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第166回「やっぱりつらいよ後継者選び」

私は先日、ある経営者の墓参りに行った。生前、大変お世話になり、自分の息子のように話を聞いていただいた。

この経営者は中堅物流会社のナンバー2にまで登り、そこから脱サラをし、一代で年商60億の物流会社を作り上げた。しかし、最近では競合他社の価格競争や荷主の運賃値下げなどが大きく経営に響き、赤字経営に陥っていた。借入金も増え、債務超過にまで至っていた。心労も大きかったのだろう。数年前に内臓疾患を発病し、最近では病状は安定した状態であったのだが年明けに病状が一変し、天国へ行ってしまったのであった。その直近までハードワークをこなしていた。この会社は完全に亡くなった社長の色濃いワンマン経営であった。営業や荷主との交渉、値決めなど全て本人が対応し、その後の運営面は常務に任せていた。墓参りの際、この社長の息子に逢うことができ、色々な話をした。

この息子は大学卒業後、関東の中堅物流会社に勤め、後を継ぐことを前提に2年前、父が経営する物流会社に入社した。現場から事務職に上がるとき、ワンマン社長を囲む、古参幹部と衝突し、昨年父の会社を辞めたのであった。
その理由を聞いてみると、年商60億クラスともなると物流会社としては大きく、管理職が官僚的になり新たな挑戦や改革とは無縁の保身に回り、現場の提案がなかなか聞き入れてもらうことがなかった。
そしてもう1つは父の存在が大きすぎ、比較されることはもとより、後を継ぐことは不可能と判断したとのことであった。
そんな中、息子は父に「会社はあとどれくらい持つのか」と物心ついた頃から聞いていたという。バブル期は「全然大丈夫だ」と返事が帰ってきたが、最近では「あと10年は持つ」「あと5年がやっと」と次第に具体的な年数が入ってきたと言う。

事業承継はタイミングが重要という。負の財産を精算してバトンタッチする会社が多いが、今の物流業界であればそれは難しい。
しかし、この社長の寿命を短くしたのはわずかな望みであった息子の退職であったに違いない。