン作りを、重要な経営戦略と位置付けて取り組む必要がある。

 

残業なし・年間休日120日を目指せ

優秀なセンター長は「作業」と「業務」の違いを理解している。現場スタッフと管理者では持っている「時計」が違う。作業はその日の荷物を処理すれば終わる。一方、業務は、与えられたミッションをクリアするために、1カ月後、3カ月後、6カ月後に何をしなければならないのか、時間軸を持って仕事に当たる。

センター長が自分の力を発揮できる環境を整備する必要がある。そのためにセンター長をプレイングマネジャーから卒業させなければならない。いわばセンター長の働き方改革だ。今回はそのヒントを以下に紹介しよう。

センター長の多くはほぼ毎日の残業に加え、年間休日数は100日程度、繁忙期には休日出勤も強いられるという過酷な労働環境に置かれている。これをまずは改善しなければならない。残業なし、年間休日120日を実現することが目標である。

そのためにはセンター長の権限と業務の一部を部下に移管する必要がある。しかし、そうしたセンターでは部下もまたプレイイングマネジャーである。単に移管するだけでは今度は部下が過剰労働になってしまう。

そもそも一般的な職務基準書に書かれてある管理職としての業務を全て完璧にこなすことは、実際には不可能である。働き方改革の実践は職務基準書の見直しが第一歩である。業務項目を減らすのではなく、業務の一部を下位職に移管して役割分担を明確にする。当然ながら、それはセンター長を支える管理職予備軍のスキルアップ、レベルアップが前提である。従って教育・訓練の実施計画を折り込んだキャリアパスプランが重要になってくる。

 

センター長の業務を標準化する

大手量販店のイトーヨーカ堂は、店長の業務を徹底して標準化している。いつどこに配属されても即日業務が行えるようになっている。そのために机の中の備品や書類ファイリングのレイアウトまで統一している。一足跳びにそのレベルに到達するのは難しくても、3人のセンター長の業務を標準化して、ルールの統一を図れば、休日は取りやすくなる。

繁忙期に本社から応援を送る際にも標準化がモノを言う。現場を離れてしばらく経っているとか、そもそも現場のことがよく分からないメンバーが送られてきて結局、戦力にならなかったという、よくある失敗を回避できる。

現場作業自体の標準化ももちろん重要だ。新人、高齢者、外国人労働者など想定して、“誰もがわかる現場づくり”を徹底する。全体の作業フロー図、作業マニュアル、どこに何があるのか一目で分かるロケーション番号の表示、センター内掲示物のビジュアル化などを準備しておけば、応援に来たスタッフにすぐに活躍してもらえる。

そこまでやった上で、それでもやむを得ない残業や長時間労働が発生した場合には、超過労働時間を近日中に解消させる。残業時間を週単位、月単位でまとめて管理している現場を多く見かけるが、超過時間の発生から消化までの期間が長くなるほど、消化するのが難しくなってしまう。

センター長にフレックスタイム制を導入するのも一つのアイデアだ。ドライバーの時差出勤、センター作業の夜勤交替が定着しているのとは裏腹に、物流業の事務職、管理職は一斉始業が多い。果たして必要なことだろうか。朝礼は全員がそろった時点で行えば十分だ。レイバーコントロール上はむしろ昼礼の方が効果的である。

センター長の業務負荷は身近なツールを利用することでも軽減できる。センター内の部下や現場スタッフとのコミュニケーションは直接、顔を合わせることが大事だが、本社や営業、顧客とのやり取りは電話よりも、できる限りメールを使うべきだ。電話連絡は余計な雑談に案外時間を割いているものだ。顧客からの緊急出荷要請なども、営業を経由させて本当に対応すべきかフィルターを掛ける。

一方、センター長は業務終了後も携帯電話が手放せない。入荷・出荷車両のトラブルや事故、荷主の製・商品のリコールによる緊急出荷停止などが発生するためである。しかし、パソコンは社外持ち出し禁止にする。機密保持、顧客データ流出防止の意味合いもあるが、持ち帰り残業を抑制するために物流業界以外でも広く実践されている方法である。

センターにTV会議システムを導入すれば本社や顧客に訪問する回数を削減できる。昨今のTV会議システムの性能は著しく向上している。しかし、それを使いこなせていない会社が多い。事前に簡単なテストを行うだけ、システム操作を担当するスタッフが司会者と2~3分打ち合わせして会議の大まかな流れを頭に入れておくだけでも、TV会議の運用は格段にスムーズになる。

 

物流サービス条件を見直す

イレギュラー業務のゼロ化や土日出荷の中止、納品回数の削減など、物流サービスの見直しにも乗り出すべきだろう。ドライバーや庫内作業員だけでなく、センター長や現場のマネジャーの労働環境を大きく改善できる。今こそそのチャンスである。

イレギュラー業務には時間外出荷、送り先の変更、出荷内容の変更などがあるが、いずれも残業時間を増大させる要因であり、またコストアップ要因にもなっている。しかもイレギュラー業務の大半は現場では判断がつかないため、センター長に判断を仰ぐことになる。その影響はセンター全体に波及する。

土日休日の出荷も小売業、外食産業向けではしばしば発生している。本来であれば小売業、外食産業は販売に徹すべき日である。荷受けしている暇などないはずだ。それが発生してしまうのは多くは需要予測の精度が原因である。多少のショック療法にはなるが、休日の出荷停止をルール化してしまえば、否応なく改善が進み、休日納品は不要になる。少量の納品先であれば月・水・金などの隔日納品にまで踏み込める。

他にもセンター長の働き方を変えるためにできることはいくらでもある。それは今日の避けて通れない課題である。なぜなら今のままでは部下たちはセンター長になりたいと思わないからだ。荷主企業であれば物流管理レベルが底なしに低下していく。“センター長産業”たる物流業にとっては命取りにもなり得る問題である。

 

《特別編》事例で学ぶ現場改善:『コンペは効力を失い3PLは終わった』

元請けが必要な車両台数を確保できず、ギブアップするケースが増えている。ボリュームディスカウントを狙った一括委託が逆作用を起こし、全拠点一斉値上げを突き付けられる荷主も出てきた。しかし、現在の環境で物流コンペを開催すれば、むしろ返り討ちにあってしまう。アウトソーシング戦略の再考が必要だ。            (聞き手・大矢昌浩)

 

コンペは“寝た子を起こす”

──物流業が売り手市場から買い手市場に転じたことで、コンペの在り方があらためて問い直されています。

 「今さらですが『コンペ』というのは、英語の『コンペティション』ですから直訳すれば、競争とかスポーツの競技会という意味ですよね。物流コンペは、運送会社を競技者として戦わせるわけです。それがこれまで成立してきたのは、物流サービスの供給が、量的にも質的にも十分にあったからです。今はそんな環境にはありません。実際、私の周辺の荷主は物流コンペを敬遠するようになっています」

──監査が厳しい外資系の荷主などは定期的にコンペを開催することをルール化していると聞きます。

 「今でもフォワーダーのコンペであれば有効です。もともとフォワーディングは人手不足にほとんど影響を受けない取り扱いビジネスですから。国別に委託していたのをグローバルに1社にまとめれば、ボリュームディスカウントが効いて30~40%下がることもある。3PLでも実コストを、マージンも含めて全てガラス張りにする『オープンブック方式』で契約するならコンペをやるのもありかもしれません。しかし、それ以外はどうでしょう。外資系だって環境が変われば、やり方を改めるのではないでしょうか」

──コンペには現在支払っている料金が妥当であることを確認したり、既存のパートナーを牽制したりする効果もあります。

 「今コンペを開催すれば、逆に“寝た子を起こす”ことになります。『ありがとうございます。ようやく値上げを認めてくれるんですか。わざわざそんな場を作っていただけるなんて』と協力会社を喜ばせた挙げ句、向こうは『その値段で合わなければウチは撤退しますので』というくらいのつもりで、平気で脅しを掛けてきます」

──既存のパートナーだけでは車両を確保できない、極端な値上げを言い渡されたとなれば新たな委託先を探すしかありません。

 「確かにこのご時世なので、協力会社がギブアップしたので慌ててコンペをやるというパターンはあります。しかし、その場合でも相見積もりレベルのことはやったとしても、一本釣りで委託先を見つけていくのが賢明でしょう。周囲の物流会社はその荷主がどこにギブアップされたのか知っています。いくらでやっていたのかも恐らくバレている。それを頭に入れて強気の見積もりを出してきます」

──相見積もりとコンペの違いは?

