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第400回「人手以前に工夫が足りていない」〜前編〜

1.「人事」が生き残りの条件に〜事例紹介〜
「人が集まらない」と嘆いている会社ほど、実際には何の工夫もしていない。必要な
対策を怠っている。この問題の解決には、即効性のある短期的な改善策だけでなく、
人手に頼らない業務の仕組みづくりを目指す。
長期的アプローチの二段構えで取り組む必要がある。工夫次第で人は集められる。
まずは具体的な事例を紹介しよう。

<事例1>中堅運送会社A社・・・ドライバーが集まらない
A社は関西に本社を置き、東京、名古屋にも営業所を設けている年商18億円の運送会
社だ。これまでドライバー不足を傭車でしのいできたが、主要荷主から自社便を条件と
する新規業務の依頼があった。そのため新たに大阪で正社員ドライバーの募集広告を打
った。ところが全く応募がない。仕方なく募集期間を1カ月延長したが、それでも採用
できる人物はいなかった。
こうしたことはA社に限らない。世間に名の知れた超大手ならともかく、中堅以下の運
送会社ともなると、最近はわずか数人のドライバーの補充さえままならない。
    ↓
[発想を変える]
A社は地方で採用活動を行うことにした。いわゆる出稼ぎ型のドライバーを狙ったわけ
である。本社の近くに借り上げ社宅を用意して、南九州で募集と面接を行った。その結果、
6人の候補者から2人を採用することができたのである。

<事例2>センター運営会社B社・・・パート・アルバイトの退職が続き、定着しない
B社は大阪近郊でスーパー向けの低温物流センターを運営している。主婦人口が多い地域
であるため、募集広告を打てば応募はある。定員を満たすこと自体は難しくなかった。し
かし、定着しない。そのために常に募集広告を出し続けている状態だった。しかもパート
が作業に習熟しないうちに辞めてしまうので、作業品質が悪かった。原因を調べたところ、
早期に補充しようと焦るあまり採用基準を下げてしまっていた。その結果として、忙しく、
ハードな作業日があると、その翌日から連絡もせずに辞めてしまうパートが続出するよう
な状況になっていた。そのことで他の作業員の負荷が上がり、無断退職が連鎖するという
負のサイクルに陥っていた。
    ↓
[採用基準の見直し]
社内の関係者を集めて「人が足りないときほど踏ん張る。採用のハードルは下げない」こ
とをあらためて確認した。そして書類選考を採用の1次審査と位置付け、評価ポイントを
明確にした。その結果、採用する人材のレベルが格段に違ってきたのである。定着率も改
善し、作業品質や生産性も上がっていったのであった。

<事例3>
建設資材メーカーC社・・・パートの労働環境を改善
年商約150億円の建設資材メーカーC社は、約50人のパートを使って物流センターを
自社運営している。猛暑となった昨年の夏、同センターで立て続けに4人のパートが退職
した。いずれも「仕事がきつい」という理由であった。4人の退職が他のスタッフに連鎖
する恐れがあった。
    ↓
[費用と手間を惜しまない]
手始めに約2千万円かけて庫内の空調機器を整備。「重い荷物のピッキング作業がつらい」
という現場の声に応えて、ピッキングカートと一般台車をそれぞれ5台ずつ購入した。それ
だけの費用と手間を掛けても、パートに長く働いてもらうことができればお釣りが来るとい
う考えだ。

2.短期的アプローチ〜採用力を上げる〜
■人材募集広告の媒体
①ハローワーク、  ②有料求人誌と携帯サイト、 ③フリーペーパー、 ④口コミ、 ⑤紹介、
⑥学校周り(高校・大学の体育会)、 ⑦新聞折り込みチラシ、⑧新聞中広告、 ⑨ポスティ
ングチラシ、⑩自社看板など
ポイントは④〜⑩のような他の媒体と①〜③を組み合わせることである

■応募の決め手
①ホームページ(今や応募者のほとんどが事前にチェックしている。さらに家族や友人にも
見せて相談している。)、②待遇面、③仕事内容、④勤務地、⑤労働条件、⑥時間、休日、
⑦福利厚生 など

■選考方法の見直し
①採用試験(筆記と実務)や適正判断テストの実施
 簡単な読み書きや計算など基礎能力、一般常識のチェックをする。
②履歴書は「ワープロ不可・手書きのみ」とする
 他人にワープロで作成してもらう応募者が多く、入社後に文字、読み書きの不出来を発見す
 ることになる。
③履歴書の評価をする
  写真の貼り方、会社名を間違っていたり、履歴書が汚れている(使い回しの可能性あり)、
 応募封筒の裏面に自分の名前を書いていないなど、書類の書き方がいい加減な人は仕事にも
 表れる。

※書類審査を経て採用面接を行うときには面接日時を決めるために携帯もしくは自宅に電話で
 連絡をする。その対応も重要な評価項目となる。お客様から電話を受けたときの応対レベル
 を測ることができる。

■受け入れ体制の整備
≪用意するもの≫
作業マニュアル、入社スターターキット(レイアウト、商品名リスト、社内用語集、名前と写
真の入った組織図など) ※中でも「社内用語集」は重要である
≪新人教育≫
先輩各のパート・アルバイトを世話係として任命する(気軽に質問できる上、職場になじむま
での時間を短縮できる)
≪環境≫
空調設備や照明(250ルクス以上)の整備、送迎バスの運行、託児所の設置(若い母親層の
確保に効果を発揮している)など 

■定着管理
定着率を数値で管理する・・・・・パートの在職期間などを指標に取って、職業別、業務別、
                階層別などの切り口で数値の推移を見ていけば、問題がど
                こにあるのかが明確になる
退職者が出た場合
退職の理由を2つ以上聞き出す・・退職には必ず理由となる不満がある。しかも1つの理由だけ
                で退職を決意するケースはほとんどない。いわゆる“一身上
                の都合”の他、待遇や労働条件、人間関係など2つ目以降の
                理由が必ずある。それが退職の真の引き金となっている。複
                数の退職理由を把握して改善点を見つけることも重要
                                  
3.長期的アプローチ〜荷主と共に仕組みを変える〜
■業務の構造を改革していく長期的な対策ポイント
≪仕事を選ぶ≫
作業負荷のある仕事は受けない。もしくは作業負荷に見合った料金を収受する。
≪マテハンの導入≫
コスト効率や作業品質、スピードだけでなく、労働環境の改善という視点からマテハンの導入を
検討する。手積み・手降ろし、走りながらの作業を強要すれば今の時代、“ブラック企業”の汚名
を着せられることになる。
≪既存リソースの活用≫
販売の物流の帰り便を使ってミルクランで調達する。あるいは販売先に対して引取りを提案する
といった形で既存の輸配送インフラを活用する。トラック輸送から船舶や鉄道へのモーダルシフ
トを検討するのもいい。

これらの長期的な施策はいずれも荷主と物流会社の協力がなければ実現しない。
採用の募集広告一つ取っても荷主が有名企業の場合は「○○社の仕分け作業です」と広告やチラシに明記することで応募者は安心し反応が上がる。すなわち、荷主と物流会社の協力関係こそが、人手不足を生き抜く最大の鍵である。