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第288回「3PLで物流を再生する(2)」

〜荷主企業と物流企業の温度差を埋める3PLのあるべき姿と課題〜

最後に共同作業として最も負担がかかるが3PL成功の大きな要因となる
c.「両社が共通して構築しなければならないもの」について
お伝えしていくことにする。
3PL成功の大きな要因となるものとして次の5つが挙げられる。
(1)共通目標の設定
(2)情報システム(インフラ)構築による業務の可視化
(3)情報の共有化(コスト/在庫/仕入データ)
(4)荷主遊休資産活用及び運用・処分策
(5)パートナーシップの有形化、である。

(1)の「共通目標の設定」については荷主企業にとって
3PLを活用することでどのような成果を導きたいのか、
また物流業務の一括受託を行う3PLは、荷主企業は我々に何を期待しているのか、
取引継続のためにはどのような点(特にコストと品質)を
クリアしなければならないのかを理解しておかなければならない。
商談の初期段階とも言えるが3PL導入の失敗例を見ると、
この最終到達点の食い違いによるプロジェクトの決裂が多いことに驚かされる。
具体的には短期、中長期における物流コスト目標やコストダウン額、
そして誤出荷やリードタイム、在庫差異など品質面に関する目標、
計画などが作られ、それを双方の共通目標としなければならない。
ポイントは作成の段階から荷主企業、3PL両者が共同で作業を行うことである。
荷主企業が計画を立てても3PLがそれを担えるかの検証、
確認は残念ながら後回しになっていることが多い。
(2)の「情報システム(インフラ)構築による業務の可視化」については
物流の進化、発展にはIT技術の活用が不可欠であり、
特に入・出荷作業での手作業による入力作業には多くの人員と時間を要しており、
コスト抑制と導入期間の短縮が図れる
スタンドアローン型の単独システムでの導入でもメリットが大きく、
入・出庫作業にかかる人員と時間が削減される。
また間違いのないデータが蓄積されていくこともメリットである。
その他には検品作業に関してもHHTによるスキャン作業の方が
はるかに精度は向上する。
またセキュリティ対策においてICタグの導入を検討する企業も増えてきているが
導入コストと費用対効果でのメリットと導入事例の公開情報が増えることにより、
一層の波及が期待される。
(3)の情報の共有化(コスト/在庫/仕入データ)はオンライン化を示しており、
荷主企業における発注数量、在庫量などのオンラインデータによって
3PL側では入荷数量と棚卸しによる差異が発覚し、
その対策を打つことが可能となる。
またWMSシステム導入も3PLにとって有力な武器となっており、
倉庫管理業務の付加価値創出に貢献している。
このように荷主企業が自社でWMSを持たず
3PLに提供してもらうかたちが多く見られる。
(4)については3PLへのアウトソーシングによって
荷主企業の遊休資産(倉庫や工場跡)が発生する場合があり、
それに対する運用や解決策が打ち出されないとそれがボトルネックとなり
荷主企業と3PLとの取引が成立しないことがしばしばある。
立地や売却コストにもよるが、一般的に3PL又は関係会社が買い取り、
顧客となる荷主企業か他の荷主へ賃借するサブリースを採る場合が多い。
このように3PLにファイナンス機能が必要な場合も出てくるのである。
(5)のパートナーシップの有形化は最も高いレベルの共同構築項目と言えるあろう。
他のビジネスでも同様に何らかのいわゆる“紳士協定”が
暗黙の了解として存在している。
3PLに関しては初期では問題がなかったが
担当者が変わる、市況が変わるなどにより、
取引条件(特にコスト)が交渉において変更される場合が多く、
これをきっかけに両社の信頼関係が壊れていくことになる。
そこで有形化することが必要であり、
両社がwin−winの関係で取引の継続を見込んだ契約内容と
その締結が重要な鍵となる。
win−winの関係というなかでは、
ある荷主企業と3PLはコストダウン額の30%を成功報酬として
2年間支払うという契約によってそれが実現し、
荷主企業はコストダウンに成功し、また3PL側は大きな収入が入ることとなった。
今も両社の関係は良好である。
このように3PLとは何かを一旦、定義付けを行うことで実施ことが明確になり、
また業務を委託する荷主企業との意識、目標コスト、
共有する情報レベルなどの温度差を可能な限りなくしていくことで
3PLの貢献度、存在意義は高まっていくのである。

青木 正一 著

日本工業出版 発行 『自動認識』2009.06号に掲載