 「応札する会社数の違いです。少なくとも4~5社から選ぶということでないとコンペとは言えません。先日、全国規模の荷主がコンペをやるため候補企業に参加を打診したところ、その荷主の仕事はドライバーの作業負荷が大きいこともあって、2社しか応じてくれなかった。これではコンペにならないと、われわれ日本ロジファクトリー(NLF)に応札企業を紹介して欲しいとオファーが来ました。少し前までは年商300億~500億円クラスの荷主がコンペを開催すれば、それなりに手が上がりました。しかし今は1千億円クラス以上でないと、コンペをやりきれないという印象です」

 「面白い傾向も出ています。物流コンペをやっても1社に決めるのではなく、エリアを分ける、あるいは業務を分割して委託するケースが最近増えています。コンペで白黒はっきりさせるのではなく、それぞれのいいところを取る。繁忙期にクルマが足りないという状況がずっと続いていることで学習したのでしょう。1社依存では危ない。リスクヘッジです」

──物流会社を探すことが、そこまで難しいものですか。

 「例えば、NLFは昨年あるメーカーと、成功報酬型で運送会社を紹介する契約を結びました。そのメーカーの元請けが繁忙期の傭車に対応できなかったことで、われわれに泣きついてきた。NLFが紹介した運送会社はその荷主と直接契約を結ぶことになるので、元請けは自分たちの地位が脅かされる。だから彼らも一生懸命探したのだけれど結局見つからなかった」

──運賃が安いからでは?

 「値段が合わないという問題だけではないんです。例えば関東~関西の幹線輸送でも、ドライバーは実際には運送会社の営業所から出発して出荷場所を経由して着地に向かいます。しかも着地側の2カ所で降ろしてから現地の営業所まで戻るということにでもなると、1日の拘束時間の上限の13時間労働をオーバーしてしまいます。ドライバーの拘束時間には集荷場所と運送会社の営業所との距離も絡んでくるため、営業所から遠い荷主に対しては『うちはできません』となってしまう」

──その荷主の新たな委託先は見つかったのですか?

 「今のところ2社との契約が成立しました。そのうち1社は東京~大阪の10トン車の片道運賃に7万5千円の見積もりを出してきた。大手荷主だったので恐らく口座を作りたかったのでしょう。現在の相場は10万円を少し切る程度なのでさすがに安過ぎる。そこで、その荷主の物流部長は『その値段では長く続けてもらえないと思うので、値段は他の会社さんと同レベルで結構です』と見積もりに上乗せした運賃を支払うことにしました。それだけ欠車に対する危機感が高まっている」

 

3PLの空洞化

──運送だけでなく3PLのコンペも同じですか。

 「輸送のコンペはまだ環境が変わり、供給が十分な状態に戻ることがあるなら、また復活するかもしれません。しかし、3PLはこれでいったん終わるのではないか、3PLという業態自体が現在の環境に合わなくなった、とさえ思っています。というのも3PLは一括提案が特徴なわけですが、それが今は一括値上げを招いている」

 「ある荷主は数年前にボリュームディスカウントを狙って国内4センターの配送を中堅3PLに集約しました。それが裏目に出て昨年その荷主は全国4センターで一律のパーセンテージの一斉値上げを要請されました。突っぱねれば物流が止まってしまう恐れがあるので、言われた通り払うほかなかった。しかし、それをきっかけにその荷主はその3PLとの契約を打ち切ることを決意して、今は拠点ごとに配送パートナー選びを進めています」

──3PLのコストメリットがなくなったということですか。

 「そもそも3PLは配送や庫内業務の再委託率が高い。大手や有名どころほど、その傾向があります。しかも、実態としては丸投げで、彼ら自身が再委託先から値上げ要請を強く受けているためコストが下がらない。それでいて管理費は高い。大手3PLともなるとトータルコストの25%を占めていることもある。利益率の設定も高い」

──通常だと管理費はどれくらい?

 「パパママの零細運送会社だと3%くらい。広域地場で12~15%。中堅で12%~18%。大手は20%前後から25%くらいまでといったところです。管理費の大半は管理者の人件費です。しかし、実際には管理費にカウントされているマネジャーが1人で複数の拠点をカバーしていて、現場にはほとんど顔を見せなかったりする。それでふたを開けてみたら丸投げでは、さすがに荷主も浮かばれません」

 「その一方で大手は挨拶や契約の席には担当役員の他、本社営業、顧客窓口、現場責任者、システム担当などスタッフをぞろぞろ連れてくる。無駄に人件費をかけていると同時に、組織が分かれているので意思決定に時間がかかる。荷主の要請に柔軟に対応できない。大手3PLの中には融通が利かないことが有名になって荷主離れを起こしているところもあります」

 「そもそも、なぜ3PLが荷主に求められたのか。一括請負いとボリュームディスカウントの他に、以前はシステム力の優位性があったと思います。しかし、今はパッケージを利用したり、荷主が自分でWMSや在庫管理システムを構築できるようになってきた。3PLに頼らなくても回せるようになりました。つまり現在の3PLは、再委託先からは突き上げられ、クルマをかき集める力やまとめあげる力は希薄になり、システム開発力の優位性もなくなった。空っぽなんです。4PL化など新しい業態革新が必要です」

──あるいは先祖返りするのでは?

 「そうかもしれません」

──アウトソーシングが進んだ結果として荷主の物流管理能力は衰えてしまいました。内製化に転換するにも物流管理者がいません。

 「そこは頭の痛いところです。それでも卸の中には、いざとなったら自分たちでトラックを購入して走らせるくらいのつもりで物流の再構築に取り組むところも出て来ています。物流を重要な機能と位置付けるのであれば、あらためて物流管理機能を取り戻すほかありません」

 

第187回 事例で学ぶ現場改善:『中古車販売D社の在庫適正化プロジェクト』

店舗数の増加に伴い横持ち輸送コストが上昇している。在庫の長期滞留による評価損も目立ってきた。経験の勘に頼った〝どんぶり勘定〟から抜け出し、合理的な在庫管理の仕組みを構築する必要があった。在庫管理部の新設を皮切りに2年以上にわたる息の長いプロジェクトが始まった。

 

中古ビジネスは仕入れが9割

D社は年商約400億の中古車販売会社だ。東日本を中心に38店舗を展開している。仕入先は一般ユーザーからの下取り、現車オークション、ネットオークションなど。販売先は一般向けの店舗販売と中小中古車販売会社が中心で、業務用車両も取り扱っている。

D社側のプロジェクトリーダーで、われわれ日本ロジファクトリー(NLF)との窓口を務めたのは、2代目社長に就任予定のT取締役であった。その説明によると、D社は車両専門のトレーラー会社に商品(中古車)の輸送を委託しているが、店舗数の増加と共に横持ち輸送コストが増えているという。

