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第193回 事例で学ぶ現場改善:『住設メーカーM社の長尺物輸送・梱包改革』

長尺、異形、重い、しかも傷が付きやすいという物流泣かせの製品を取り扱っている。チャーターを仕立てるほどの物量はないため路線便を利用してきたが、輸送中の損傷が多く、運賃は高かった。それでも事業は拡大していった。中小企業から中堅企業へと脱皮するに当たり、物流の再構築にあらためて乗り出すことになった。


30年にわたる長い縁

M社は年商約50億円の住設建材メーカーだ。関西に本社と工場を置き、熟練した職人のスキルが求められる造作部材をメーンに100%国内で自社生産している。創業約70年の歴史があり、筆者との付き合いも今では30年になる。

最初に訪問した当時のM社は年商10億円にも満たない規模であった。テーマは原価計算を始めとした経営の数値化とその改善策の抽出であったが、自らも2代目だった当時の社長は、実子で跡継ぎのT氏に外の会社で働いた経験がなく、数字にも強くなかったことから、外部のコンサルタントを通して経営を学ばせようという考えであった。

親子の関係で帝王学を学ばせようとすると、公私混同を招いたり喧嘩になる。それを避けたいということだったが、駆け出しのコンサルタントであった筆者もまた2代目から多くのことを学ばせてもらった。今でも胸に刻まれているのは「習慣は第二の天性」という言葉である。

その後、筆者が物流コンサルタントとして独立したのを機にM社との連絡は途絶えていた。それから月日は流れて既に3代目に就任していたT社長から、われわれ日本ロジファクトリー(NLF)に連絡が入った。製品の出荷・配送で困っているとのことであった。久しぶりにM社を訪れることになった。

T社長から詳細を聞いて「路線会社(特積み)の見直し」を実施した。これをM社の物流改善第1期とすると、さらにその5年後に第2期となる「輸配送インフラの構築とコスト改善」を行った。この二つのプロジェクトを以下に紹介する。

第1期「路線会社の見直し」の課題は、(1)製品の輸送途中での破損、(2)路線会社N社からの値上げ要請への対応であった。M社の製品は長尺物かつ造作物であるため、路線便のように積み替えが発生する輸送インフラはそもそも向いていない。しかし、チャーター便を仕立てるほどの物量はなかった。

路線会社N社はM社にとって融通が利かない相手であり交渉は難航した。そこで輸送中の破損を防止するため梱包を見直すと同時に、M社の工場の近くに営業所を構えている路線会社T社に新規の取り扱いを打診した。筆者には馴染みのある会社であった。

長尺モノはゲテモノ扱いされて断られることも多いのだが、T社いわく「梱包さえしっかりしてもらえれば運べます」との回答であった。筆者の顔を立ててくれた面もあったようだが、運賃もN社より18%も下がった。後日T社から「周辺に取引先が少なく、事業所の売上不足を本社から指摘されていたので助かりました」と打ち明けられた。

一方、梱包の改善は抜本的なものにはならなかった。しかし、製品の破損は「削減はできてもゼロにはならない」と当初から一定のロスを想定していたため、T社長はそこにはさほどこだわらず、それよりも支払い運賃の削減に大喜びであった。実際、当時のN社にとってはそのほうが切実な問題であった。

さらに約5年が経過し、最近になって再びT社長から「また相談がある」と連絡が入った。第2期のキックオフである。数日後、M社へ向かった。T社長は白髪が目立つようになっていたが、鼻息は荒かった。「さらなる配送の強化が必要になってきた。今は“攻め”に出る良い時期だ」という。実際、筆者が初めて訪問した頃と比べて売り上げは約5倍に増えていた。

特に、ここ数年大きく伸びていた。理由はOEM生産から自社ブランドによる受注生産に切り替えたこと、対応しない案件を決めたこと(マンション、ハウスメーカーの工場経由の案件、ホテルは対応しない)、顧客側のターゲットを工場の資材調達部門からハウスメーカーの支店長もしくは設計長に変更したことなどだという。

規模の拡大に伴い東京都内に支社を新設、そこに関西工場から出荷した製品のTCスペースを確保していた。また、将来は四代目を継ぐことになるであろうT社長の長男が既に運営をかなり任されていた。N社はまさに中小企業から中堅企業に脱皮しようとするところであった。

 

