<イレギュラー業務の数値化>
①イレギュラー業務の選定
- イレギュラー業務を数値化するにあたり、まず何をイレギュラー業務と定めるかが必要となる。
- そこでイレギュラー業務を数値化することのコンセプトを明確にする必要がある。代表的なイレギュラー業務の数値化のコンセプトをまとめると下の通りである。
- 日々の業務において全てのイレギュラー業務を集計することは、通常業務に影響を与えてしまうことが懸念される。イレギュラー業務の数値化を導入するにあたっては現場作業に支障が無い形が理想である。
- 集計するイレギュラー業務の項目出しをするにあたり、以下の大項目が挙げられる。
(1)配送 に関するデータ
(2)倉庫内作業に関するデータ
(3)物流事故に関するデータ
これらを基に現場担当者によって、更に項目を細分化し集計が必要なイレギュラー業務を選定する。
②イレギュラー業務の項目出し
- 集計するイレギュラー業務を選定するにあたり、まずイレギュラー業務の棚卸を下の表(例)を利用して行う。
- これらの項目出しは現場社員、パート・アルバイトに抽出を依頼するため、その旨の連絡と理解が必要となる。
- また、倉庫内作業に関する項目でピッキングに関するイレギュラー業務を集計する場合は荷揃え表(ピッキングリスト)に直接記入してもらう手法をとることで、ピッカーの手間を取らせることも最小限で抑えることができ、どこの得意先でイレギュラーが発生したかが明確になる。
- 抽出できた項目の中から継続的に集計する項目を選定するのは、集計したデータを基に荷主と交渉を行うメンバーが行うことが望ましい。
③イレギュラー業務の集計作業
- 収集するイレギュラー業務の項目の確定後は、現場でのデータ収集となる。先にも述べた通り、イレギュラー業務の収集作業が通常業務の負担になってしまっては、逆効果であることから、データ収集における現場の理解と役割分担が重要となる。
- 役割分担は以下の通りとすることで、一つのセクションに負担がかからない形をとる。
(1)イレギュラー申請者・・・・・・現場作業者
(2)データ集計・・・・・・・・・・管理者または事務員
(3)データ入力・・・・・・・・・・事務員または管理者
- 現場作業からの具体的なデータ収集フローは下の通りである。
- 収集の段階で、通常業務に影響がでる項目は都度、項目の変更・削減を行うことが必要であるが、データは継続的に収集することで傾向と問題点をより正確に掴むことができる。そのため、作業に入る前の項目決めでは作業負荷とのバランスを考慮して決定する必要がある。
④報告フォーマット
- 収集したデータは右のようなフォーマットに入力する。入力項目は他業務への影響も考慮し、複雑にならぬようシンプルな形が望ましい。
- このフォーマットをプリントアウトし、ピッキング以外で発生したイレギュラー業務のデータ集計に使用することもできる。そうすることでデータ収集の次のステップである「内容確認作業」「データ入力作業」も円滑に行うことができる。
⑤アウトプットイメージ
- 収集したデータの変動を下図のような形でアウトプットすることで、イレギュラー業務への双方の取り組みを数値化することができる。
- 物流現場側の原因で発生しているイレギュラー業務、荷主(営業)の原因で発生しているイレギュラー業務を明確にし、項目別の改善施策を練ることができる。
- イレギュラー業務の集計は、集計することだけではイレギュラー発生原因の所在を追求するだけのものになってしまう。継続的に集計する過程において双方のイレギュラー業務削減へ取り組むことが重要になってくる。
<イレギュラー数値を用いた現場改善手法と進め方>
1.イレギュラー業務に対する共通意識
- 現場にて収集したイレギュラー業務の数値を荷主または、営業部門などの社内他部門と共有化する。
- これは物流現場にとっては、自分達の責任であるイレギュラーを公表することにもなり、不利になりかねないデータであるが、双方が物流の現場を改善することが両者(全社)の利益となることを共通意識として持つことができるはずである。
2.物流改善ミーティングの実施
①物流改善ミーティングの意義
- 物流現場側と荷主(又は営業など)が、イレギュラー業務の削減に向けての取り組み内容を明確化させるためにも「物流改善ミーティング」を定期的に開催することが望ましい。
- 物流現場責任者や、荷主側営業担当者などが、現場運営についてミーティングを行うことは、日々の業務の中では難しいケースが多い。また、「ミーティング」という形で改善テーマを決定していったほうが双方の改善意識を高めることができる。
②物流改善ミーティングの内容
- 通常のミーティングでも同様のことが言えるが、改善=業務の変更 が伴うことも多いため、ミーティングにおける目的意識を全メンバーが明確していることが非常に重要であり、改善スピードを左右すると言っても過言ではない。
- 下のようなミーティングテーマを各回設定することで、ムダに長時間化させず、簡潔に実行に移るための準備を行うことができる。
3.物流改善の実施
(1)ワークサンプリングの実施
上記のようなワークサンプリングをとり、イレギュラーが発生したときと、そうでないときの作業に要する時間をサンプリングすることで、イレギュラー1回当たりの損失を算出することも可能となる。これは受注業務、出荷業務、返品業務など、あらゆる作業で活用することが可能である。
(2)改善の優先順位をつける
改善優先度は上の図の通りであり、具体的実施項目を実現度の高い順番に、それぞれのボックスの中に書き込んでいく。判断基準は「スピード(達成にどれだけの時間が必要か)」である。この際、実現に他部署の協力が必要な実施項目は別途協力を仰ぐ準備を行う。また、達成に著しい時間のかかるものは、改善項目から一旦除外し、達成できるものに力を集中する。