在庫管理にも課題を抱えている。店舗は平均1千坪の広さを持つが、常に在庫が満杯の状態であり、長期の売れ残りも発生して最近は在庫の評価損が目立つようになってきた。D社には車両の移送を担当するベテラン社員は在籍しているが、物流のスペシャリストは不在であった。売り上げの拡大と共に“物流”の視点で改革を行わなければならないとの問題意識からわれわれに声が掛かった。

自動車に限らず、中古ビジネスの最重要ポイントは仕入れだ。その品はいくらなら売れるのか。それをいくらで仕入れるのか。中古車の場合であれば、それを国内で売るのか、海外に輸出するのか。どの店舗のどの営業マンがその商品をさばけそうなのか。現車を見て即座に意思決定しなければならない。その判断で利益のほとんど、9割以上が決まってしまう。

T取締役以下、D社の5人のプロジェクトメンバーとわれわれNLFのスタッフは、そのような共通認識の下、D社が解決すべき物流課題を次の10項目に整理した。そこからプロジェクトチームとわれわれの約2年5カ月にわたる取り組みが始まった。

①商品マスターの整備

②QRコードによる個体管理

③在庫管理部の発足

④不動商品対応ルールの設定

⑤物流KPIの設定

⑥棚卸し頻度の見直し

⑦物流センターの設置

⑧出荷頻度ABC分析によるロケーション、レイアウトの作成

⑨配車センターの発足

⑩共同輸送の推進

「①商品マスターの整備」は最初に着手すべき課題だった。従来から当然ながら管理台帳は存在していたが、物流管理に必要な仕入日、入荷日、出荷日、販売日の「日付管理」に不備があった。いくらで仕入れた商品をいくらで売ったのかも明確になっていない。そのために純利益どころか粗利さえもはっきりとしない“どんぶり勘定”に陥っていた。

マスターの管理を各店舗に任せているために、マスターの登録やデータの更新、廃番管理などのメンテナンスがおろそかになっていた。そこで後述する在庫管理部を新設して、商品マスターを集中管理することにした。リアルタイムでマスターをメンテナンスして、クラウドシステムを介して全社でデータを共有する体制を整えた。

さらに、整備したマスター情報をベースに「②QRコードによる個体管理」を実施した。目視と台帳が頼りでは収益管理は困難だ。優秀な店長であれば経験と勘から店舗全体の利益は残せるかもしれない。しかし、車両1台単位の損益までは把握できない。在庫管理自体に課題を抱えていたこともあり、QRコードの導入に踏み切った。

QRコードシステムの開発から稼働まではおおよそ12カ月を要した。しかし、今振り返ってみても、これは重要かつ効果の大きい施策であった。物流センターの出荷時と店舗の入荷時に各車両のQRコードをスキャンするようにしたことで、社内における在庫の流れが明確になった。その結果、例えば店舗の営業マンが「これは売れる」と判断して在庫を抱え込んだ準人気車が、実際には売りさばけずに、A店舗→物流センター→B店舗と渡り歩くさまが明らかになった。

 

在庫管理部を新設し脱どんぶり勘定

「③在庫管理部」は統括責任者の部長を含めた6人体制で発足した。部長は5人の部員たちを車両タイプ別に振り分け、普通車、小型車、軽自動車、ミニバン・ワンボックス、業務用車両(営業用ワゴンなど)をそれぞれ専門で担当させた。

その役割は先ほどの商品マスターを集中管理すること、そして商品部を仕入れ業務に特化させることであった。商品部のスタッフにはバイヤーに徹してもらい、良い車の取り逃がしをなくそうという狙いである。そのために商品を仕入れて以降の全ての業務、具体的には在庫管理、稼働在庫と不動在庫の可視化、店舗とのやりとり、アナウンスなどが在庫管理部に求められた。

在庫の陳腐化を防ぐため、新たに「④不動商品対応ルール」を設定した。それまでは店舗が在庫を抱え込んで長期間にわたり売れ残っていても、他の在庫で売り上げをカバーできていれば良しとされていた。それを改めるために、在庫の日付管理を導入した。7日間にわたり動いていない在庫を「不動在庫リスト」にリストアップして、全社に一斉に送信する。

その在庫が欲しい店舗もしくは営業マンは、24時間以内に在庫管理部にフィードバックする。複数の手が上がった場合には、在庫管理部が店舗もしくはその営業マンの実績から判断して売れる可能性の高いところに割り当てる。誰も手を挙げなかった在庫はオークションに流すか、輸出するかを判断する。

これによってD社全体の在庫回転率は1カ月当たり0・9回から2・1回に大きく改善した。長期滞留で評価額が下がり、販売しても経費を吸収できない赤字在庫も大幅に減少した。さらに現在、在庫管理部はエリア別の需要予測に着手している。各店舗に特有の売れ方を周辺の駐車場等のリサーチによって分析している。これにより在庫回転率を2・5回/月まで向上することが目標だ。

「⑤物流KPIの設定」は、まずは“どんぶり勘定”の是正から着手する必要があった。具体的には、「販売車両1台当たりの粗利率」と「販売車両1台当たりトータル物流コスト」を算定して1台単位の原価を把握できるようにした。これに約4カ月を要した。

次のステップ2では6カ月をかけて、「在庫差異率」と「作業生産性」を算出した。在庫差異率は、店舗在庫と物流センター在庫についてそれぞれ金額だけでなく差異が発生した品目数も数値化した。また、作業生産性は物流センターにおける「平均車両降ろし時間」と「平均車両積み込み時間」、店舗における「平均車両降ろし時間」を測定した。

最後のステップ3では「作業品質」の指標に「商品破損率」を設定して、4カ月かけてその数値を算定した。各指標を段階を踏んで開発したことで、関係者の理解も進み、問題なくKPIが機能し始めた。営業会議や物流連絡会議において効果的な施策が打ち出されるようになった。

「⑥棚卸し頻度の見直し」では、それまで決算月の年1度だけだったのを、月1回の循環棚卸しに変更して、全品目を3カ月ごとに実地棚卸しするようにした。これにより、ノルマ達成のために店長が月末に自分で車両を買い込んで翌月に売却したり、キャンセル車を営業マンが私物化したりなどの不正行為に歯止めが掛かった。

これら原価計算や棚卸しの精緻化は、営業にとってはノルマ達成の抜け道がなくなることを意味するため、実施に対しては反発もあった。しかし、そうしたカラクリがあることは、T取締役をはじめ経営層は以前から感づいて、問題視もしていたため、半ば強引に推し進めることとなった。

「⑦物流センターの設置」は大掛かりな施策であった。従来、D社では一般ユーザーから中古車を下取りした後の初期洗車、社内清掃、加工修理、部品交換などの流通加工を各店舗で実施していた。それが店舗スタッフの大きな負担になっていた。

そこで各地に整備工場を併設した物流センターを立ち上げることにした。洗車・清掃だけでなく、修理、板金、塗装、車検などにも対応できる、いわゆるPDC(プロセス・ディストリビューション・センター)である。既に千葉、仙台、小田原で設置が完了しており、今後、新潟、群馬への設置を予定している。

物流センターといっても実際には約2千坪強の敷地に金網フェンスが張られた野積み・平置きの駐車場だが、そこにオークションで仕入れた車と店舗に持ち込まれた下取り車で当該店舗が不要とした車を集約することで、店舗の作業負担が軽減されてスペースに余裕も生まれる。

これらの物流センターでは「⑧出荷頻度ABC分析に基づくロケーション、レイアウトの作成」を行っている。車種別の出荷頻度のABC分析に基づいて、Aランクの人気車は出しやすいゾーンに、積み降ろし頻度の少ないB、Cランク車は奥側のスペースに保管することで、トレーラーへの積み降ろし時間短縮を図っている。

