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第297回「台風下での輸送力」

 先日、出張先で初めてとも言える“足止め”を食ってしまった。
日本列島縦断の恐れのあった台風4号による影響であった。
下りの新幹線に乗っていた筆者は「今回は危ない」と思いつつも東京駅を出発したが、
案の定、小田原駅で「のぞみ」が完全にストップしてしまった。
車内のアナウンスは当初、静岡県下8ヶ所の風速計が、
規制値(30m/s)を超えたためであると言っていた。
その間、新幹線の車体は大量の雨に打たれ、右へ左へと風力で揺れていた。

約1時間ほど経ってから再び、アナウンスが流れた。
今度は「富士川の河川水域が決壊の恐れがあるため、長時間の遅れとなる」という内容であった。
車内はため息に包まれ、ワゴンサービスでビールを買う人、アイスクリームを買う人、
喫煙ルームにタバコを吸いに席を立つ人、ひざ掛けを持ってきて寝入る人など、
各自が長期戦の構えに入った。筆者は買い溜めの書籍を読むことにした。

結局途中で寝てしまったのであるが、小田原駅で完全に止まってから2時間以上は過ぎていただろうか、
再び列車が動き出した。深夜には新大阪駅に入れるとほっとしたのも束の間、熱海駅で再び止まった。
「当駅にて運行をストップします」というアナウンスにより乗客は全てホームに出されてしまった。
列車ホテルは用意できるのかと駅員に尋ねたところ、熱海駅では設けないという。
熱海駅は路頭に迷う大勢の乗客でごった返した。
駅員は、東京に戻る「こだま」が2両、この後にやってくるのでそれに乗ることも出来ると説明していたが、
明日の始発が運行されると約束されるものでもなかった。

筆者は一応、東京の常宿2つに電話を入れたがいずれも「満室」だと言う。
筆者同様に帰宅できない者か、又は明日の予定を考えた避難者でホテルはいっぱいになっていた。
筆者は熱海駅の改札を取り敢えず出てタクシーに乗った。
熱海駅前はコンビニが1店くらいしかなく、何もなかったが、
レンタカー店が空いているかもしれないと思い、隣駅の三島駅まで走ってもらうことにした。
最悪の場合は三島駅で宿泊先を見つけるしかない。
あとは乗ったタクシードライバーの道先案内と周辺の施設ガイドが頼りであった。
カードが使えないタクシーではあったが幸いにもいろいろな情報を持っている愛想の良いドライバーであった。
途中看板に明かりがついているレンタカー店があれば立ち寄り、
自ら店へ行き営業しているかどうかを確認してくれた。

熱海駅から三島駅までの山越えの途中、コンビニが何店舗か営業していた。
さすがにその時はコンビニでも役に立たないと思ったのであった。
しかしながらそのうちの2店舗には納品車両が着いていた。
陸、海、空の輸送インフラは麻痺しているがトラック輸送とタクシーは動いているではないか。
これもドライバーによる状況判断により、リスクを背負った稼動である。
有難いことである。改めて言うのもどうかと思うが、
やはりトラック輸送の強さが日本の物流を支えていることは間違いない。
ドライバーに感謝!

結局、営業しているレンタカー店はなく、駅前のホテルに向かった。
空室があるか確認するまでタクシードライバーも付き添ってくれていた。
ホテルへの電話による問い合わせでは「満室」と返答しているが、
実際、ホテルに行きフロントで問い合わせると
「予約をしても来ない人がいる、今日であれば来れない人になる」ということで、
何とか部屋の用意をしてくれるものである。

台風の被害を受けたが、ドライバー(タクシー、コンビニへの納品車両)の恩恵を受けた1日でもあった。