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第416回「輪止めを見ればレベルが分かる」

その会社の安全管理の水準は駐停車中にトラックのタイヤを固定する“輪止め”に端的に現れる。優れた荷主企業や物流会社は自社車両や傭車先はもちろん、拠点を出入りする取引先の車両にまで輪止めの使用を徹底させている。
ドライバーはいったん営業所を出発すれば管理者の手を離れてしまう。一日中監視しているわけにはいかず、ドライバーの運行状況を自動的に記録する「デジタコ」でも輪止めの使用までは把握できない。それだけに輪止めには、その会社の管理レベルが現れるのである。
ドライバーの自己流を放置すれば安全は確保できない。タイヤに対して斜めに差したストッパーは、回収し忘れたまま車両を発進させると弾丸のようにはね飛ばされる恐れがある。
一個だけのストッパーは車両を固定する効果が不十分な上、置き忘れることが多い。しかし、実際にはストッパーの“斜め差し”や“一本差し”、ストッパーがタイヤからはみ出ている“半がけ”、さらには輪止めをしない駐停車が横行している。

■当たり前のことを徹底する■
当たり前のことの徹底が安全管理の基本である。その役割を運行管理者個人に押しつけてしまうのは無理がある。決めたことをやり遂げる執行管理に組織として取り組む必要がある。その実務上のポイントを以下に解説する。

<「〜かもしれない」思考>
事故発生原因の大半は当事者の思い込みにある。「〜だろう」という安易な考え方が蔓延するのを防ぐには、定期的な訓練が必要である。事故になる一歩手前の事例を情報として共有する「ヒヤリ・ハット活動」もその一つ。ある物流子会社ではこれを品質管理にも応用していた。わざと間違った商品をピッキングラインに流すのである。その結果、ミスが発見できればよし。できなかった時には、検品体制の見直しを図るという方法で品質を維持している。

<声掛け>
物流現場でリーダーやスタッフが大きな声を出す場面が少なくなっていると感じる。場内アナウンスやビジュアル化が定着しているからかもしれない。だが、リフトマンが人の近くを通る時や、車両がホームを着車する時には声を出して注意を促すことを習慣化する必要がある。リフトにはアラーム付き回転ライト、車両にはバックカメラが付いているからと、過度にツールに頼れば現場の安全は守れない。

<体調管理>
近年は夏場に熱中症で倒れるドライバーや作業スタッフが珍しくない。本人はもちろん、作業中のめまいやふらつきは深刻な事故を引き起こす恐れがある。しかし、朝礼でスタッフの体調をチェックできたとしても、いざ作業・業務が始まれば管理の目は行き届かなくなる。
そのためセンター長等の管理者に対して、一日二回の“現場ラウンド(巡回)”を推奨する。実際に庫内を巡回していると荷物の影に隠れて寝ている作業員を見つけることがある。
サボっているのではなく、体調不良や熱中症で伸びてしまっている。広い倉庫や柱の多い建物には必ず死角があるもので、現場を一通り巡回しないとそうしたことに気が付かない。

<燃費管理>
車両事故撲滅に最も有効な方法は燃費管理である。燃費と事故率は明らかに比例する。燃費の良い運送会社は例外なく事故率が低い。事故が発生した場合でも、こすり、かすりなどの軽レベルにとどまり、重大事故にならない。燃費を抑えるには、急発進や空ぶかしを避け、適正速度で運転する必要がある。
それをどうやって徹底させるか。効果を挙げているのが、「燃費ランキング」である。休憩所の壁等、誰もが目にする場所に、ドライバー別の燃費ランキングを張り出す。それだけで上から指示を出さなくても、仲間内に競争意識が芽生える。その結果、安全が担保されて燃料費も軽減されるのだから、まさに一石二鳥である。

<作業手順>
作業の基本をないがしろにすれば当然、安全は担保できない。とりわけ複雑な業務、危険な作業は、現場の判断で勝手に作業方法を変更してしまうことを避けなければならない。
そのためには作業手順書(マニュアル)を作成するだけでなく、手順書通りに作業が行われているか、定期的なチェックが肝要である。