ゾーン表示には道路標識スタイルを採用し、表示柱を打ち込んだ。先入れ先出し、後入れ先出しのどちらにも対応できるように、外枠フェンス側に1台分の通路幅を確保したアイランド型のレイアウトにした。

なおABC分析の結果、車種別の出荷頻度はエリアによってかなりの違いがあることが分かった。Aランクはどの地域もほとんど変わりないのだが、Bランクには若い主婦層が多いエリアは軽自動車、自営業者が多いエリアは業務用車両やミニバン・ワンボックスが入った。

 

メーカーの物流子会社と共同化

「⑨配車センターの発足」では、大手自動車メーカーの物流子会社E社との共同プロジェクトを組織した。E社が首都圏で車両輸送トレーラーの配車センターを立ち上げるという話を耳にしたからだ。そこにD社の配車センター機能を統合しようというアイデアだった。ただし、同じ車両輸送でも、新車と中古車では流通ルートが異なる。うまく相いれるかが懸念された。

ここでも商品マスターの整備に始まった在庫管理機能の強化と、物流センターへの在庫集約が有効に働いた。どの在庫をどのセンターからどの店舗に、何台移送するのか、精度の高い求車情報をE社の配車システムに提供することができた。これがマッチングに有効だった。

そのことが物流子会社E社の新車をベースカーゴとする「⑩共同輸送の推進」にもつながった。D社の首都圏エリアの店舗および千葉と小田原、新設予定の群馬の物流センターを対象に、新車輸送の帰り便とメーカー工場の閑散時に物流子会社E社の車両を利用することになった。

これにより、各店舗の入荷時間にはバラツキが出るが、「事前出荷情報(ASN)」に基づいて店舗側で勤務シフトの早番・遅番を調整することで対応することにした。結果としてD社は全輸送量の22%に共配および帰り便を活用できるようになり、横持ち輸送のゼロ化も寄与して運賃コストは大幅に圧縮された。

共配実施前の納品時間を厳守しなければならないことが制約になって、共同化が不成立に終わるケースが一般に多く見受けられる。しかし、D社のような社内の拠点間輸送であれば柔軟な対応がとりやすい。さらに今後は荷受け側スタッフの立ち会いが必要な“有人納品”から、夜間納品や軒下納品などの“無人納品”が増えてくるはずだ。その結果、共配の成立する確率は高まっていくと著者はみている。

D社の改革はその後も続いている。現在は事務センターの設置準備を進めている。店舗の営業マンを事務作業から解放して、販売活動に集中できるようにすることが狙いである。

 

第186回 事例で学ぶ現場改善:『物流会社F社のセンター運営事業参入』

異業種から転じて家業の零細運送会社を継いだ若き2代目経営者が順調に事業を拡大させている。次はセンター運営事業に本格的に進出するという。既に新拠点の建設工事も始まっている。久しぶりに同社を訪れた筆者はその成長を頼もしく感じた。気概に満ちた経営者にとっては、物流危機を迎えた今こそチャンスに違いない。

 

事業継承に成功して事業を拡大

F社は西関東に本社を置く、年商約20億円の物流企業である。10トン車、4トン車を中心に車両約100台を所有し、物流センターを4カ所構えている。4カ所のうち2カ所は賃貸、残り2カ所は自社所有である。

F社にはこれまでに計3回のコンサルティングを行っている。初回は15年近く前のこと。F社の創業者の先代社長から実子のM社長が経営を引き継ぐことになった。しかし、それまでM社長は全くの異業種で営業マンとして働いていた。「物流業については右も左も分からない。一から勉強したい」とのことだった。

当時のF社はプレハブ建ての事務所が本社で、年商は3億円にも達していなかった。おまけに先代はコンサル嫌いで、われわれ日本ロジファクトリー(NLF)に対しても懐疑的だった。筆者とM社長の2人で何とか先代を説得して、半ば強引にプロジェクトを進めた。

2回目は提案営業がテーマだった。有望な荷主に提案する機会を得たが、提案書をどうやって作成すればいいのか、実際に受注した場合には情報システムをどうするべきか等を知りたいということであった。その頃には本社の他に営業所を2カ所設けて、保有車両は50台を超えていた。

そして3回目となる今回、M社長は「いよいよ本格的なセンター運営事業に参入したい。その“いろは”を指導してほしい」と筆者に依頼した。既に延べ床面積1200坪の新拠点の建設に入っているという。その立ち上げ準備から実稼働までをサポートすることが、われわれNLFの役割であった。

実際に新拠点を見学してみると筆者の想像をはるかに超えた立派な物流センターであった。まだ一部の工事が完了しておらず、建設資材が置かれている状態だったが、既に荷主も確保していた。今は新センターから半径10キロメートル圏に四つの外部倉庫を借りて対応しているという。新センターが完成したら、そのうち1ヶ所だけ残して3カ所分を新センターに集約する計画だ。

他の外部倉庫も全て視察した。われわれにとって幸いだったのは、センターがまだ建設中であり、大きな変更は難しいが、細部の修正は可能だったことだ。建物の外回りに関して、少なくとも以下のような整備、手直しが必要であった。

・   棟番号、荷降ろし場、進行方向、徐行速度等の表示物・掲示物を設置する

・   センター壁面にトラックやリフト接触を防止するための防護柵を設置する

・   センター外周の一方通行と相互通行エリアを決定する

・   来客用駐車スペースと社員駐車場スペースとを決定する

・   従業員休憩所と喫煙場所を決定する

・   入荷車両ドライバー用に外部トイレを設置する

・   社名看板の大型化と増設

この他にもカラーコーンの不足や雑草の刈り取りなど、M社長を含むF社のプロジェクトチームメンバーと何度もセンターを巡回して改善点を確認していった。一方、センター内に関しては以下をアドバイスした。

・   セキュリティー用カメラの設置場所を決定する

・   リフト通路を線引きして一時停止ラインを設定する

・   事務所からのアナウンスを伝えるスピーカーの設置場所を決定する

・   空パレットの保管エリア(庫外・庫内)を決定する

・   直射日光が保管物に当たるのを防ぐため遮光ネットを装着する

・   視認性の向上を考慮した各種掲示物の見直し

・   レイアウトとゾーニングを決定する

 

配車マンを管理者に育てる

続いて運営面に入った。F社が一般運送と一時保管というそれまでの業務から、本格的なセンター運営業務に手を広げるために必要な施策として以下の七つを提示して、その落とし込みを行った。
1.管理職の業務設計

2.安全管理の実践

3.現場チェックリストの活用

4.フォークリフト管理表の活用

5.ロケーションの作り方

6.在庫管理の方法と進め方

7.物流KPIの導入と活用

「1.管理職の業務設計」は、F社にとってハードルの高いテーマであり、管理者となるべきプロジェクトメンバーたちの反応は芳しくなかった。現場スタッフの指示・指導、教育・育成といった自分たちの新たな役割に不安を感じているようだった。

事実上これまでF社には、ドライバーと運行管理者(配車担当者)という二つの職種しかなかった。センター運営を始めると、正社員の庫内作業員やパート・アルバイトなど、さまざまなタイプのスタッフを管理しなければならなくなる。しかも、トラックとドライバーの管理を、出荷と納品という「点」の管理とすると、センター運営は敷地全体の「面」の視点での管理が必要になる。また、管理者は作業者になってはならない。「work(作業)」ではなく「task(業務)」が管理者の仕事であるという意識改革が重要であった。

そこで管理職の業務設計を、管理職の業務内容、パート・アルバイトの採用と育成、作業管理の在り方、コミュニケーションの取り方、「報・連・相」の徹底などのサブ項目に分解して、それぞれ指導を行った。