業種特化型共同物流会社を利用

これを受けてわれわれは次の四つのテーマを抽出した。

①輸配送インフラの棲み分け
②梱包作業におけるタッチ数の削減
③着地点分析による関東支社兼TCセンターの立地最適化
④M&Aによる業容拡大

「①輸配送インフラの棲み分け」は、具体的には納品エリアを「(1)遠方」「(2)地場(関西)」「(3)首都圏(1都6県)」の三つに区分して、それぞれに適した輸送方法を組み立てようというアイデアである。

このうち「(1)遠方」は、従来通りの路線会社T社による納品。「(2)地場(関西)」は自社社員と白ナンバートラックによる自家配送およびセールスサポート。そして「(3)首都圏(1都6県)」は住設専門の物流会社による共同配送の利用を進言した。この提案にT社長は大きく頷いた。

NLFがネットワークしているK社を(3)の共同配送会社の候補として挙げたところ、T社長は乗り気で、その場でK社に連絡を入れて状況を説明することになった。すると首都圏だけでなく、関西の工場の集荷も可能であるとのこと。そこでやや粗っぽい紹介となったが、T社長と電話を代わり初回のあいさつを済ませた。

後日、T社長が東京支社にいるタイミングでK社の社長が来社して詳細を打合せた。その結果、N社の納品先はK社と重複する現場が30%以上あることが分かった。多少の偶然も奏功して順調な共同配送が形成されている。

「②梱包作業におけるタッチ数の削減」では、筆者が工場を訪問して、現場に張り付いて梱包作業を調査した。数種類の製品の梱包作業をチェックしたが、1梱包当たり2・5人×24分を要していた。一般的なダンボール箱の梱包作業は1梱包当たり1人×2分くらいである。明らかにムダが多かった。

M社の製品は、長尺、異形、重い、傷が付きやすいという“配送泣かせ”であると同時に“梱包泣かせ”の荷物でもある。完成した製品サイズに合わせて段ボール箱をカットし、二重に梱包してガムテープを巻く。作業生産性が良くないばかりでなく、資材費もばかにならない。

本当にそれが必要なのか、筆者にはどうしても腑に落ちなかった。そこでM社の類似商品がどのように梱包されて、路線会社によって運ばれているのか、トラックターミナル3カ所を回って調べた。当然ながら素材により梱包方法に違いはあったが、多くはM社と同タイプの梱包形態であった。しかし、なかには無梱包の荷物もあった。

 

中身の見える梱包で荷扱いが向上

ふと著者にドライバー時代の経験がよみがえった。ある夏の日、仕分けのため手に取った段ボール箱が濡れていた。中身のスイカが割れていたせいだった。別のある日、段ボールの上部が空いたままの状態でスイカが営業所に送られてきた。中身がスイカと分かるため荷扱いを気をつけるのだろう、正常な状態であった。

過剰梱包には中身が何か分からなくなり、作業員、ドライバーは荷物扱いに配慮しなくなるという悪影響がある。どのような素材、形状のものなのか、見て分かれば誰しもそれなりの荷扱いをするものだ。この仮説をM社の荷物にカスタマイズして適用することにした。

色々と試した末、透明なビニールによるラッピングが適していると分かった。それ以来、M社では小物のネジ以外の造作製品をダンボール梱包ではなくビニールラッピング包装で納品している。その結果、破損率は次第に低下していき、0・02%(破損品数/総出荷品数)前後で推移するようになった。作業生産性も上がり、資材費も大幅に削減された。T社長は「目から鱗の改善だった」と感想を述べている。

「③着地点分析による関東支社兼TCセンターの立地最適化」は、筆者としては順調に進むとだろうと予想していたが、蓋を開けて見ればM社の基幹システムの老朽化のため、人手で伝票をめくって実績データで集計しなければならないことが分かり、先送りせざるを得なかった。

「④M&Aによる業容拡大」は今、T社長肝煎りのテーマとなっている。関東もしくは中国地方のいずれかに自社工場を持っていること、技術力を有していることの二つを条件として、同業メーカーの売り案件を物色している。われわれNLFも銀行をはじめとする金融機関から情報を集めている。

しかし、同業者の大半は既に工場を中国大陸やベトナム、タイなどに移管しており、国内に生産機能を持っているところはほとんど見当たらない。N社のビジネスは、前述のように技術力が必要な造作製品がメーンであり、現場の施工時に追加で発生する注文にも短納期で対応しなければならない。今のビジネスモデルを維持する以上は国内生産が不可欠である。当面その強みを捨てるのは得策ではないだろう。

 

 
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