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第295回「物流会社M社のパート戦力化PJ(2)」

(1)役割分担と権限委譲
正社員と非正社員の役割分担と権限委譲を進めるために、センター運営業務の棚卸しを行った。
それまでYセンター長、T副センター長の両名には、率先してリフト作業をやりたがる癖があった。どちらが上手かを競っている始末である。現場主義にもほどがある。管理職としては失格と言わざるを得ない。
管理職は本来、来月、3カ月後、来期というような将来を予測して、その準備を進め、改善などの業務を行わなければならない。
一方でパート・アルバイトや派遣スタッフは今日明日の作業をスピーディかつ正確に進めることが使命である。これよってそのセンター、その現場は進化する。そのことをわかっていない管理職が多い。M社に限らず、物流現場の管理職の多くが自分たちの仕事を勘違いしている。「業務(Task)」と「作業(Work)」を混同しているのである。

(2)コミュニケーションの取り方
同様に管理職の多くが、現場スタッフに挨拶や声をかけることだけでコミュニケーションが取れていると勘違いしてしまっている。
コミュニケーションとは「会話」ではなく「対話」である。
M社の現場には、それまで「会話」はあっても「対話」がなかった。そのために意思の疎通がうまくいっていなかった。そこで社歴の長いパートから順番に、管理職との個人面談を半年に1回ずつ実施していくことにした。

面談の時間配分を予め設定した。一人当り60分を目安とし、初めの40分は、管理職は聞く側に徹する。そして残り20分で管理職の考えや方針を伝えることにした。
仕事のこと、職場の人間関係、さらには家庭の事情など、パートはそれぞれに様々な悩みを抱えている。それを管理職がじっくり聞くことで「私は会社から看られている」と感じてもらうことが狙いだ。
パートの人数が多いため、Yセンター長とT副センター長のほかに正社員の現場リーダー3人を管理職側の面談要員に加えた。
個人面談では、様々な改善提案を聞くことになった。その結果、夏冬の空調などの環境整備に加え、休憩時間などにM社の不満をしばしば周囲に漏らしていたベテランパート1名を配置転換することになった。

ある新聞社が実施したアンケートによると、「上司に言われてやりがいを感じる一声」の1位は「ありがとう」、2位は「助かったよ」であった。これは物流現場でも同様である。
ところが物流現場の作業は、うまくできて当たり前という特性があるため、管理職はどうしてもミスを指摘するばかりになりがちだ。それでは現場の雰囲気が暗くなってしまう。
そこで面談を担当したYセンター長、T副センター長、現場リーダー3人に対し、自分が受け持っている部下やパート一人ひとりについて、長所を3つずつ書き出してもらうことにした。マイナス思考になりがちな現場管理職に、部下・パートの長所をみつけ、誉めるということを意識的に行わせようという狙いである。

(3)評価制度、表彰制度の導入
物流現場における評価制度や表彰制度の必要性は昨今ますます高まっている。
パート・アルバイトが今や現場オペレーションの主力となっている以上、それも当然と言えば当然である。ただし、あまりに大掛かりな制度を作ると、プレッシャーや責任の重さに及び腰になり、脱落するパートも出てきてしまう。
Yセンター長とT副センター長と話し合い、M社の現状に相応しい制度を検討した。時給を決める人事考課は「勤務態度」と「能力」によって決める。
このうち勤務態度はさらに「a. 勤務態度」「b. 協調性」「c. 責任性」の3つの小項目に分け、それぞれについて具体的な基準を明示した。「無断欠勤は無かったか」という具合である。
一方の「能力考課」には「a. 業務知識」「b. 理解力」「c. 表現力」を小項目として設定した。これもまた「自分の言いたいことを簡潔に表現できるか」など、計12項目の基準が設定されている。それぞれの基準をクリアできているかどうか、まずパート本人が自己申告する。それをもとに管理者と個人面談を行う。両者の評価にギャップはないか、あればその理由は何か、どう改善していけば良いか、
個人にフィードバックする仕組みである。
作業評価は、「生産性」と「品質」に関してそれぞれ一つずつの指標を選び、目標を設定することにした。
具体的には「生産性」は「ピッキング個数/人・分」、「品質」は「ピッキングミス率(ミスピッキング行数/全ピッキング行数)」を用いた。

これに並行して二種類の表彰制度を設けた。
「月間ベストピッキング賞(上記2つの指標を基に総合評価)」と、「月間MVP賞(人事考課表の主要ポイント3つに絞った項目に基づき評価)」である。
ただし、表彰は該当者ナシの場合もあるという前提にした。受賞者には毎月の最初の朝礼でトロフィーと商品券が渡され、センター内のメーン掲示板に名前と写真が掲示される。
いささか大げさかと少々不安もあったが、いざ実施してみると現場は予想以上に雰囲気が明るくなり、授賞式は盛り上がった。その後、現在はパート・アルバイトから社員への登用制度を作成している。

派遣スタッフの課題
派遣スタッフも基本的にはパートと同様に扱う。朝礼や昼礼など現場の基本行事にも参加させる。
先の目標管理の対象にもなっている。ただし、派遣であるため現場の管理者が直接、個人評価をすることはできない。評価は派遣会社の担当者を通じて間接的に本人に伝えてもらうしかない。その意味でも基礎教育を施したスタッフを派遣する付加価値のある派遣会社が求められている。
しかし人手不足による売り手市場が、それを阻止してしまっているのが実状だ。そのため派遣スタッフは繁忙期や採用不足の際の臨時労働力として利用することが基本であり、自社パートの戦力化と採用の強化が先決となる。
M社のセンターは現在、社員15%、パート・アルバイト80%、派遣5%で運営している。派遣に対する依存度は低いと言える。
それでも社員、パート・アルバイト、派遣スタッフという労働力の多重構造を前提として、垣根のない情報共有と教育、そして目標設定とインセンティブの仕組みが必要であることには違いはない。

<ロジビズ 2007年6月号に掲載>