「2.安全管理の実践」は具体的には以下のポイントについて、それぞれ意味と狙いを確認しながら準備を進めた。

・   空パレットの段積みを最大11段に制限する

・   空パレットを縦にして借り置きすること(通称:タテパレ)を禁止する

・   「ネステナー」および中量ラックの最高段(3段目)に保管するパレット荷物はビニールラップや紐(通称:ハチマキ)で固定する

・    リフト通路は3000ミリメートルを確保する

・ リフトマンのヘルメット装着を厳守する

・ リフトマンの〝ながら操作〟を禁止する(フォークリフトのツメを車体側に引き寄せた状態=リーチインでの走行を徹底する)

・ 入荷車両に車輪止め(輪止め)を徹底させる

・ 消火器設置場所をイエローラインで明確化する

・ 防火シャッターの下に物を置かない

「3.現場チェックリストの活用」では、NLFのテンプレート(図参照)をF社の新センターに合致するようにカスタマイズした。「保管」「流通加工」「事務作業」「安全管理」「品質管理」「入・出荷作業」の各テーマそれぞれ20項目を、管理者が現場をラウンドする際にチェックする。

定量的なチェック項目は誰もが客観的に判断できるが、定性的項目は評価者による違いが発生する。そのため筆者とプロジェクトメンバーが一緒に何度も現場をラウンドして“目線合わせ”を徹底した。さらに各項目の合格レベルにある状態を撮影して、なぜそれが合格なのか、画像データに吹き出しでコメントを入れてモデルを作った。

「4.フォークリフト管理表の活用」は、F社の現場責任者からのリクエストだった。これまで輸配送中心だったF社のスタッフは「ほぼ全員がリフトマンとしては未熟であるため、マニュアルのような物が欲しい」という。

そこで「運転チェック表」「点検表」「エンジンリフト点検表」「記録表」「修理記録」の5部構成のマニュアルを作成した。このうち例えば「運転チェック表」は、「走行前」「乗車時」「空走走行」「運搬走行」「荷降ろし」「空車走行」「終了時」の七つの工程についての計48項目のチェックリストとなっている。

「5.ロケーションの作り方」は、「①ロケーション設計の考え方」「②出荷頻度ABC分析を用いたロケーションの設定方法」「③ロケーションメンテナンスの方法」「④カラーコントロール(色を使った表示によってミスを防ぐ)の活用」「⑤ロケーション管理責任者の設定」の順で指導しながら実作業を進めた。

変化をチャンスと捉える

「6.在庫管理の方法と進め方」は、荷主企業と物流企業では在庫に対する考え方にギャップがあることを認識してもらうことが狙いだった。例えば、荷主にとって「適正在庫」とは欠品を発生させない在庫量のことである。一方、物流企業にとって「適正」とは、営業倉庫の採算が合うだけの保管量があるかどうかである。

そこで物流企業の顧客である荷主にとって、在庫管理とは何なのかをプロジェクトメンバーたちに学んでもらった。カリキュラムは「①在庫とはどのような特性・目的があるのか」「②在庫管理の課題とその原因」「③在庫改善の五つのステップ」「④在庫の持ち方の種類」「⑤在庫管理目的の確認」「⑥基本的な発注方式」「⑦安全在庫・発注点の設定方法」「⑧在庫差異の原因と対策」の八つである。

「7.物流KPIの導入と活用」は、F社にとってタイムリーかつ非常に有益なものとなった。F社の各拠点の保管効率は必ずしも悪くはなかった。しかし、保管量の目安を持っていなかった。

その結果、過剰な在庫量を保管している。つまり荷物を詰め込み過ぎていることから、先入れ・先出し、スピーディーな出荷と車両への積み込みができず、作業生産性が低下している現場がある一方、保管効率が悪く、採算の合っていない借庫もあった。

M社長からプロジェクトチームのメンバーに対して、センター別、荷主別、カテゴリー別、および1坪当たりの保管ケース数の「損益分岐点(Break-even Point:BEP)」をすぐに算出するよう、指示が出された。

筆者はM社長がこれまで順調にF社を成長させてきた理由を次のように考えている。一つは、重量物や長尺物など、多くの運送会社が嫌がる荷物を積極的に取り込んだことである。

二つ目はM社長が前職の異業種で営業マンをしていた時代に培ったノウハウと、その若さとは不釣り合いなほど広い人脈を生かした営業活動である。実際、センターで使用する部材の調達先から物流業務を受託したり、友人の会社の生産ラインの引越しを請け負ったりと、身近な出来事を仕事につなげている。

しかし、何より大きいのは、M社長が人を大切にしていることである。それは顧客や周囲の人はもちろん、従業員に対しても同じである。二代目ながら創業者さながらの行動力とリーダーシップを備えている。物流危機が叫ばれる昨今、物流業経営者の多くは人手不足ばかりに目を奪われ守りに入っている。しかし、変化はチャンスでもある。F社長のようなパワフルな若手経営者にもっともっと出て来てもらいたいものである。

 

第185回 事例で学ぶ現場改善:『パーツ販売Z社の輸送費削減余地検証』

配送コストの上昇に悩まされている。物流コンサルタントの手を借りたいが、どれだけのコスト効果を期待できるのか分からないと投資に踏み切れない。そこでまずは改善余地の検証から始めることになった。その結果、路線会社の対応力が著しく低下している現状を目の当たりにすることになった。

 

同じ路線会社でも営業所で対応に差

Z社は自動車部品の小売りと通販業を営んでいる。中・四国エリアに本社兼店舗を含む4店を展開している。年商は約30億円。近年は通販に力を入れており、売上高の3分の1に当たる約10億円を通販が占めるようになっている。

取り扱いアイテム数は約150。仕入れ先は国内メーカー、卸、海外メーカーなどさまざまである。販売先は大きく、店舗で購入する一般ユーザー、ネット通販での一般ユーザー、ネット通販の法人ユーザーの三つに分類できる。

物流センターと呼べるほどの施設ではないが小規模な倉庫を1棟借りしているほか、各店舗のバックヤードにも在庫を保管している。そのため倉庫および店舗間の横持ち輸送が発生している。それを通販で利用する宅配便も含めて路線会社(特積み)2社に委託している。

ご多分に漏れず、トラック運賃の値上げが現在、Z社に襲いかかっている。危機感を強めたZ社のT社長が、われわれ日本ロジファクトリー(NLF)に連絡を入れてきた。宅配便のコストを抑制したいが、Z社の事業規模でコンサルティングフィーを支払って果たして元が取れるのか、費用対効果の見通しが欲しいという。

そこで、今回の案件はコスト抑制効果を事前に検証することから始めることになった。われわれは宅配便だけにテーマを絞らず、Z社の物流の概要から次のような仮説を立てた。

①倉庫の移管
②店舗でデバンニング
③路線便とルート配送の棲み分け
④トラックターミナルへの持ち込み
⑤「ショットガン輸送」の導入
⑥輸入フォワーダーの変更
⑦宅配会社の見直し

Z社の倉庫は本社および店舗から50キロメートル程度離れた隣県の内陸部にあった。そこを選んだのは、賃借料が安いことに加え、協力路線会社A社が路線便だけでなくBtoCの宅配まで取り扱い運賃も比較的安価であったことに起因している。荷主が少ないエリアであることから、路線会社A社としても店所を維持するのにZ社が必要だったのである。

「①倉庫の移管」はこれをZ社の本社や店舗に近い海側の倉庫に移そうというアイデアであった。それに合わせて現在は4店舗のバックヤードに無秩序に分散している在庫の保管場所を見直せば、輸入コンテナのドレージ輸送や横持ちの輸送距離短縮と、横持ちの発生頻度を抑えることができる。

ところが、移転先を管轄する路線会社A社の営業所に相談したところZ社の荷物には重量物が多いためBtoCの宅配には対応できないと断られてしまった。同じ会社でも営業所によって対応に違いがあった。協力路線会社B社も同様に取り扱えないという。

