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第307回「ある日の出来事」

ある日の出来事であった。S物流の埼玉営業所の配車担当者が既存荷主からの依頼を受けて車をつくろうとしたのであったが、この営業所にある24台の車両は全て荷物が付いており、満車となっていた。
そこでいつもの傭車先から車を手配することにした。
数時間後、作業指示書を取りに営業所に入ってきた傭車のはずである車両が自社の(他営業所の)車両であった。何とも笑い話ともとれる実際に起こった不思議な出来事であった。

なぜ、このような事が起こったのか。その背景を見ると他人事ではない、読者の方々の会社でも起こり得る現象かもしれないのだ。
S物流埼玉営業所の配車担当者Aは、いつも傭車の協力をしてくれているB社に連絡を取り、10tのウイング車を手配してくれるよう頼んだ。ところがB社にもあいにく空車がなく、常々の付き合いから断る訳にはいかないと知り合いのC社に聞いてみることにした。少し時間が欲しいとのことであったので、B社はしばらく待機。その間、C社は自社便を出すか、傭車先を使うかで頭を痛めていた。それは相場より安値の運賃であるため、うま味がないからであった。
結局、C社も傭車を使うことにしたのであったが、マージンを引いた安値で対応してくれる物流会社はなく、3社に連絡を取ったが3社とも断られてしまった。少しでも売上げが欲しいC社は取扱会社(水屋)に頼むことにした。
取扱会社(水屋)も、安い運賃をもう少し「どうにかならないか」と嘆いたが、自ら車両を持たない彼らは、安値であっても仕事を受ける会社を見つければ本来の手数料が入ると思い仕事を受けることにした。そこに西日本方面に下るS物流の神戸営業所の10t車が帰り荷を探していた。
空(から)で帰るなら安値でも全く有難い仕事と作業指示書を取りに行った会社がS物流の埼玉営業所であったという理由である。

行くまでに判りそうなものであるが、ドライバー自身は自社の中で帰り荷が付いたとしか認識していなかったのである。この出来事は、いくつかの問題を提起している。
1つは下請けに底なしの発注をかけて良いのか。「孫請け禁止」「傭車申告制」などの傭車管理を元請けのS物流、そして荷主が、どこまで行っていたのかという点。
2つ目は、これほどの下請け多重構造でも成り立つという料金及び価格設定のあり方。3つ目は、S物流における車両管理の限界と、この規模(全国に47営業所、車両1,100台所有)クラスになると、自社での配車センター設置による配車業務の集約化と積載効率の向上(帰り便を自社で賄う)を図る必要があるということである。
発ち便、帰り便(発着)の概念を捨てて荷物を付ければ、ドライバーの休憩時間の確保か交替が必要になるが、車両台数自体は減らすことが出来る可能性が出てくる。

S物流のある日の出来事は、フタを開けてみると意外に笑えない話なのであった。