<服装、装備品>
安全の確保はまずヘルメットや安全靴の装着など身支度からと言える。段ボールの加工や梱包作業に折る歯式のカッターナイフを使用しているセンターをよく見かけるが、原則禁止である。当事者のけがだけでなく、箱中の製品損傷、折れたカッター刃による異物混入の恐れがある。どうしても必要な場合は段ボール専用カッターを購入する。

<荷扱い指示マーク(ケアマーク)>
製品の外箱に表示されたケアマークは内容物の保護だけでなく、作業者の安全確保を目的としている。荷主企業、物流企業とも、これがほとんど活用できていない。小さ過ぎたり、目立たない色で印字されたマークは効果がない。ケアマークはJIS規格で規定されているが、色やデザインのカスタマイズは許されている。実際、安全意識の高い企業はケアマークにも独自の工夫を行っている。コストを掛けずに可能な改善である。

<指標管理>
品質だけでなく安全についても適切なKPIを設定して可視化し、そのパフォーマンスを関係者で共有する。誰もが分かり、参加できる現場作りが不可欠である。

<判断基準>
「これは危ない」「あれは大丈夫」など、作業者に自分の感覚で安全レベルを判断させてはならない。使用していないパレットをフォークマンが遊び半分で山高く積み上げているのを見ることがある。倒れて下敷きになれば大けがを招く。パレットは何段まで重ねてよいか明確な基準を設けておく必要がある。基本的には人間の背よりも低い高さ、最高一〇段積みで設定している現場が多い。パレット置き場の壁にその高さで目立つようなラインを敷くなど、数字、色、掲示物を使って、決められた段数以上積み上げることのないようにする。

<ルールとツールの定期的な見直し>
設定当時は安全とされた作業ルールやツールも、規制強化や顧客の要求レベルの変化によって陳腐化していく。定期的な見直しをスケジュールに組み込み、メンテナンスを徹底する。

<安全教育・指導>
「危ない!」「問題だ!」という場面に遭遇した時には、管理職や担当者でなくても“その場”で注意することが大事だ。後で注意しよう、次の会議で話をしようと問題を先延ばししてはならない。

<点検・点呼・朝礼>
点検・点呼・朝礼を、前工程における危険防止策として位置付ける。朝礼ではスタッフの出欠をとり頭数を確認、さらには返事の声から各人の体調まで読み取り、人員配置を調整する。一方、昼礼は午前中の作業の進捗を見て、午後の人員配置を修正するレイバー・コントロールが主な役割となる。

<信賞必罰>
事故がない、安全を維持しているのであれば表彰を、そうでない場合は罰金や乗務停止など、賞罰を明確にする。ただし、制度だけが一人歩きする場合も多いので、賞罰の目的は同じミスを繰り返さないための「学習」であり、安全確保であることを常に確認する。

<法令順守>
労働基準法、道路交通法、建築基準法、消防法など、物流に関わる各種の法令は安全を主眼に設計されたルールであることを管理者が理解して、それを修得する必要がある。法令を規制としてネガティブに受け取るだけだと、コンプライアンス違反を犯すだけでなく安全が脅かされる。

<セキュリティ>
「安全」には「セーフティ」と「セキュリティ」の二つの側面がある。このうちセキュリティは盗難対策を意味していることが多く、実際に安全を確保するだけでなく、安全を保証することに重点が置かれる。その場合には要求レベルに応じた設備投資が必要になる。

<「報・連・相」>
既述の全ての項目を無駄なく、確実に運用するためのベースが社内外の「報・連・相」である。物流管理においては「報告」は「事後報告」、連絡は「全体連絡」、相談は「事前相談」が特に重要である。

<整理・整頓>
食品、医療、精密機械などの分野では整理・整頓・清掃・清潔の「4S」が安全確保に不可欠とされている。しかし、それ以外の分野では「整理・整頓」の「2S」に絞ってもいいと筆者は考えている。要らない物を捨てる(整理)、よく使用する物を使いやすいように整えておく(整頓)だけでも安全レベルは格段に上がるものである。