路線会社C社とD社にも当たってみたが、法人向けなら路線便で対応するが運賃は現状よりも高くなる。BtoCは『NO』という回答だった。この2社には過去にも大型商品のBtoC配送を打診したことがある。その時には、リードタイムは1~2週間かかるものの宅配にも対応していた。結局、倉庫の移管は先送りにするほかなかった。

次善の策として輸入コンテナを「②店舗でデバンニング」してドレージ料金を削減することも検討した。しかし、4店のバックヤードを調べたところ、20ftコンテナを何とかさばける店舗が1店舗あっただけで、40ftコンテナを着車できるようなスペースはなかった。

「③路線便とルート配送の棲み分け」では、近隣の納品先に対しては路線便ではなくチャーターもしくは積み合せで納品することを狙った。問題は運んでくれる物流会社があるかどうかだ。先に説明したようにZ社の商品には大物が多い。誰でも取り扱うわけではない。

幸いなことに法人向けは物量に応じて軽貨物あるいは2t車のチャーターと、積み合せによる対応が可能という運送会社が見つかった。さらにBtoCに関しても家具チェーン、家電チェーン、引っ越しの配送を行っている物流子会社と、一般物流会社から積み合せで対応可能との回答が得られた。

 

路線会社以外の選択肢を探る

「③トラックターミナルへの持込み」にもトライした。Z社の本社および店舗に近いトラックターミナルまで自分で持ち込めば、先に集荷を拒まれた路線会社A~D社はもちろん、他にも運送会社の選択肢が広がるはずだ。意気揚々と候補先を訪問して回ったが、各社とも法人向けなら取り扱うが、宅配はNOと散々だった。

⑤「ショットガン輸送」とは、過去にも本連載で何度か紹介したが、届け先エリアの路線会社や宅配便ターミナルに自分で荷物を持ち込んで末端配送だけ委託するやり方である。届け先エリア単位で荷物をまとめて車両を仕立てることになるため、地方から消費地に納品する場合には特に有効である。

ただし、1日当たり10t車1台分、少なくとも4t分くらいの物量が安定的にないとコストメリットは限られてしまう。Z社では中・四国→関東、中・四国→関西を対象に検討した。しかし、これも路線会社は法人向けの荷物なら取り扱うが宅配は受け付けないとのことだった。そうなるとこれも「③トラックターミナルへの持込み」と同様に、家具、家電チェーン、引っ越し系あるいは一般物流会社を頼るほかない。

「⑥輸入フォワーダー」は、営業倉庫を借りている物流会社のグループ会社に委託していた。しかし、その会社は輸入通関が本業ではなく、売り上げに占める取り扱いシェアも低かった。AEO(優良通関事業者)の認定も受けていないことから通関処理が後回しになり時間が掛っていた。ドレージ料金も割高だった。国際物流をメーンにする会社に変更するべきであった。できれば船会社(キャリア)グループのフォワーダーが良いと判断した。通関処理日数を短縮できれば在庫回転率の向上も期待できる。

「⑦宅配会社の見直し」は現状ではかなりのリスクを伴う。今や物流会社が荷物を選ぶ時代である。路線会社A社との既存取引は温存しておいた方が得策であろう。それでも安心はできない。A社の方針変更あるいは営業所長の人事異動レベルであっても、いつ何時“取り扱いNO”を突き付けられるか分からない。

そうした事態になっても慌てずに済むように、配送ネットワークの補強が不可欠である。具体的には家具チェーン、家電チェーン、引っ越しのそれぞれネットワークとさらに踏み込んだ交渉をしていく必要があるだろう。

こうしてZ社の物流コスト削減余地を探る試みを通してわれわれは路線会社の対応力が著しく低下している様を見せつけられた。物流コストが下がらない時代になっただけでなく安定稼働のリスクが日増しに高まっている。

われわれの報告を受け、Z社のT社長は認識を新たに正式なコンサルティング契約を結ぶことになった。フェーズ1では、先に挙げた仮説のうち、③路線便とルート配送の棲み分け、⑥輸入フォワーダーの変更、⑦宅配会社の見直しを実施する。次のフェーズで⑤「ショットガン輸送」の導入を検討する方針である。

 

《特別編》事例で学ぶ現場改善:『「配車センター」の時代がやって来た』

従来の拠点別の配車管理ではもはや必要な車両を確保できない。効率化にも限界がある。エリア別に配車業務を集約する「配車センター」の設立が有効な解決策だ。ただし、委託先の物流会社から“配車権”を取り戻すことがその前提になる。まずは「運行日報」のチェックから始めてみよう。

 

「運転日報」を毎日チェックしろ

今日、多くの企業が全国1カ所あるいは東西2カ所に受注センターを設けている。売上金額ベースでは既にオーダーの8割以上がEDI化されている。しかし、件数ベースではいまだに5割前後がファクスや電話というケースが多い。その入力作業を従来は各営業所で処理していたが、受注センターに集約して業務を効率化している。

受注に続く業務集約の第2ステージは在庫管理だった。拠点別の在庫管理は在庫の持ち過ぎや偏在を招きやすい。それを避けるため在庫管理センターを立ち上げ、全国あるいは東日本と西日本など広域エリアの在庫を一元管理する。工場から各拠点への補充も中央から指示を出して在庫の偏在と横持ちを回避することに成功した。

次は配車センターの時代だ。まだ具体化しているケースは少ないが、これから確実に増えていくと筆者はみている。そうしないとトラックがつかまらないからだ。拠点別の配車業務を集約して効率化し、管理対象エリアを広げることで無駄を可視化してルート組みを最適化する。今後もドライバーの数は減っていく。集中管理によって限られたリソースを有効に活用する。

配車センターの数は東西2カ所というケースもあるし、首都圏、中京圏、近畿圏などのエリア単位でもいい。九州、四国でもメリットがあったという報告も受けている。とりわけ幹線輸送の帰り便には宝の山が残されている。目安としては使用車両台数300台クラスの拠点を複数展開している企業が検討の対象になる。

ただし、配車センターの新設は、荷主が自分で配車できることが前提だ。これが大きなハードルになる。実際、筆者はこのところ、配車機能を取り戻したい、元請け運送会社に委託している配車業務を内製化したいという相談をよく受けている。

配車は荷主が主導権を握るべきだと、筆者は以前から主張してきた。物流会社に配車を丸投げすれば好き勝手にされてしまう。元請けは合理化すればするほど車両台数を減らさなければいけない。つまり売り上げが減ってしまう。そのため荷主には効率化に取り組んでいるように見せても、実際には手を緩めている。

荷主が自分で配車計画まで作るのがあるべき姿だ。しかし、メーカーや卸などの荷主はもちろん物流子会社でさえ、簡単にはできない。配車システムを使って生産計画と連動した幹線輸送を組むことくらいはできても、柔軟な対応を必要とする販売物流や店舗配送となるとお手上げだ。

トラック運送の実態を知らない荷主が、配車組みまで一気に内製化しようとするのは現実的ではない。その前にやるべきことがある。配車管理の内製化だ。作業と管理は明確に分けて考えなければならない。作業は外部に委託しても管理機能は内部に残す。配車だけに限らないアウトソーシングの鉄則だ。それなのに配車作業と管理の両方を長きにわたり丸投げしてきたことのツケが今になって回ってきたと自覚すべきだ。

それでは配車管理とは具体的に何をすることだろうか。その第一歩はドライバーがその日の業務内容を管理者に報告する「運行日報」のチェックだ。本来、運送会社は毎日、荷主に運行日報を提出する義務がある。ところが実際には日報は運送会社が持ち帰っている。荷主が求めないからだ。その代わりに荷主は月次などで集計した業務報告書を運送会社に提出させている。しかし、それを見ても配車の実態は分からない。

運行日報は毎日チェックしなければならない。その日、荷降ろし時間が不自然に長かった納品先があれば、その理由を尋ねる。ドライバーは「降ろす場所が分からなかった」と言う。調べてみると、その店舗だけまだ「納品カルテ」ができていない。すぐに作成して、同じことが再び起きないようにする。地道な改善の積み上げによって生産性を上げていく。

「配車機能内製化プロジェクト」のステップ1ではルート組みまでは手を出さなくてもいい。それはステップ2で構わない。ステップ1では、配車作業を物流会社に委託したまま、配車管理を内製化する。まずは運行日報のチェック。そしてKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)管理だ。幹線輸送であれば積載率で生産性を管理する。満載を100とした場合に何パーセント積載しているか、商品マスターから荷物の容積を計算して荷台の容積と比較する。重量勝ちの製品であれば重量ベースで計算する。その分析から改善策を検討する。

集配便は基本的には車両別回転数をKPIにとってルート当たりの生産性を管理する。ただし、商業地ではないエリアで4トン車以上の中大型車を集配便に使っているケースでは積載率を追った方が効果的な場合もある。

失われた“配車権”を取り戻す

そして次の段階、ステップ2でルート組みに挑戦する。とはいえ、荷主のプロパー社員には難しい。社内で配車マンを育成するのも無理がある。実際には配車の実務経験者を外部から採用するか。あるいは、しばらく物流会社から配車マンを派遣してもらうことになる。

配車業務をどこで誰がやるのかには、基本的に三つのパターンがある。一つは運送会社に所属する配車マンが事務所でプランを組んで荷主の出荷拠点に送信するケース、いわば“リモート配車”だ。工場出荷などの比較的単純な幹線輸送であればそれでも機能する。

しかし、販売物流の場合はどうしても出荷拠点に配車マンを置く必要がある。販売物流の配車マンは出庫後もドライバーをフォローしなければならない。「車が入れないんですよ。どうしましょう」といった相談や、「駐禁切られました。警察行かないと」「それじゃ、代わりのトラック出すから積み替えて。30分後に着くから」といった細かな対応が求められる。

そのためコンビニなどは、委託先の物流センターに元請け運送会社の配車マンを常勤させている。運送会社の配車マンを出向させているケースもある。その場合には人件費が発生するが、配送効率を上げることでペイできるという考えだ。配車機能の“半自社化”といえる。しかし、出向者がそのまま荷主に転職してしまう恐れがあるため、運送会社は優秀な人材を出したがらない。時期が来たら戻すことを前提にすることもある。結局、配車マンの頭が切り替わらないので、効果には限界がある。そして、三つ目のパターンが実務経験者の中途採用による完全自社化だ。配車センターを新設するなら、そこまで踏み込むべきだと筆者は考えている。

ステップ2では、配車と営業との連動、情報共有が不可欠となる。荷主が自分で配車を組むようになると、過剰サービスが表面化する。営業マンは往々にして物流に〝保険〟をかけたがる。午前中に納品すれば済むものを「9時半必着」で指示したり、別便で対応できる追加発注に緊急出荷をかけたりする。

協力運送会社の配車マンは黙って指示に従うしかない。しかし、同じ会社の同僚であれば「これって本当に9時半納品じゃないと駄目なの」と担当営業に聞くことができる。午前中であれば構わないと分かれば効率の良いルートを組み直せる。追加発注の納品方法を検討できる。

 

配車センターを収益化する七箇条

筆者は本誌2017年5月号で「“配車力”を鍛えるための五箇条」を寄稿した。そこではブラックボックス化している配車マンの仕事の中身を整理して、配車能力を向上する方法を解説した。その続編として今回は、荷主の視点に立って配車センターをプロフィットセンター化する七つの方法を紹介する。

物流会社でも物流子会社でもない荷主は、配車センターを収益化しようと言われてもピンと来ないかもしれない。しかし、例えば卸にとって物流サービスはそのまま商品である。メーカーの商品価格にも物流サービスが含まれている。本質的には変わらないと考えて欲しい。

 方法1

配送ルートを年4回は見直す

納品先は時間とともに変化する。しかし、配送ルートは最初に策定したものをそのまま修正しながら使い続けていることが多い。既存の固定コースにそのまま納品先を追加したり、減らしたりを重ねていくので、時間の経過とともに歪みは大きくなっていく。本来であれば配達できる物量なのに車両が足りなくなったり、特定のコースで帰庫が著しく遅くなるといった問題が生じる。少なくとも年に4回は配送ルートを抜本的に見直す必要がある。

 方法2

出荷拠点の振り分けを年1回は見直す

その納品先にどの拠点から出荷するかという出荷拠点の振り分けは、担当営業組織に基づいて自動的に決めている場合が多い。その結果、別拠点の近くまで納品に行くという無駄が生じている。隣接する拠点のさらに遠方まで配送ルートが延びていることもある。拠点ごとに配車担当や協力運送会社が違うとそうした歪みが表面化しない。

配車機能の内製化を機に、商流ベースで振り分けた出荷拠点を物流の目で再検討しよう。その後も本来なら配送ルートと一緒に年4回は見直したいところだが、出荷拠点の変更は得意先との交渉や調整に時間がかかるため、最低年1回でもいいので定期的に見直したい。驚くほど大きな効果があることを筆者は経験から知っている。

 方法3

共同配送は1社で積載率70%以上を満たせるベースカーゴの存在を前提とする

積載率に換算して25%の物量がある荷主を4社集めることで満載にするというアプローチの共同配送は長続きしない。一時的に成立しても、そのうち1社の物量が減って宅配便に流れて離脱したり、あるいは1社で車両を仕立てられるほど物量が急増したりする。

成功している共同物流には1社で70%以上の積載率を満たせる核となる荷主が存在する。それをベースカーゴに10%クラスの小口荷主2社、あるいは20~30%クラスの荷主1社が便乗する。便乗した分がそのままコスト効果を生む。しかも長期にわたる安定運営が可能になる。

 方法4

傭車比率50%以下を厳守する

荷主の場合、委託先の運送会社に傭車比率が50%を超えないように徹底させる。50%を超えると傭車先に主導権を握られて急にハシゴを外される恐れがある。安定稼働にリスクが生じる。今や傭車は自社車両よりもコスト高だ。運送会社に聞けば異口同音にそう答える。新規に傭車を依頼すれば従来の1・5倍近い運賃を要求される。そのため運送会社各社は自社比率を増やしている。荷主は業務内容の改善や働く環境を整備してその支援をすべきだ。

 方法5

夜間配送を検討する

店舗納品などの集配車は夜間配送をあらためて検討する。昼間はどうしても渋滞に巻き込まれる。空いている時間に車を走らせる。ただし、夜間は店舗側で荷受けができない。無人の店舗への納品が前提になる。夜間は配送効率がいいのでドライバーには割の良い賃金が払える。荷受けもないので納品も楽だ。昼間のドライバーよりもむしろ確保しやすい。

 方法6

運用車両台数の約3倍の運送会社とパイプを持つ

目安として、運用車両台数の3倍の運送会社をネットワークをしたい。運用台数が30台なら90社とパイプを持つべきだ。それくらいの選択肢がないと今は車両を確保できない。現状の傭車先リストはあまりに少なすぎる。そのため配車マンは外に出なければならない。運送会社を訪問して、時には車両を相手に融通し、時には融通してもらうバーターの関係を作っておく。

 方法7

ドライバーによる手積み・手降ろしを1年以内にゼロ化する

ドライバーの作業負担の軽減はもはや必須である。待機時間の削減はもちろん、フォークリフト、カゴ車、オリコンなどのマテハンを使わず、ドライバーに手積み・手降ろしを強いる作業は1年以内に解消する。「あそこの会社の仕事は楽だよ」と言わせなければならない。口コミでドライバーが集まる。行列ができる荷主、行列ができる運送会社を目指したい。

 

第184回 事例で学ぶ現場改善:『災害のBCP(事業継続計画)を見直す』

物流に深刻な影響を与える自然災害が立て続けに発生している。西日本豪雨をきっかけにスポット運賃は急騰し、車両の確保が難しくなっている。被災した中小企業への影響はとりわけ深刻だ。車両ディーラーや建設工事会社は大手企業からの要請を優先するためだ。復旧の遅れが業績に大きな影を落としている。


水害後に庫内作業員が相次ぎ退職

大型で非常に強い台風24号が勢力を保ったまま日本列島を縦断しそうだというニュースが流れていた9月28日の金曜日、筆者は関東の物流会社A社を訪問した。定期的に研修を行っている従来よりのクライアントだ。出迎えてくれた営業部長にあいさつ代わりに「御社は前にISOを取得された時に防災マニュアルを作ったと聞いています。こういう時に役立ちますね」と声を掛けた。

ところが、「それがそうでもないんです」と営業部長の表情が曇った。防災マニュアルといってもチェックリストレベルの資料であり、実際に使えるものではないという。しかも、それを作成した当時に災害として想定していたのは地震とそれに起因する津波であって、台風は対象としていない。「異常気象がこれだけ続くとなると物流現場で使用できるBCP(事業継続計画)を作り直さなければいけないね」と、仲間内で話していたところだったという。

予報によると台風が関東を通過するのは週末の日曜深夜から月曜の未明にかけてである。このまま何も準備しないで台風の直撃を受けるのはいかにも危うい。この日、A社の社長は不在で決済をもらうことはできなかったが、営業部長と相談した上で、研修の予定を急遽変更することにした。

研修プロジェクトのメンバーを、「雨水」「風害」「停電」「倒壊」「避難」「その他」にグループ分けして、それぞれ想定される事態を具体的に挙げて、対応策を整理するよう指示を出した。1時間程度の作業だが簡易的な防災マニュアルを作成することができる。

このうち「その他」は筆者と営業部長が担当した。まずは救急箱や非常食の用意、緊急連絡網の確認などの一般的なチェック項目を挙げていった。さらに「来週は台風の影響でトラックが遅れる可能性があることを今日中に荷主と納品先に伝えておいた方がいい」と営業部長。もっともである。それに加えて、納品先のチェーンストアが平常通り店をオープンするのか、それとも臨時休業するのか、それを何の情報に基づいてどの時点で判断するのか先方に確認しておくべきだと筆者はアドバイスした。

この点はA社自身も同じである。「注意報」「警報」「特別警報」「避難準備情報」「避難勧告」「避難指示(緊急)」が発令された場合に、それぞれ誰がどう動くのか、指示命令系統も含めてはっきりさせておく。情報源とするメディアも具体的に指定しておく必要がある。というのもメディアによって情報の流れるタイミングや伝え方は違うからだ。同じ警報を伝えるのにも、全国ネットのメディアは各地の状況を一巡させる必要があるため時間がかかる。地元の地方局の方が早い。

筆者がそうしたことを強く意識するようになったのは、筆者の住む関西が今年に入って立て続けに自然災害に襲われていることもある。6月18日には最大震度6弱を記録した大阪北部地震が起きたが、それ以上に深刻だったのが、7月初旬の西日本豪雨とそれに続く一連の台風による被害だ。個人的な話で恐縮だが、筆者の自宅は大阪市内にあり、西日本豪雨では直接的な被害を受けなかった。しかし、9月4日に西日本を横断した台風21号には直撃を受けた。大阪府内の約100万軒が停電し、関西国際空港が一時閉鎖に追い込まれたことは、読者の記憶にも新しいところだろう。

筆者とは長い付き合いの年商約300億円の日雑卸B社は、自社倉庫の道路沿いの側溝から敷地内に水が溢れてパレット積みしてあった荷物が水に浸かり、1億円近い被害を受けた。建物の外に積み上げていたパレットも暴風で飛ばされた。人に当たっていたら大変なことになっていたところだ。逆によそから飛ばされて来た看板がB社の倉庫の壁に直撃、壁に穴が開き、猛烈な雨が吹き込んだことで“濡れ損”を拡大させた。

その後がさらに大変だった。現場の復旧のため社員たちは徹夜を余儀なくされた。極端な過重労働で、5日間で数時間しか寝ていないという人も出た。それから1カ月余りの間に現場担当の正社員3人が退職した。3人ほぼ同時というのは異例のことだ。それぞれ理由はあるが、きつい・汚い・危険の“3K”を赤裸々に体験して「やはり物流現場は危ない。オフィス勤務とはワケが違う」と感じたに違いない。

 

復旧は大手が優先で中小は後回し

7月の豪雨の直後から西日本のスポット運賃が急騰し、今も高止まりしている。さらに困るのは、「水害があってからというもの、路線(特積み)が全く機能していないことだ」と年商30億円の倉庫会社C社の役員はいう。指定日到着を受けてくれない。筆者の自宅周辺でも至るところで信号機が曲がったり折れたりした。ドライバーはどこを見ればいいのか迷うほどだ。オペレーションの混乱は容易に想像できる。車両も被災している。飛来物がキャビンに当たって運転席のガラスが割れた。あるいはウイング車の架装を破損したといった、比較的小さな事故は無数に起きている。修理は順番待ちだ。

高槻に本社を置く年商10億円の運送会社D社では、車庫に水が入り込み、保有車両台数30台のうち10台が水没した。急ぎ車両をディーラーに発注したが、いつ納品できるか分からないという。大手に在庫を抑えられてしまっているのだ。

D社が拠点内に構えている延べ床面積約200坪のテント倉庫も被災した。テントといっても耐用年数は10年から15年はある。仮設倉庫のつもりで購入しても使い勝手は悪くないので、恒久的に使い続けていることが多い。ただし、基礎をかさ上げしていない場合が大半なので、水はけの悪い低地に設置して大量の雨が降ると床が水浸しになってしまう。

この問題でも車両と同じ目に遭っている。テント倉庫の修復を依頼しても工事会社が動いてくれない。人手は限られている。当面は大手顧客にかかりきりだ。大手は施設の規模も多く、数もある。一通り復旧を終わるまで中小は後回しにされてしまう。被災してから2カ月近くが経ち、新聞やテレビで大手物流会社の機能が回復したというニュースが流れる一方、D社のテント倉庫は手付かずのまま放置されている。結局、D社は今期赤字転落が避けられない見通しだ。車両の水没で約6千万円の特損が発生し、復旧の遅れで売り上げも大幅に減少する。

既存のBCPは基本的に地震災害を対象に作成されている。関西で言えば南海トラフ地震を想定した防災や減災、津波への備えはそれなりに進んでいる。内陸部に倉庫を設けて在庫を分散したり、拠点の耐震設備や自家発電装置、敷地内のインタンク(自家給油所)を整備する動きがみられる。

しかし、今年の集中豪雨や台風による被害はBCPの想定範囲を超えている。地震と違って水害や風害は事前に到来をほぼ正確に予測することができる。それなのに実際に暴風圏に入ってみて、初めて筆者を含めて多くの人がその影響の大きさに驚かされたに違いない。

異常気象が今年だけの問題ではないとするなら、BCPを見直す必要がある。具体的には、豪雨とそれに伴う洪水、風害、倒壊、停電に備えなければならない。とりわけ中小の物流企業にとっては、それが文字通り事業の継続を左右することになりかねない。